タイムスリップ (1)
「つまり、気がついたら
6年前の世界にいたと?」
すずめから一通り説明を受け、
少年大輝も途方にくれた。
諭吉はカフェの準備があるからと、
二人を残して逃げた。
「信じられねえけど、
オマエは大人になっても
人に面倒かけんだなってことは
わかったわ。」
少年大輝に呆れたように言われ、
「面目ない…」
とポリポリすずめは頭を掻く。
「ブッ!」
クックックッと、
大輝が笑いを堪えるように
後ろを向いた。
「何?」
「いや…あまりに変わらなくて…
ウケる…」
大輝がそういうのに
すずめは少しだけムッとして、
「大輝はすごく変わっちゃうけどね。」
と思わず反撃する。
「えっ!///マジかよ…
どんな風になってんだよ。」
大輝はおそるおそる尋ねる。
「教えない。」
つい週末、高校生の大輝に
教えたいって言ってたくせにと
すずめは自分で自分に
心の中で突っ込む。
「何だよ。でも呼び捨てするくらいの
仲にはなってんだな。」
それが少年大輝には
少し嬉しく、照れくさかった。
「そうか。私高校生の頃はずっと
馬村って呼んでたもんね。」
「大輝…」
「ヤメロ///」
「大輝?」
「だからヤメロって!」
全身真っ赤になって
思わず少年大輝は
大人のすずめを拒否した。
大輝はハッとしたが、
すずめはすごく悲しそうな顔をしていた。
「そうだよね…
私も大人の大輝に会いたいよ…
もう会えないのかな。」
大人になっても
すずめと付き合っているとわかり、
嬉しい反面、目の前にいるすずめが
別人なのが大輝も寂しかった。
今のすずめは6年後の世界にいるのか?
どうなっているのかわからない。
朝は普通に学校に行ったらしいが、
学校では風邪を引いて
休んだことになっている。
高校生のすずめのそばに
自分がいてやれないことが
大輝にとっても不安だった。
入れ替わったのだとしたら、
未来のオレも同じ気持ちでいるのだろうか。
「ごめんね。私のほうが大人なのにね。」
「関係ねぇよ。
オマエはオマエだからな。」
そう言って強がる大輝に
「大輝って6年後から見ると
アレだね。生意気だね。」
と思わずペロッと本音を言ってしまい、
すずめはデコピンをされた。
「いたっ!頭打ってるのに。」
「オマエが子ども扱いするからだ。」
そう拗ねる大輝を
やっぱりかわいいと思ってしまう
すずめだった。
作品名:タイムスリップ (1) 作家名:りんりん