タイムスリップ (4)
「入れ替わったのが
夢でも現実でもどっちでもいいや。」
「今こうして一緒にいられるから。」
「そうだな…」
大輝はすずめの頬に置かれた手に
少し力を入れてすずめの顔を引き上げ、
ゆっくりとその存在を味わうように
キスをした。
「オレは過去には戻りたくねえな。」
大輝はすずめを抱きしめながら
そう言った。
「なんで?
過去に戻ってやり直したいとか
思ったことないの?」
「高校生の時は高校生のオマエが
好きだったんだろうけど、」
「6年分、今のオマエに対する
好きのが勝ってる。」
「?どういうこと?」
「高校生は高校生だった…」
「?意味わかんないんですけど。」
チッと大輝が舌打ちをした。
「高校生のオマエに
全然欲情しなかったっ
つってんだよ!」
「え!はっ?」
大輝とすずめは目を見合わせて
一緒に噴き出した。
「若い方がよかったって言われたら
どうしようかと思った。」
「オマエこそ。」
「ないよ。」
「高校生のオマエに
こんなことできねえし。」
大輝はすずめの首筋にキスをして
服の下から手をいれる。
「ふ…あっ…
そう言えば私、高校生の純情な大輝に
社会人になったら、あんなことも
こんなこともするよって
大輝変わっちゃうよって
教えたんだった。」
「は?マジで?」
大輝が焦る姿を見て
クックックッとすずめが笑う。
「ウソだよ。
聞きたがってたけど言ってない。」
「てめえ!」
大輝はすずめをベッドの上に押し倒して
両手を押さえた。
「わ!待って、大輝!
おじさん帰ってくるかも…」
「明日仕事いく?」
「うん…一応。」
「じゃあ、うち泊まれよ。
明日うちから出勤したほうが近いだろ?」
「ちゃんと寝かせてくれる?」
「さあな。」
大輝はすずめの頭と腰を支えて
抱き起こした。
「頭、痛まねえならだけど。」
「タンコブをさすってくれたら
すぐ治るかも。」
ベッドに腰をかけ、
大輝はすずめのタンコブに
手を置いた。
「すげえ腫れてんな。」
「触られるとジンジンする…」
「はぁ。マジで生きててよかった。」
「うん…」
大輝があんまりしみじみ言うので
すずめも素直に頷いた。
「無茶すんなよ。
オレ、オマエいないとか
もう考えられねえからな。」
大輝が頭に手を置いていると
ジワジワと温もりが、
頭から全身にまわるようだった。
あの時はあの時で
真剣に悩んだり
迷ったりして
拙い決断の繰り返しをして
今という時がある。
それが愛情にも深さを出して
お互いがかけがえのない
存在になっていると
気付かされた2人だった。
作品名:タイムスリップ (4) 作家名:りんりん