タイムスリップ (2)
22歳の大輝は、
16歳のすずめを安心させるため、
「オレが帰る方法をみつけてやる」
と言ったものの、
なんら確かな方法がなく、
途方に暮れていた。
「過去に飛んだアイツは無事だろうか…」
もしここと同じ状況なら、
家で目を覚まして
過去にいることに気づいて
パニックになっているはず…
「高校生のオレは
パニックになった
アイツを支えられんのか?」
同じ自分のはずなのに、
対応できてる気がしない。
「はぁ。」
大輝は深くため息をついた。
週末の会話の、
「あの頃の大輝に
6年後はこうなると
教えたい」と
すずめが言ってたのを思い出して、
大輝はそっちも心配になってきた。
「アイツ、高校生のオレに
変なこと吹き込んで
ねぇだろうな…」
「…!あ!」
大輝はふと、すずめが
過去に飛んだのは、
ただ頭を打ったからではなくて、
「過去に行って教えてやりたい」
という願望が現実になったんでは、
と思った。
だとしたら、
ここにいる16歳のすずめも、
何らかの思いで、
未来に行きたいと
願ったんじゃないだろうか。
そう思った時、
「馬村…?」
すずめ(16歳)が起きて
大輝のいるリビングまでやってきた。
「もう起きて大丈夫か?
頭打ってんだから、
無理すんなよ。」
「うん…」
諭吉はカフェのほうに行っていた。
自分も今日は早退したが、
明日は仕事がある。
だけどすずめ一人にするのは
心配だった。
早く解決しなくては。
「オマエ、木から落っこちる時、
未来に行きたいみたいなこと
願わなかったか?」
大輝に言われ、すずめは
一生懸命思い出そうとする。
「木に登った時かは
わからないけど…」
「馬村から2回目の告白されてから、
ずっと自分の選択に自信なくて…」
「どういうこと?」
大輝はジッとすずめの顔を見た。
「怒らないで聞いてくれる?」
「怒ったりしねえよ。」
16歳のすずめにとっては、
オレは大人で、
怖い存在なのだろうか。
同じセリフを例え言っても、
16歳のオレが言うのとは
違うのかもしれない。
大輝はそう思った。
「先生から好きじゃないって言われた時、
心が壊れそうで…」
「でも馬村が側にいて
好きだって言ってくれて
すごい嬉しかったんだ。」
「でも…もし馬村と付き合って
また好きじゃないって
突然終わってしまったら?
それが怖くて…」
「そんなことにはならねえよ。」
すずめの初めて聞く本音に、
思わず大輝は口を挟む。
「私…馬村は失いたくなくて…」
ボロボロボロとすずめが
大粒の涙を流し出した。
「オイッ」
すずめの涙はもう慣れたが、
さすがに女子高生を泣かしたとなると
どうしたもんだか
大輝もギョッとした。
作品名:タイムスリップ (2) 作家名:りんりん