この瞬間をいつまでも
やっぱり最初の方は、
画面が縦に揺れたり、
横にすぐ動いたりで
酔いそうな映像だった。
「おえ…気持ち悪いね…」
「おえって…だから言ったろ?」
その後はすずめの絶叫が入ったと思うと
すごいスピード感だった。
が、ところどころで、
馬村のほうにカメラが動き、
横目で心配そうに見る馬村が
映りこんでいる。
「あ、また馬村を見てしまった。」
というすずめの小さなつぶやきが
入り込んで、終了となっていた。
「何これ!///」
「何やってんの?///オマエ…」
これはさすがにお互いが恥ずかしかった。
「///もうビデオやめる…」
そう言ってすずめは
ビデオをバッグにしまおうとしたが、
「あ!あと1箇所だけ!いい?」
と向かったのは、観覧車だった。
「これなら落とす心配もないし。」
そう言って向かい合って座る。
「だからオレを撮るなよ。」
カメラを自分の方に向けられ、
馬村は横を向く。
「へへ。この上からの景色を
撮りたかったんだ。」
「ね?高いね?」
「浮かれてるな。オマエ。」
「そりゃあね。馬村と一緒だし。」
「またそういうことを…
ビデオに全部入ってるぞ?」
「あ!」
すずめはカメラを回しながら
赤くなる。
そろそろてっぺんかというとこで、
馬村がすずめの横に座り、
ビデオのスイッチを切った。
「あ!一番いいとこなのに。
なんで切っちゃったの?」
「一番いいとこだからだろ?」
馬村がすずめの腕を優しく掴み、
じっと目を見つめる。
「え…」
馬村の顔がそっと近づき、
唇と唇が触れた。
「オレはビデオでオマエ見るより
直接触れたほうがいいし。」
「でも馬村真っ赤だよ?」
「っ…それでもそっちのがいいんだよ!」
「うん。そうだね。」
そう言って2人はまた
ゆっくり唇を合わせた。
作品名:この瞬間をいつまでも 作家名:りんりん