甘くて苦い・・・
「「「よろしくお願いしまーす!」」」
2年前のバレンタイン前日。
結局、ツル、カメ、ゆゆかの3人が、
諭吉にフォンダンショコラの作り方を教わるため、
すずめの家にやってきた。
「プロに教われるなんてラッキーだよね。」
「ほんと!すずめちゃん、ありがとう。」
「でもカメちゃんは誰にあげんの?好きな人いるの?」
「え~~私の好きな人は、諭吉さん!!」
「え!!!」
諭吉がビックリして動揺している。
「教わった人に教わったものをあげるなんておかしくない?」
「冗談だよ。半分は自分用。
あとは猿丸にでもあげよっかな。
犬飼と馬村はもらえるのに、
どうせ一人もらえないだろうからさ。」
諭吉はホッとしていた。
「じゃあ、まずチョコレートを小さめに刻んでね。
甘くしたい人はミルク、したくない場合はブラックで。」
「はぁい!」
キャッキャ言いながらも順調に
ケーキ作りは進んでいった。
すずめ以外は。
「痛ーっ!!」
「わー!すずめ!
自分の身を削ってどうする!」
諭吉が救急セットをもってかけつける。
「すずめ!卵の殻入ってるぞ!」
「え!どこどこ?」
ひとつの動作ごとに諭吉のダメだしが入る。
「・・・馬村くん、
お腹壊さないといいけど。」
「ほんとにね。」
なんだかんだバタバタしながらも
なんとか形になった。
「で、できた!」
「すっごい!プロみたいな出来上がり!」
「あとはラッピングしたら完成だねー。」
「よかった~~。明日渡すの楽しみだね。」
「アンタのチョコ食べる馬村くん、
ちょっと見てみたいわ。」
「それ、どういう意味?」
みんなに心配されながらも、
どうにか馬村へのチョコが完成した。
みんなが帰って行ったところで、
ピリリとすずめの携帯のメール音が鳴った。
『悪い。明日ダメになった。』
馬村からのメールだった。
えーーーーー!!!
せっかくフォンダンショコラできたのに!
すずめはすぐに折り返し馬村に電話すると、
「もしもし?」と、違う男の人からの声が電話から聞こえた。
「えと、これ、馬村の電話じゃ...」
「あ、与謝野さん?俺、大輝の兄貴の大志です。」
「あ!お兄さん!」
「ごめんね。明日大輝と約束してたんでしょ?
大輝さ、なんか夕方から熱出してぶっ倒れたみたいで。」
「えっ!!大丈夫なんですか?」
夕方から?
今日はチョコづくりでゆゆかちゃん達と約束してたから、
ほとんど別行動で、体調悪いの気づかなかった。
「うん。でも高熱で朦朧としてるし、
もしかしたらインフルエンザかもしれないから、
お見舞い来なくていいからね。
だから明日もお出かけできないけど、ごめんね。」
「あ、いえ...わかりました。お大事に。」
大志に言われ、仕方なく電話を切った。
高熱で朦朧としてるなんて、
大丈夫なんだろうか?
私に何かできること...なんてないよね。
グラタンやフォンダンショコラ作ってこれなんだから、
行っても邪魔になるだけかな。
・・・病気だから仕方ないのはわかっているけど、
せっかくチョコ作ったのになぁ。
馬村の体が心配なのと、
チョコが渡せなくなって残念なのとで、
すずめは複雑な気持ちになった。