タイムスリップ (3)
とりあえず落ち着くまで
大輝はすずめの部屋にいることになった。
「ドアは開けときなさいね。」
と目をギラッとさせながら
諭吉は言って、リビングに戻った。
「木から落ちたって何してたんだよ。」
「逃げた猫を捕まえようとして…」
「オマエな…。」
「それで頭打つとか
心配させんじゃねえよ。」
「……大人のオレがどうとかって
なんだよ。」
「夢でね、22歳の馬村に会って…」
「大人の馬村、かっこよかったよ。」
「何言って…オレに何にもされてねえ?」
「は?///ないないない!
何にもないよ。」
大輝は少しホッとしていた。
「それ…夢じゃねえから。たぶん。」
「え?」
「オレは22歳のオマエに会った。」
「ええええ!」
「入れ替わってたみたいだな。」
すずめはまた頭がズキンと
痛むのを感じた。
「夢だと思ってた…」
「オレもオマエが大人のオレとか
言い出すまでは、そう思ってた。」
「オマエのおじさんは、
なんでか入れ替わったことを
覚えてないみたいだし…」
「22歳の私ってどんなだった…?」
「何にも変わんねえよ。」
「嘘だ。キレイになったとか
大人っぽかったとかあるじゃん?」
「ちょっと老けてた。」
すずめはバシィッと大輝の背中を叩いた。
「痛ぇ!オマエな…」
すずめは最大の膨れっ面をしていた。
「なんだよ。自分ばっかり大人で。」
「オレ、そんな大人だった?」
「うん。帰る方法みつけてやるから
休めって言ってくれた。」
「…たぶん、それ、
高校生のオマエの前で
カッコつけてただけだろ。
絶対帰る方法のアテなんて
なかっただろうし。」
「それでもそう言ってくれたから
安心できたよ。
大人の馬村、すごいね。」
大輝は少しムッとした。
「そうかよ。そんなに大人がいいかよ。」
「え…大人の馬村も馬村じゃん。」
「オレは今何やっても
生意気にみえるんだとよ。」
「何それ。」
「22歳のオマエが言ったんだよ!」
自分じゃ22歳のすずめを
安心させてやれなかったのに、
22歳の自分が16歳のすずめを
安心させてたことが、
大輝には悔しかった。
「16の私は16の馬村がいいよ?」
「ウソつけ。
さっき大人すごいって
言ったくせに。」
「馬村がすごいって言ったんだよ。」
「今も、6年経っても、
馬村は私に安心をくれるから。」
「今も?マジでそう思ってる?」
「ウソなんて言わないよ。」
大輝はようやく笑った。
作品名:タイムスリップ (3) 作家名:りんりん