キスのあとは
「俺からは、もう何もしないよ。だから、おまえが触って」
どれだけの時間そうしていただろうか。
すずめは赤くなりながらも、おずおずと唇に触れるだけのキスをする。
「ん…」
何度も何度もついばむようなキスをしていると、何か物足りないような気がして、馬村の首をペロリと舐めてみた。
すると、馬村の身体がピクリと動き、一瞬息を飲むのが分かった。
馬村が気持ちよくなってくれるなら、いいかもしれない…それぐらい軽い気持ちで、首すじから鎖骨あたりを舌で舐める。
「…っ」
馬村が息を飲むのが分かる。
吐息も熱く変わってくると、すずめもまた身体の芯が火照るような感覚を覚え、もっと触れたい、触れてほしいと思った。
その時…。初めて、愛しい人の身体に触れることが、こんなにも幸せなことだということに気がついた。
今度は、触れるだけのキスではなく、口を開け舌を絡めてみるが、馬村からは何もしないと言ったとおり、舌を動かすのはすずめだけだ。
「ふっ…ん…はぁ…ま、むら…ねぇ」
「ん?」
馬村もして…と目で訴えたつもりだが、全く気がつかないふりをする。
「いじわる…」
「俺からもしていいの?」
すずめは頷き、馬村の唇を舌で舐める。
「馬村も…して…っん」
ようやく、欲しかった唇が与えられて、すずめは快楽に身を委ねる。
「はっ…ぁ…ん」
馬村は、激しすぎない程度にすずめの口腔内を弄ると、物足りないと感じるところでわざと愛撫を止める。すると、すずめからもっと欲しがるように馬村の舌と絡める。
「止めちゃ…ダメ…っん」
抱き合うようにキスをしている2人は、身体同士が密着し合っている為に、少しの刺激で下半身に熱が帯びる。馬村が、腰を揺らすとすずめの身体がビクビクと震えた。
「ひゃ…っ、あ…ん、あたっちゃう…から」
「嫌?」
「だって…なんか…おっきいし…」
すずめは顔を真っ赤にしてそう言うと、馬村の顔を覗き見る。
「そりゃ…こんなにくっ付いてキスしてたら勃つだろ」
馬村は腰をグッと押し付けると、すずめの反応を見るように軽く揺らした。
「あぁ…っん」
すずめの下着の上から擦るように動かされると、布を隔てているのがもどかしいように感じてしまう。
(も…全部脱ぎたい…もっと、触って)
すずめは自分から、腰を揺らして気持ちいいところを擦る。
「はぁ…ん、…あぁっ」
「…っ、おまえ…ここで犯されても文句言えないぞ…誘ったのはおまえだからな」
馬村は、すずめの下着の上から手を滑らせると、すでに濡れているそこを人差し指と中指で擦る。
「あっ…ん、はぁ…もっと」
「すげ…濡れて、俺の手ビショビショ」
「やぁ…っ、言わな…いで」
下着の上からでも、クチュクチュと音が聞こえるぐらい濡れた蜜が溢れてくる。
すずめは、ずっと焦らされているような、あと1つの刺激が足りないようもどかしさを感じるが、自分ではどうしたらいいのかがまるで分からない。
「ゆ…びっ、止めちゃ…ダメ…ぁ」
馬村はすずめのブラウスのボタンとブラジャーのホックを外し、形の良い胸に舌を這わせた。
「あっ…やぁ…ん」
敏感な場所を指で擦られながら、胸への愛撫も合わさって、すずめの身体はおかしくなってしまったのかと思うほど、敏感にビクビクと震えた。
「あぁっ…!はぁ…はぁ…っ」
擦っていた人差し指と中指を、すずめの中へヌチュリと入れると、少しスライドさせるだけで絶頂に達してしまう。
「イッた?中…絡みついてくる…」
「なにっ…これ?変っ…あ、指…もぅ」
イッた直後のすずめの恍惚とした表情に見惚れていると、スカートのポケットに入っているすずめの携帯が振動する。
すずめは全く気がついていないため、馬村がそっとスカートから携帯を取り出し、表示を見ると″先生″の文字。
もちろん無視を決め込むが、すずめは留守電にしていないためか、切れることなくずっと振動し続ける。
「ちょっと携帯借りるぞ…。なんだよ!しつけーぞ!」
今いいところなのに…その言葉はもちろん飲み込んだが。
「ま…むら?…っ、だれ…?」
すずめの質問には答えず、優しく髪を梳くと、気持ちよさそうに目を瞑る。
ここが学校だということを忘れてしまいそうだった。
「君たちね…そこ。3階の窓から見えるからね…」
「……っ!」
馬村は焦って思わず窓を見ると、薄いカーテンが引かれていて、窓も閉まっているため見えるはずがなかった。
「見えねーよ!」
「やっぱり一緒か…仲良く授業サボっちゃって。まあ、仲直りしたのはいいけどね、学校でそういう行為に及んだ場合停学だから。これは教師としての忠告。午後の授業は必ず出ること、分かった?」
「っ…分かったよ…」
全く気がついていなかったが、午前中の授業はすでに終わっていて、昼休みに入っていた。
電話を切ると、先ほどまで感じていた身体の熱が見る見るうちに冷めていく。
この場合は良かったといえるだろうか。
すずめの衣服の乱れを直すと、床に降ろし立たせようとするが、すずめは腰が抜けたように足に力が入らず立つことが出来なかった。
「大丈夫か?」
馬村の腕に支えられると、すずめから胸に顔を埋めた。
「うん…」
馬村もまたそんなすずめを抱き締める。
そして優しいキスを頬と口に落とした。
「キスの後は、どうしてほしい?」
「ん…?ギュッてして…」
こういう気持ちが″愛しい″と言うんだ。
相手に触れたくて、触れて欲しくて。
触れられていると幸せで。
そして…いつも、笑顔でいてほしくて。
fin