魔法少年とーりす☆マギカ 第十二話
「せやけど… 俺、やらなきゃあかん。 使命だけは、これだけは、やっときたいんや」
濁り切った卵型、深緑のソウルジェムが放り投げられる。 淀みから漉し取られた様な、澄み切った深緑が、輝ける翠の水流が上空へ飛翔し、魔女が作り出した暗雲の一点を穿つ。
「哀れな子羊達の為… 呪いで淀んだ空を、吹き晴らす―…。」
無慈悲な処刑人、異端審問官の深緑の装束が眩い粒となって空へ舞い、
ときわ中セーラー服が、倒れ込む褐色少年の、火傷跡を残して尚瑞々しい肌と身体を再び覆い、激突寸でで再構築を終える。 高空で深緑の光はゆっくりと暗雲を押し流しながら広がり、呪いを祓う純銀と共に、惨状を晒すときわ町全土へ降り注いでいった。
駆け出すフェリクスの手は届かず、深緑のジェムは自由落下。 卵の様に容易くコンクリートに砕け散った。
最後の少年十字軍から涙が吹き零れる。 生き残りのときわ中学生は友の肩にそっと手を乗せた。
息絶えた深緑の顔に涙はなかった。 まるで満足するまで遊び疲れ、眠ってしまった子供の様に、火傷の痕を僅かに残す、その最期は穏やかなものであった。
作品名:魔法少年とーりす☆マギカ 第十二話 作家名:靴ベラジカ