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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 22

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 融合により術者は、呼び出した使い魔に応じた特殊な技を使用することができる。しかし、地獄に棲む存在を身に宿すという性質上、この魔術はかなりの危険を伴う。
 術者の力が足りないまま、この魔術を使用すれば、肉体を乗っ取られ、終いには自我を崩壊させられてしまうのである。
 しかし、術者の力が十分であれば、安全に使用できるかというと、そうではない。使用するためには、使い魔の魔力が直接的に術者の体へ行かないようにする媒体が必要である。それが黒魔術師の特殊なガウンだった。
「先程も言ったように、生身の体へ召喚獣を宿すのは不可能だ。だからこそガンボマ様は、黒魔術の正当後継者として、ネクロノミコンと共に、そのガウンを授けてくださるのだ」
 尤も、黒魔術の肝心要のものが、魔導書だと知らなかったが、とアカフブは付け足す。
「ガルシア、ピカード。お前達の目指すマグマロックは、西の大河を渡った先にある。だが知っての通り、あの川には、集団で獲物を喰らう魔物が泳いでいる。船で航るのは危険すぎる」
 川にいた魔物は、巨体を誇るオークさえも、一瞬で喰らい尽くしてしまった。船を出そうものなら、瞬く間に船底に穴を空けられ、そのまま沈められてしまうだろう。
「では、どうすれば?」
 ピカードが訊ねる。
「そのための『サモンクロス』だ。要は水上を進まなければいい。低空でも飛行すれば川を越えられよう。ここまで言えば後は分かるな? ともかく川を目指せ」
「分かった、アカフブ。お前の気持ちはしかと受け取った。後は俺達に任せてくれ」
 ガルシアには、アカフブの意図する事が、何となくであるが分かった。
「ガルシア」
 ガルシアとピカードが出発しようとしていると、アカフブが呼び掛けた。
「ガルシア、お前ならば、いつかあの大悪魔デュラハンすらも、手下とすることができるやもしれぬな……」
 ガルシアは唐突に言われ、何も返すことができなかった。
「……いや、すまない。ただの戯れ言だ。聞き流してくれ。二人とも、どうか奴を倒してくれよ!」
「任せておいてよ! 行きましょう、ガルシア!」
「ああ、行こう。アカフブ、そちらも無事でな!」
 突然、気になることを言われたが、ガルシア達は互いに無事であることを約束し、ガルシアとピカードはキボンボ村を後にした。
 二人はキボンボ村を出てすぐに、西の大河へと向かった。
 最初に来た時には、魔物の溜まり場であったが、二人の活躍により、魔物の気配はもう、全くなくなっていた。
 魔物に喰われていた人間の死骸も消え去っていた。魔物とは違う獣に喰われたのか、それとも、幾度も生け贄を悪魔へと捧げていたため、非道を尽くした人間として、死神の腹に収まったのか。
 いずれにせよ、ガルシア達にできる事は、これ以上無駄な命を散らせない事である。そのためにも、まずはマグマロックに潜むはずの悪魔の手先を討たなければならない。
「地獄の眷属召喚、『サモン』! いでよ、『イビルホーク』!」
 ガルシアは、魔導書を片手に詠唱した。そしてもう片方の腕を伸ばした。
「ピューイ!」
 空中に広がる黒い空間の中から、漆黒の翼を持つ鷹が姿を現し、ガルシアの腕の上に止まる。
「行くぞ! 魔との融合、『サモンクロス』!」
 漆黒の鷹がガルシアの体へと、溶け込むように吸い込まれていった。
『サモンクロス・イビルホーク!』
 鷹が体に吸い込まれると、ガルシアは詠唱した。そして、ガルシアの体に変化が起きる。
 両手が、黒を基調に縁が赤い、イビルホークの本来の姿と同じ翼と化し、黒魔術師のガウンの裾は、鳥の尾羽のようになった。
 ガルシアは半人半鳥の姿となる。
「これが、『サモンクロス』……?」
 ガルシアは試しに、翼となった腕を見た後、羽ばたかせてみた。すると、鳥のように空へと舞い上がることができた。
 それほど高く飛翔することはできないが、マグマロックへと通じる川の上を飛ぶのには十分であった。
 ガルシアは一度、地上へ下り立つ。
「ピカード、これならば川の上を飛んでいける。俺におぶされ」
 ガルシアは、ピカードへ背中を向ける。
「大丈夫ですか? 自分で言うのもなんですが、僕は意外と重いですよ?」
「心配するな、早く肩に掴まれ。振り落とされぬよう、しっかりとな」
「……分かりました」
 ピカードはガルシアの背中に身を預けた。
「しっかり掴まったな? では、行くぞ!」
 ガルシアは大きな翼を羽ばたいた。
「う、うわっ!?」
 ガルシアは、ピカードを乗せながらも、空中へ飛び上がった。ピカードは落ちないよう、ガルシアの体に両足を巻き付ける。その力は意外と強く、ガルシアの体は絞め付けられた。
「ぐお……、ちょっ、ちょっと待て、下りるぞ……」
 ガルシアは堪らず地に下りた。
「……はあ、はあ……、ピカード、足を巻き付けないでもらえるか? 腹が絞め付けられる……」
「す、すみません。川に落ちたら、魔物の餌になると思ったら、つい……」
 ここでピカードは、オークの不意をついて、オークを川へと蹴り飛ばしていた。そしてその後、オークがどうなったのか目の当たりにしている。
 川へ落ちる事が、何を意味するのか分かる以上、ピカードは慎重にならざるを得なかった。
「まあ、仕方ない。とにかく行くぞ、もう一度掴まれ」
「は、はい……!」
 ガルシアが背を見せると、ピカードは再び掴まった。すると今度は、足をガルシアの両足に巻き付けるように絡めてきた。
 胴体でない分、今回は苦しくないが、ガルシアは腰に違和感を感じていた。
「……ピカード、どうしても足をどこかに巻き付けねば不安か?」
「当然ですよ。落ちたら死ぬんですからね」
「…………」
 ガルシアの腰には、ピカードの股間がぴったりとくっついていた。腹を蟹挟みにされるよりはまだいいが、やはり腰に男の股間が押し当てられるのは気分のいいものではなかった。
「どうしたんですか、ガルシア?」
 本人は、まるで気にも止めていない様子である。
「ピカード、もう少し、腰を……。いや、いい、しっかり掴まっていろよ」
 気を取り直し、ガルシアは再び翼を羽ばたかせた。そして、風に乗って川の上を飛び、二人はマグマロックへと向かっていくのだった。