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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 22

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第78章 降霊術師(ネクロマンサー)対、魔物召喚師(ビーストサマナー)


 ゴンドワナ大陸西に位置する、炎を司るエレメンタルロック、マグマロック。
 世界万物を形作るとされるエレメンタルの一つ、燃え盛る炎のエレメンタルの集合点ともされている。
 溢れ出る炎の力により、マグマに満ちた岩山は、まさに活火山のようであった。
 そのような、火山のような場所は、大悪魔デュラハンのしもべ、ビーストサマナー、バルログの力により変えられていた。
 暗黒錬金術を完成させるための礎として、神の創りし灯台に代わる、火のエレメンタルの礎を築く為に、バルログは山の環境を変えた。
 手付かずの自然であったマグマロックは、バルログの手によって、まさに要塞のようにされていた。
 バルログは、召喚した魔物を召し使いのように行使し、マグマロックは彼を主とする城のようになっていた。
 自然の城となったマグマロックのある一室に、その主たるバルログがいた。
「ふーふふん……」
 妙な鼻唄を歌いながら、バルログは鏡の前で、頭を包むたてがみを撫でていた。
 時折指先に、丸い容器に詰まった油をつけながら、たてがみの一部を、幾つかの毛束にして固めている。バルログの獣のような、ぼさぼさしたたてがみは、ヒトデのような形となった。
 バルログは、鏡に写る自分の顔を左右から見て呟く。
「完璧だ、俺様なんて格好いいんだ」
 傍目からすれば妙な髪型であるが、バルログにとっては良く見えているようだった。よほど気に入ったのか、バルログは鏡を食い入るように見続けた。
「フフフ……、これなら、今日こそはあの娘を口説き落とせるに違いないぞ! グフフフ……!」
 方向性はどうあれ、獣同然の姿をしたバルログが急に色気付いたのは、マグマロックに近い集落からデュラハンへの生け贄と銘打って、娘を集めていた時である。
 デュラハンに生け贄を捧げれば、滅びを逃れられると大嘘をついて、近隣の集落から、バルログは自分が食べるために、嘘と知らず、若い女を差し出してくる人間から搾取していた。
 バルログのような魔界の住人にとって、人間の女は最高の美味であり、バルログは独り占めして生け贄を食していた。
 どの娘も恐怖におののき、バルログへ救いを求めてきた。しかしバルログは、その恐怖のあまりに出る叫びすらも、極上のスパイスとして、無慈悲にはらわたから千切り、喰らっていた。
 そのような、まさに暴君のごとき所業を行っていたある日、いつものように部下の魔物がバルログのもとへ生け贄を連れてきた。
 さて、この女はどのような泣き声を上げ、楽しませてくれるのか。そのような事を考えながら、バルログは生け贄の少女と対面した。しかし、この少女はいつもの娘達と全く違っていた。
 間もなく暴君の腹に収まろうとしているのに、その女の目には絶望も恐怖の色もなかった。
 反らすことなく真っ直ぐにバルログを睨み、告げるのだった。
 バルログを倒しにここへ来た、と。
 バルログは腹を抱えて笑った。絶望や恐怖に泣きながら、死に絶えていく女ばかりを喰らっていたバルログには、この少女が余りにも珍しかった。
 死を悟ってこのような妄言を言っているのか、そこは分かりかねたが、まさか自らを倒すなどと言い出すとは思わなかった。
 珍しい生け贄に笑い転げていると、その生け贄は更に面白いことをしてきた。
 バルログに向けて、エナジーを放ったのである。そのエナジーは、バルログに深傷を負わせるほどの威力ではなかったが、掠り傷程度は与えうるものだった。
 バルログはこの女に、強い興味が湧いた。それは好意とも取れる感覚だった。そこでバルログは、この少女を魔物化させ、自らの妻とすることに決めた。
 バルログは、マグマロックの地下に築いた牢屋へとやって来た。ここに例の少女が囚われている。
「おーい、フォレア。見てくれよ、この格好いい俺様を!」
 バルログは自室で整えた、ヒトデのような形のたてがみを指差した。
 鉄格子の中に囚われた少女フォレアは、バルログに背を向けたまま振り返らない。
「何だよ、つれないなぁ。せっかく俺様もおしゃれ、ってのをしてきたのに」
 バルログは口を尖らせる。
「なぁ、フォレア、せめて顔を見せてくれよー」
 フォレアは振り返った。しかし、ただでは振り向かない。
『エクサ・バースト!』
 フォレアは振り向きざまに、エナジーを発動した。
 巨大な爆発を起こす火炎弾が鉄格子に触れた瞬間爆発し、爆炎がバルログに襲いかかる。
「おわあっ!?」
 バルログは爆風に固く目を閉じた。その強烈な風に、バルログが整えたたてがみはくしゃくしゃになる。
「お、俺様のたてがみが!」
 岩をも砕くほどの威力を誇るエナジーをもってしても、バルログにまともなダメージを与えることはおろか、牢獄を打ち砕くことさえもできない。
 この牢獄には、エナジストであるフォレアが、エナジーで破壊できないように、エナジーを無力化する細工が施されていた。
 そのため、バルログは爆風を受けるだけに止まったのだ。尤も、まともに受けたところで、この程度でやられるバルログではないが。
「もうその獣臭い顔を見せないで、って何度言ったら分かるの? 私は絶対にあなたのような獣に服従なんかしないわ、さっさと消えてちょうだい!」
 フォレアは真っ赤に染まった目を向けて叫んだ。
「また人の気にしていることを……。しかし、フォレアよ、いい加減分からんか? お前の体はもう、魔物になっているんだ。もう数日飲まず食わずで生きていられるのも、俺様が定期的に魔力を与えているからなのだぞ。そろそろ諦めて、俺様の妻になってはどうだ?」
 フォレアの魔物化は、既にできていた。方法はとても単純で、バルログの魔力を込めた魔物の血を、フォレアに飲ませるというものだった。
 一口含んだだけで、フォレアの体は魔物と化し、普通には死ねない体となっていた。
 バルログの妻になるくらいならば、とフォレアは何度も自殺を試みたが、人であれば確実に死ぬことをしても、死には至らなかった。
 舌を噛み切っても、舌がすぐに再生してしまい、頭を打ち付けて頭蓋骨を割っても、しばらくすれば骨がもとに戻る。断食をしても、バルログが魔力を与えるせいで飢えに苦しむこともない。
 そこでフォレアが選んだ道は、デュラハンに滅ぼされるのを待ち、バルログに抗い続けるというものである。もう、バルログを倒そうなどという考えは、フォレアになかった。
 今やフォレアに残っているのは、絶対にバルログの妻にはならない、という思いだけである。
「あなたに従うくらいなら、消された方がましよ!」
 フォレアは言い放った。
「ぬぐぐぐ……!」
 バルログは苛立ちを隠せず、歯噛みをした。そしてバルログの中に、ある決意ができる。
「どうあっても俺様に従わないつもりか。だったらもういい、あくまで従属させるつもりだったが、それはもう止めにしよう……」
 言うとバルログは、怪力の拳で鉄格子を破壊した。そして、牢の中へと足を踏み入れる。
「……今度は何をするつもり?」
「フォレアよ、何故俺様がお前を魔物にしたか分かるか?」
 エナジーを放とうと突き出した、フォレアの腕を掴んでフォレアの頭上に上げ、バルログはそのままフォレアを押し倒した。