この瞬間をいつまでも
「オマエ…今日のアレ、
後で消しとけよ?」
「えーどうしようかな?」
「オイッ絶対誰にも見せんじゃねーぞ?」
「動いてる馬村、やっぱり
後で見たいし。」
「バカ。やめろよ。ちょ、貸せ!」
ビデオを取り上げようとして
もみ合いになる。
「わ!」
ゴンドラが大きく揺れた。
「危ないよ。馬村。」
「オマエが変なの撮るから。」
「見せないって。」
心配症で、優しくて、
自分のことをずっと気にかけてる馬村。
こんなの知ったら、
みんな馬村を好きになってしまう。
ホントに自分だけで楽しもうと
すずめは思った。
家に帰り、テーブルの上にビデオを置いて
すずめは風呂に入った。
風呂からあがると、
ワナワナしながら諭吉が
ビデオを再生していた。
「すずめ…これ、観覧車?
なんでてっぺんで
スイッチ切ってるのかなぁ?」
「え……?!|||||」
「何にもしてないよね?
だって馬村くん、前に来た時
しませんって言ったもんね?」
「は…はい…」
おじさんが怖い顔になっている。
「また馬村くん、
うちに呼びなよ。ね?」
仁王の顔が怖くて、
「~~~イエス!マム…」
とすずめは返事をした。
一番見られてはいけない人に
見られてしまい、
やっぱり消しておけばよかったと
後悔したすずめだった。
作品名:この瞬間をいつまでも 作家名:りんりん