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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 22

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「アカフブ、僕は、本当は君の事が憎いよ。君がした事のせいで、僕は危うくレムリアに帰れなくなる所だったから。でも、今はそんな事どうでもいい。アカフブ、君は生きろ。今の君にできる最高の事は、生きて君に尽くしてくれた人々の思いを受け止めることさ」
 アカフブは、泣き腫らした目で、ピカードを見る。
「ピカード、オレを許してくれるのか? かつて、お前の大切なものを奪った、このオレを許してくれると言うのか……!?」
 ピカードは笑顔で答える。
「何度も聞かないでもらえるかな? 僕の恨みなんて、もうどうだっていい。今は、ウェイアードに住む人間、全ての命がかかっているんだ。それに、僕達は大切な仲間がやつらに浚われてるんだ。だから、絶対に負けられないんだ」
「ピカード、すまない。オレなんかの、ために……!」
 アカフブは、止めどなく流れる涙を抑え、号泣した。ピカードは、アカフブが落ち着くまで、軽く肩を叩いてやるのだった。
    ※※※
 アカフブは、真っ赤な目を擦り、鼻をすすった。
「……ずっ、すまん。情けない姿を見せたな。ガルシア、お前に渡したいものがある」
 言うとアカフブは、羽織っていた白いガウンを脱いだ。そして、それをガルシアへと差し出す。
「オレにはもう、こいつを身に付けている資格がない。受け取ってくれ、黒魔術の正当後継者の証だ」
「俺が、受け取っていいのか?」
「さっき外で、お前達が村の戦士達と戦っていた時に、お前は黒魔術を使っていただろう?」
 アカフブは徐に何かを取り出した。ガルシアは驚いた。それは、ガルシアの持つ魔導書、ネクロノミコンそのものだったのだ。
「……あれから、オレはガンボマ様に認めてもらえるように、必死に修行した。そして念願の黒魔術を得ることができた」
「アカフブ、お前……」
「黒魔術を授かった時、ガンボマ様から聞いたぞ。あの時、オレが黒魔術を得られたと勘違いしてあそこを出ていった後、ガンボマ様からこの魔導書を受け取ったそうではないか。滑稽なものだな、まさか、キボンボの民でもない者に先を越されていたとは……」
 アカフブは、パラパラと魔導書のページを繰った。そして目的のページを見つけ、ガルシアへと見せる。
「魔との融合、『サモンクロス』……?」
 ガルシアは、見せられたページに目を凝らし、その内容を読み上げてみた。
「やはりか……」
 アカフブは、どこか悔しそうにため息をついた。
「やはり? 一体これがどうしたと言うのだ?」
 魔導書、ネクロノミコンは、黒魔術師の素質があるものにしか読むことはできない。
 アカフブにも黒魔術師の素質がある。他の者には文字すら見えないが、素質がある彼にも読めるはずだった。
「ガルシア、オレにはこのページ、途切れて見えるのだ」
「途切れている?」
 アカフブは頷く。
 アカフブがガンボマ神より、ネクロノミコンを授かった時既に、このページには文字が浮かんでいた。順番としては、十一番目に位置していた。
 ネクロノミコンに浮かぶ呪文は、全部で十三だとされている。アカフブは最初からこの数字を知っていたが、ガルシアはチャンパのヒエイから聞かされるまで知らなかった。
「ガルシア、お前はいくつ魔術を使えるようになった?」
「ああ、ええと……」
 ガルシアも魔導書を取り出し、ページを繰って呪文の数を数えてみる。
 一つ目、死よりの生還、『リバイブ』。二つ目、地獄の業火、『ブレイズ』。三つ目、地獄の大火、『アビスブレイズ』。四つ目、地獄の破壊炎、『ハーデスブレイズ』。五つ目、魂の一閃、『デスチャージ』。六つ目、死霊の誘い、『デスフォーチュン』。七つ目、毒川の流れ、『ポイズン・ストリーム』八つ目、地獄の眷属召喚、『サモン』、イビルホーク。九つ目、デーモン。十個目、ハウレス。そして三つの魔術を飛ばして最終ページ、死神を従えし、最強なる大悪魔、『サモンデュ……』。
 ハイディアでの、ヒナの指導の下の修行によりガルシアは、途切れている最終ページの術を合わせれば、都合十個以上の魔術を使えるようになっていた。
「どうりで、あれほどの力を感じたわけだ……」
 アカフブからはもう、悔しさすら無くなった。
「ガルシア、オレはお前の半分も読めんのだ。やはり、黒魔術の正当後継者は、お前にこそふさわしい。さあ、このガウンを受け取れ」
 アカフブは、差し出していたガウンを、ガルシアの胸に突き当てた。仕方なくガルシアは、後継者の証であるガウンを受け取る。
「アカフブ、これを貰ってもな……。こんなものはただの飾りではないか?」
「飾りなどではない。いいから着てみるのだ」
 着るまでアカフブは引かぬだろうと思い、ガルシアは、また仕方なしにガウンを身に着けた。
 着丈は程よく、アカフブが着けていた時は、裾が地についていたが、ガルシアが着ると、膝裏でとどまった。
 皮肉なことに、ガウンまでも、ガルシアこそが正当後継者として作られているかのようである。
「着てみたが、一体何……」
 ガルシアが両手を広げていると、突然、ガルシアの魔導書が輝きだした。
「ネクロノミコンが!?」
 ガルシアの魔導書は輝いたまま浮遊し、ひとりでに開き、ページがめくられていった。これは、ネクロノミコンに、新たな魔術が現れる際の現象である。
 魔導書のページはある部分で止まり、文字が浮かび上がった。そして輝きは終息し、魔導書はガルシアの手へと吸い込まれるように戻ってきた。
 ガルシアは、見開きとなったページに目を向ける。
「眷属、タナトス、それから……、魔との融合、『サモンクロス』?」
 今回、魔導書には、二つの魔術が現れていた。一つは、アカフブの魔導書と同様のもの、もう一つは、イビルホークのような、召喚術の類である。
 これで、ガルシアが読める術は、最終ページの途切れを除き、残すところ一つとなった。
「新しい魔術が現れて……。まさか、このガウンと関係が?」
 ガウンを着た瞬間に、魔導書に新たな術が書き出された。ガルシアが関係性を疑うのも当然だった。
「その通りだ、ガルシア」
 アカフブは言った。
「そのガウンは、ただの飾りなどではない……」
 正当後継者の証となる、この白いガウンには、かなりの魔力が含まれており、身に着けた者に、更なる力を与える効果があった。
 修行により、約十個の魔術を扱えるほどの力を得たガルシアは、これを身に着けることにより、黒魔術の奥義、『サモンクロス』を使いこなせるのに十分な魔力が備わったのだ。
 アカフブは、ガルシアと比べれば力が足りず、黒魔術師のガウンの魔力をもってしても、奥義を使えるまでに至らなかった。こうした理由により、アカフブの魔導書には、奥義の術が途切れてしか現れなかったのである。
「オレのネクロノミコンには、はっきりとは現れなかったが、『サモンクロス』については知っていた。黒魔術を一から学んでいれば必ず目にする魔術だ」
 魔との融合、『サモンクロス』は、地獄の眷属を召喚する魔術、『サモン』によって使役した使い魔との融合を可能にする魔術である。