甘くて苦い・・・
「あれが夢じゃなかったって気づいたときは
マジ血の気が引いたもんな。」
「だいぶ我慢した?」
「した。」
「~~~ごめん。」
大学入って最初の夏に
ようやく二人は結ばれたのだが、
結局最初のバレンタインから
一年半も心の準備にかかってしまった。
「今は遠慮なく触れられる。」
そう言って19歳になった大輝は
すずめの体に遠慮なく触れる。
すずめも大輝に触れられると嬉しいし、
もっと触れて欲しいと思う。
「でもあの時、ホント言うと
途中でやめちゃって残念っていう
気持ちもあったんだよね。」
すずめは当時の自分の気持ちを正直に伝えた。
「え?マジで?」
「大好きだったんだねー。
大輝のことが。」
「今は?」
「もちろん好きだよ。
毎年好きが大きくなってる。」
「///オレも。」
「ずっと一緒にいてね。」
「ん。」
再びキスをして、大輝の手が遠慮なく
すずめの体を這う。
「ん、んっ」
「あの後さ、つぶれたケーキも食ったんだよな。」
「え、んっ、捨てたんじゃないの?」
手を這わせながら、
思い出したかのように大輝が話し始めた。
「うん。美味かったからもう一個と思って。」
「そうなんだ。あっ」
「でもあれさ、卵の殻入ってたんだよな。」
「えっ!なんで言ってくれなかったの!?」
「言ってもしょうがねえだろ。」
再び大輝はすずめにキスをする。
「前より上手になったんだからいいじゃん?」
「来年も再来年も作ってくれんだろ?」
「そうだけど...んんっあっ」
じゃあ、なんで今頃言うの、とすずめは
切れ切れになる声の中で尋ねると、
「あの時我慢した分の仕返し。」
と言いながら、すずめを十分に愛した。
ブラックチョコのフォンダンショコラのような、
バレンタインの甘くて苦い想い出。