二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

桜の幻想 第二話(薄桜鬼 風間×土方)

INDEX|3ページ/3ページ|

前のページ
 

まだ足元がふらついている。

こんな状態の奴を放っておくわけにはいかない。

…こいつならばなおさらだ。



「全く、見ていられんな…。…来い、俺が屯所まで送る」

「あぁ?冗談じゃねえ。俺は女でも何でもねぇぜ」

「今はそんなことは問題ではない。そんな青白い顔をしておいて馬鹿なことをほざくな」

「だーかーらー、大丈夫だって何回言わせりゃ気が済むんだ」

「その顔で大丈夫なわけあるかっ」

「あぁ、ったく!何でもねぇっつってんだろーがっ!」



何を言っても聞かない。

決して人を頼らない。

一言も弱音を吐かない。

そんな強情な態度が俺の感情に拍車をかける。

そこまで俺は頼りないのか。

そこまでして俺の傍から離れたいのか。

―…そんなに、俺が嫌なのか…。

止まることの知らない様々な感情が渦巻く。

そして、俺という器から感情が溢れたかのような錯覚に陥ったその時。



「貴様に何かあっては俺が困るんだっ!」



土方の両肩を掴み、無理矢理目を合わせる形にした状態で、そう言った。

いや、気がついた時には、もう既に言ってしまっていた。

辺りの空気が一瞬止まる。

土方は目を見開いたまま硬直している。

俺も自分の言った言葉が理解できず一瞬固まっていたが、状況を把握したと同時に体が跳ねた。



「っ…もう、知らんっ。勝手にしろっ」



土方に背を向ける。

自分でももはや何を言っているのか、何を言いたいのか、訳がわからなくなっていた。

胸が苦しい。

心臓が脈を打ち過ぎて痛くなってきた気さえする。

熱い。

果てしなく、顔が熱い。

今が夕暮れでよかった、心から思った。

耳まで赤くなっているであろうこの顔に気づかれなくて済む。



「…風間」



不意に、土方が俺の名を呼ぶ。

俺は答えない。

振り返りさえしない。

できないのだ。

すると、またも不意に、土方の手が俺の手に触れる。

それだけでビクッ、と体を強張らせてしまう俺の体。

たまたま手がぶつかっただけか?

その考えは次の瞬間、消え去った。

土方が、俺の手を握ってきた、その瞬間に。



「…ありがとう」



蚊の鳴くような声でボソ、と呟き、手が離れる。

それと同時に振り返ったが、土方は既に小走りで駆けだした後だった。

その背中を、見えなくなるまで見続けた。

先ほどまで握られていた手。

まだ感触が残っている。

―ドクン、ドクン…

あぁ、うるさい。

少しは落ち着け、俺の心臓。

壁に背を預け、片手で顔を隠したままズルズルと地面に座り込む。

本当に、本当に、夕暮れ時で助かった。

心の底の底の奥底から、俺はそう思った。





この時の俺は知らなかった。

『貴様に何かあっては俺が困るんだっ!』

俺がそう言って、奴が硬直していた時。

真っ赤になったそいつの顔を、俺の顔と同様、真っ赤に染まった夕焼けが隠していたということを。



そして気がついた。



「…あ」



この小包を渡しそこねたという事実に。