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靴ベラジカ
靴ベラジカ
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魔法少年とーりす☆マギカ 第十話「グリーフ・ラッシュ」

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 「どうしたの、休もうか?」
掌を顔に向け、身体を震えさせて立ち止まったイオンにトーリスは訊ねた。 あまりにも急、あまりにも突然。 魔女の同時多発、テロ行為染みた、仕組まれた人食い化け物誕生の可能性を耳にしても、この知り合いは身体その物はいたって健康そうにピンピンとしていて、これほど急に体調を崩すとも思えない。 持病持ちだろうか。
 「いる」
中指に収まる柘榴のソウルジェムを真正面に伸ばして、化け物の様に赤眼を見開き見回し、点灯と反応が強くなるジェムを横目に、柘榴の魔法少年、イオンは進んでいた裏路地の一点を凝視した。
 「いるって、まさか」
悪寒がした。 気付けばあんなに晴れやかな空が見た事もない、鮮やかな色を作ろうとして失敗に終わった水彩絵具の残骸染みた、小汚く、それでいて何故かピンクやらエメラルドグリーンやらが、バランス悪く雑じった不快な空模様に変わっている。 儚き英雄候補達の背後、小さな家電量販店の十台近いテレビ画面達に映る、小手先と言う小手先を掻き集めたかのような、二流お笑い芸人任せの薄ら寒い三流グルメ番組の映像。 それがノイズもなく当然の様に、首無しで気色の悪い白衣の紙人形が揺れるコラージュ世界に変わり、中学生位の幼い少年の歌声を奏で出す。 大粒の冷たい汗を額に落とす魔法少年を余所に、トーリスは不意に興味を惹かれた。

 《《メイン・ソーン、ヌル・マート(僕の子供達、勇気を出して)。 ウェー・ゴート・ヴェルトラウト、バウト・グウト(神様を信じれば、みんな上手くいくんだから)―》》
幾度か耳にした音の羅列。 トーリスが意味を脳から出力しようとした寸前。
 町並みはうねり、道路は軋み、罅割れから金色の麦が生え、奇妙な文章がびっしりと刻まれた古紙が何枚も積み重なる不気味な魔女的センス世界に浸食されていき、
 目前に、尖った帽子と嘴風の尖ったマスクをした鷹の様な化け物。 魔女が、そこに現れた。