タイムスリップ (3)
そう言えば、22歳のアイツは、
オレを失いたくないから
迷ってたって言ってたっけ。
「オマエが安心できんなら、
オレ、何でもするから。」
「オマエが離れろって言うまで
絶対に傍離れねえつもりだから。」
顔を赤くして大輝は宣言した。
「馬村…」
すずめは少しウルッとした。
大輝の真っ赤な顔が、
帰ってきたんだと実感させる。
そう言えば、大人の大輝は
顔が赤くならなかったなぁ。
「馬村、大人になったら
赤面症、治ってたよ。」
大輝の告白をスルーして
そんなことをすずめが言うので、
大輝は腕で顔を隠して、
「オマエ、人がせっかく
恥ずかしい思いして
言ってんのに!」
と言って後ろを向いた。
コイツはホントに
人の気も知らないで、と
ブツブツ言っている。
すずめは耳まで赤い大輝の、
背中に自分のオデコをつけ、
「ありがとう…」
と言った。
またふわっと石けんの匂いがした。
作品名:タイムスリップ (3) 作家名:りんりん