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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 22

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第77章 邪教、悪魔信仰


 ウェイアード南部、アンガラ大陸に次ぐ雄大なる大陸、ゴンドワナ大陸。
 大陸西部に、世界に四つ存在する、地、火、水、風、の四元素の内、火を司る巨大な岩山、マグマロックがまるで活火山のように、大陸に鎮座している。
 マグマロックの東方には、大きな川を隔てて、狩猟民族、キボンボ族の住む集落がある。
 キボンボの集落には、黒魔術を生み出したとされる、ガンボマという神が信仰されていた。
 しかし、ウェイアードにデュラハンが出現して以来、ガンボマの偶像は、キボンボの民が邪教に走ったため、真なる神の怒りに触れた、と思い込んだ村の者達によって破壊されている。
 そして、その壊れた偶像と同じく、磔にされ、ぼろぼろの姿となった人間がいた。
 もとは特殊な力によって、民族を束ねていた長であったが、今は人々からの逆恨みにより、拷問を受け、見せしめにされていた。
 キボンボの長、黒魔術を欲したがゆえに迫害を受けた者、アカフブは、最早黒魔術を得ることは、文字通り永遠に不可能となっていた。
 そのキボンボ族は今や、デュラハンを崇め奉る、完全な邪教徒と化していた。
 デュラハンによる破滅から逃れんとするため、人々はこれまで信仰していた神をあっさりとかなぐり捨て、悪魔へと魂を売り、更には生け贄を捧げていた。
 世界が瘴気に包まれ、活性化した魔物は、大河を渡るようになり、キボンボ村の者達に、定期的に生け贄を求めにやって来るようになった。
 そして今日この日こそが、マグマロックへと通じる大河に生け贄を捧げる日であった。
 かつて、ガンボマ神を信仰していた時よりも、さらに禍々しい様相をした村の男達が、丸太に縛り付けられた村の娘を担ぎ、大河へと歩みを進めていた。
「いやっ! 止めて、助けてよ! 何でもするからこれだけは!」
 担がれ運ばれる娘は、金切り声で助けを求める。
「静かにしろ! 我々まで魔物に喰われるではないか!」
「お前は、デュラハン様への供物となるのだ。それは我々の命が助かるということ、お前は我々を助けるという最高の名誉のもとに死ねるのだ。誇りに思え」
「いやぁ! 助けてぇ!」
 娘は泣き叫ぶ。
 道中、魔物の群れが舌なめずりをしながら通る人間達を見ていたが、一匹として襲いはしなかった。
 まるで、これから与えられるご馳走を楽しみにしているかのようである。
 いくらこの役目を名誉だと言い聞かせても、黙らない娘に猿ぐつわを結び、男達は魔物の恐ろしく光る視線の中を行き、ついに大河の河原へとたどり着いた。
 河原には、鎧を身に付け、手に戦斧を持つ、獣の姿をした、オークが待ち受けていた。
「我が、全能なる主、デュラハン様への捧げ物、確かにお持ちしました」
 男達は娘を地に下ろした。
「ご苦労……」
 オークは獣臭い息で言った。そして赤い、血走った目で、娘を値踏みするように見る。
 娘は見られただけで、身の毛がよだつ思いがした。
「ほう、今日はまた随分と旨そうな女を連れてきたものだな……」
 オークは舌なめずりした。
「本日連れて参りました娘は、我が村に残る、最も若い者にございます。きっと、我らがデュラハン様も大層お喜びになるはず」
 キボンボの男は言う。
 オークは娘に目を向けたままで、男の話など聞いていなかった。
「本当に惜しいな、バルログ様の言い付けがなければ、すぐにでも喰ってやりたい所だ……」
 ここにいるオーク、その他魔物達は、全てデュラハンのしもべの一体、ビーストサマナー、バルログの配下のものだった。
 バルログは、デュラハンの目的である、暗黒錬金術を完成させるための礎を築くべく、最近この大河の先にある、マグマロックを根城としていた。
 神の造りしエレメンタルの灯台と違い、マグマロックを含む、世界に点在する四つのエレメンタルロックは、その属するエレメンタルの力が自然に集まるのである。
 暗黒錬金術完成のため、灯台とは違う、エレメンタルの集合地点が必要だった。そのため、このゴンドワナの地のマグマロックは非常に都合がよかった。
 元来物臭で、頭もたいして良くないバルログにとって、この地を支配下に置くことがとても楽な仕事であったのだ。
 更に運のいいことに、このマグマロックの近くには、大河を隔てて人の住む集落があった。
 そこからバルログは、デュラハンから救いを与えられるという嘘でキボンボの人々を陥れ、生け贄として捧げられる娘を喰らうことにより、私腹を肥やしていた。
「これで我々は、本当に助かるのですよね!?」
 生け贄はデュラハンの元へ行くことなく、バルログの腹に収まっている事など知る由もない、キボンボの男は、必死になって身の保証を確認するのだった。
「ああ、喜ぶがいい……」
 もう一体のオークが、不意に口にする。
「我らが主、デュラハン様から、貴様らの苦しみを消し去るように命じられた……」
 オークは不気味な笑みを浮かべた。
「い、今何と?」
 魔物の口から、自分達が助かるやもしれない言葉が与えられ、キボンボの男は思わず確認した。
「貴様らは、苦しみから解放されるのだ」
 オークは相変わらず、不気味に笑っている。しかし、男達は、内心に、これまでの苦しみから逃れられるという思いを抱き、心中で喜びに浸っていた。
「では、我らは、デュラハン様の破壊から逃れられると!?」
「うむ、その通り……」
 ついにキボンボの男の一人が、喜びを露にした。
「やった、これで我々は……!」
 自由だ、その言葉は、オークの戦斧によって止められた。
 男は首を跳ねられ、切り口から、火山の噴火のごとき血を噴き上げ、無力に身体が地に転がった。
 喜色を浮かべたまま固まった首は、宙を舞い、オークの手元に吸い寄せられた。
 オークは捕らえた首を、頭の先から丸かじりした。頭蓋骨がバリバリと音を立て、オークの顔に血が飛び散る。
「ふむ、なかなかいける……」
 オークは人の首を、まるで林檎をかじるように食している。
「ひいいい……!」
 男達は、そのあまりのおぞましさに恐怖し、腰を抜かした。
「な、何故!? 我々は自由に……!」
 もう一体のオークに、二人目のキボンボの男が首を跳ねられた。オークは髪の毛をふん掴み、恐怖の表情を浮かべる顔にかぶり付く。
「……貴様ら、何を勘違いしているのか知らんが、我らは貴様らを助けるとは申しておらんぞ」
 人の首を骨ごとバリバリ食べながら、オークは言う。
「で、でも、確かに言ってたじゃないか! 俺達を苦しみから解放してくれるって!」
「解放……、ああ、これは言葉が足りなかったな。バルログ様から許しが出てな、貴様らを自由にせよ、とのことだ……」
 髪の毛の皮だけを残し、オークはその肉片を投げ捨てた。
「……我々、魔物の腹に収まることによってな!」
 オークは合図を出した。すると、口から涎を滴らせながら、周囲にいた魔物が一斉に男達へ襲いかかった。
「ぎやあああ……!」
「ぐわあああ……!」
 残った男達も、断末魔を上げながら、魔物に集団で貪り喰われた。
「んー、んー!」
 丸太にくくりつけられ、ここまで運んでこられた娘は、この惨劇を見せ付けられ、がふがふと血肉を喰らう魔物を前に、猿ぐつわの下から悲鳴をあげていた。