タイムスリップ (2)
「馬村…未来でも馬村は
私から離れていかない?」
「は?」
すずめがなんで
そういうことを言うのか、
大輝にはわからなかった。
オレの態度が不安にさせてる…?
「先生も失って、これで馬村も失ったら
私はきっと立ち直れないから…」
大輝はギュッと
心臓を掴まれたような気持ちになり、
思わずすずめを抱きしめた。
「6年後もオレはオマエから
離れたりしてないし、
この先も離れたりしない。」
「こんなことになって、
この先どんな風に未来や今が
変わるのか、オレにもわかんねえけど」
「どんな形ででもオレは
オマエの傍にいるし、
離れていったりしねえから。」
「安心して自分の思うように選択しろ。」
大輝はすずめにそう言った。
「オレを選べとは言わないんだ?」
すずめが大輝の腕に抱かれながら
ふと突っ込んだ。
「オマエがオレを選んで、
オレがオマエを幸せにできるなら
それが一番いいけど…」
「オレはオマエが幸せなら
なんでもいい。」
大輝の言葉を聞いて
すずめは安心した。
「そんな風に思ってもらえて
22歳の私はきっと
すごく幸せだろうね。」
「だといいけどな。」
「私…馬村にそんな風に
思ってもらう価値あるのかな?」
「価値のあるなしで
好きになったんじゃねえし。
なんでとか聞かれても
いまだにわかんねーから。
でもオレはオマエがいないと
つまんねえってことは事実。」
大輝の言葉を聞いて、
すずめは嬉しい反面、
すごく寂しくなった。
「大人の馬村は早く
大人の私に会いたいの?」
「は?そりゃあ…な。」
「私も戻りたくなってきた…」
すずめがそう言うと、
ズルっとすずめの力が抜けた。
「あっ!オイッ!すずめ?!」
再び意識が朦朧として、
馬村の声が遠くに
フェードアウトしていく…
あの石けんの匂いが鼻をかすめて
また記憶が途切れた。
作品名:タイムスリップ (2) 作家名:りんりん