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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 22

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「っ! いや、離して!」
 バルログは、暴れるフォレアの上にのし掛かる。
「それは、お前を妻にした後で、俺様の子を産んでもらうためだ」
 バルログのような、上位の魔物の子を宿すことは、普通の人間には不可能なことだった。そのため、バルログはフォレアの体を魔物に変えたのである。
 フォレアの背筋に強烈な寒気が走った。
 殺され、喰らわれる事ばかり考え、それらには覚悟できていたが、犯され、野獣の子を孕む事になるとは考えが及んでいなかったのだ。
「本当は従わせてから事に及びたかったのだが、お前がいつまでもそんな態度なら仕方ない。無理にでも俺様の子を産んでもらおう……」
「い、いや……! それだけは絶対に、死んでもいや!」
 バルログはフォレアの服に手をかけた。
「フフフ……! 覚悟してもらおうか……!」
「い、いやぁっ! 誰か助けて!」
 バルログがフォレアの服を引き裂こうとしたその時だった。
 地上からすさまじい爆発音が聞こえた。
 マグマロックは、活動の激しい活火山のような性質を持っているため、多少の爆音は日常茶飯事であったが、今回聞こえたのは、普段のそれと違っていた。バルログの部下の叫び声、それも息絶えていく断末魔が混じっていたからである。
「一体何だぁ?」
「バルログ様、バルログ様!」
 バルログの部下の魔物が、バルログを探して地下牢まで駆け付けてきた。
「何だうるさいぞ。俺様はこれからお楽しみの所だと言うのに」
「バルログ様、こちらにいらっしゃいましたか! 緊急事態です! 人間が二人、この要塞に攻め込んできて、そのあまりの強さに我が軍団はほぼ壊滅状態なのです!」
「な、何だって、たかが人間二人に!?」
 バルログは驚きのあまり立ち上がってしまった。
「この要塞が崩壊するのも時間の問題です! バルログ様、どうかお力添えを!」
「わ、分かった!」
 バルログは、どかどかと騒がしく牢屋を去っていった。
 フォレアは一人、牢屋に残された。
 鉄格子は壊されており、脱走する好機であったが、フォレアにはできなかった。一先ず助かった、という安堵感に、意識が遠退いてしまったからだった。
    ※※※
 両手が黒く、大きな翼となった者が空を飛んでいた。
 黒魔術の力で、魔鳥と融合を果たし、鳥人となったガルシアは、マグマロックとキボンボを隔てる川を越え、マグマロック上空を飛行していた。
「あれがマグマロック……、随分と雰囲気が変わったものだな」
 マグマロックは、かつてガルシアと仲間達が来た時と比べて、その姿がまるで違っていた。
 バルログが召喚した魔物が至る所に点在し、一城を守る兵士のようである。
「まるで要塞ですね。これは一筋縄では行かないでしょう」
 ガルシアの背中にぴったりとくっつきながら、ピカードは地上を見下ろす。
「正面から行ったら一苦労しそうですね、雑兵くらいはどうという事はありませんが、肝心のバルログと戦うまでに、無駄に体力を消耗しますよ。どうします、ガルシア?」
 ガルシアは既に策を練っていた。
「このまま空中を進み、上空から奴らを奇襲するぞ。驚かされて統率を失った群れなど、烏合の衆に等しい」
「待ってください、いくらなんでもそれは危険では?」
 ガルシアの立てた策は、一見良策に感じられるが、多少の危険も孕んでいた。
 要塞と化したマグマロックの内部にも、魔物は多数いると考えられる。外にいる衛兵の役を担う魔物を踊らせる事ができたとしても、中にいる仲間を呼ばれれば厄介な事態となる。
「そう心配するな。魔物の群れなどたかが知れている。俺達の敵ではない、自信を持て、ピカード」
「そうかもしれませんが……、うわっ!?」
 ガルシアは羽ばたき、急に動き出した。危うくピカードは落ちそうになる。
「あああ、危ないじゃないですか!? こんな所から落ちたら……」
「ああ、すまん。これから急降下するから、振り落とされんようしっかり掴まってろ」
 ガルシアは羽を折り畳み始めた。
「ち、ちょっと待ってください! 心の準備が……!」
 ピカードの訴えも虚しく、ガルシアは急降下した。遠い地面が見えると、それがピカードへと迫り来るよう錯覚がした。
 ピカードは、体の中から何かが抜けていくような、何とも言えない嫌な感じになる。
「うわああああ!」
 ピカードは絶叫した。
「な、何だ!?」
「落ちてくるぞ!?」
 ピカードの叫び声が効果的に働き、地上の魔物達は空から強襲するものに、完全に意識を反らされていた。
 ガルシアの奇襲は見事に成功した。
「地獄の破壊炎、『ハーデス・ブレイズ』!」
 ガルシアは、地面にぶつかる寸前で身を翻して融合を解き、着地した瞬間に魔法を唱えた。
 空間に紅蓮の巨大な魔法陣が展開され、中心部から最大級の地獄の炎が出現し、辺りに四散する。
 すっかり不意を突かれた魔物達は、なすすべなく炎に巻かれていった。
「見ろ、ピカード。敵は総崩れだ。策は成ったぞ!」
 ガルシアは嬉々として言うが、ピカードはそれどころではなかった。
「……仕方のない奴だ、ではまずは俺が行くぞ!」
 ガルシアの策は成功し、ガルシアの怒濤の快進撃が始まった。
「地獄の眷属召喚、『サモン、イビルホーク』!」
 ガルシアの魔導書に描かれた、魔鳥の挿し絵が顕現し、漆黒の鷹が姿を現す。
「暗黒の翼、『ブラックウィング』!」
 鷹は人と同じ大きさとなり、漆黒に赤色の縁のある翼を持つ、真の姿となった。そして、その強固な翼と、鋭利な爪を使い、飛び回りながら魔物の群れを一網打尽にしていく。
『サモン、デーモン!』
 続けざまにガルシアは、筋骨逞しいデーモンを召喚した。
「烈震の剛拳、『スタンチャージ』!」
 デーモンの筋肉が更に隆起し、鋼となった肩を怒らせ、デーモンは魔物の群れへと、一直線に突っ込んでいった。魔物はまるで、酒瓶のように次々と吹き飛ばされていく。
『サモン、ハウレス!』
 ガルシアは、デーモンを下げ、地の底から豹のような悪魔を召喚した。
 本の挿し絵の通り、ハウレスは、地面に闇の渦を起こしながら、血の色をした長い爪から、徐々に姿を現していく。
「猛毒の魔爪、『ベノムネイル・ラッシュ』!」
 青い体色で、長く、鋭い真っ赤な爪を持ち、紅色のたてがみをした、豹の姿をした魔獣ハウレスは、両手の毒爪で素早く魔物を切り裂いていった。毒爪を受けた魔物は、猛毒により傷口から溶けて消えていく。
『サモン、タナトス!』
 ハウレスの攻撃が終わり、ハウレスが消失すると、ガルシアは最強の眷属を召喚した。
 それは、ガルシアの後方に出現した。幾重もの布を身につけ、獣の頭蓋骨を被っている。
 タナトス、死神の王。魔導書の挿し絵の下にはこう書かれていた。
「魂の破壊……」
 タナトスは、残った魔物の群れから、心臓を抜き取り、自らの元へ集める。
 タナトスは、ガルシアと同時に指を鳴らした。
『ハート・ブレイク!』
 タナトスのもとに集まったたくさんの心臓は、一瞬にして弾け飛び、血飛沫が上がるのと同時に魂も外に出た。タナトスは死神らしく、魂を喰らって自らの棲む世界へと帰っていく。
「……ふっ、こんなところか……」