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桜の幻想 第三話(薄桜鬼 風間×土方)

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~土方side~



「突撃!隣の晩御飯!!」

「だあああぁ!新八っつぁんいい加減にしろよっ!俺の飯とんなってば!!」

「晩飯に食い過ぎると体が肥えちまうぜっ?というわけで…その魚いただきっ!!」

「あああ俺の魚!!新八っつぁん達は晩飯かもしんねーけど俺的には朝飯なのっ!さっき起きたんだから!!」

「そんな言い訳は通用しなーい!!」

「もう少し羅刹を丁重に扱ええええええ!!」

「うるせえぞてめぇらっ!!飯ぐれぇ黙って食えねぇのかっ!!」

「言ったところで無駄だよ。僕はもう諦めたからさ、土方さんもそろそろ諦めたら?」

「総司!てめぇも黙ってろっ!!」

「ま、まぁまぁ落ち着け、トシ。別にこのくらい賑やかでもいいじゃないか」

「アンタは甘すぎんだよ!」

「確かに。この騒々しさを賑やかって言っちまう近藤さんは優しすぎだな」

「…そういうお前も楽しそうに見えるが」

「まあな。お前だってそうじゃねえのか?」

「興味ない。飯を食べられるのなら静かだろうがうるさかろうが関係ない。」

「そーいや斎藤、おひたし好きだったよな。俺のも食うか?」

「…(コクリ)」

「斎藤!左之!!てめぇら二人でほのぼのしてねえでこいつらを止めやがれええええええええっ!!!」



騒々しい。

ただひたすらに騒々しい大広間。

いや、やかましいと言ったほうがいいのかもしれない。

仕事が一段落ついてやっとゆっくりできるかと思っていたら、これだ。

俺のツッコミが絶えることはない。



「みんな楽しそうでいいなぁ」

「本当に呑気な人だよな、アンタって」



しみじみと心から愉快そうに言う近藤さんに、ため息混じりで言う俺。

しかし、その瞳はいつの間にか遠くを見つめていた。



「…俺はな、トシ。飯の時にどんなに騒いでくれたって構わない。ただ、この騒々しさが…みんなの笑い声がなくなることが、一番怖いんだよ」

「近藤さん…」



戦に出て、目の前に立ちふさがる敵を斬る。

それが俺達新選組の使命。

ただ、口で言うほど簡単なことではない。

こっちが敵を斬るだけ、こっちも斬られる。

この幹部連中だって、いつどこで命を落とすかわからないのだ。



「これから先、新政府軍とどう戦っていくか…。鬼の連中もまだ大人しくしてはくれないみたいだしなぁ…」



―…ドクン



「ぉ、っと。どうした、トシ。いきなり立ち上がって」

「あ、いや…。…少し、外の空気を吸ってくる。怒鳴りすぎて頭に血が上ったみてぇでな」



軽く冗談を交えながら、足早に大広間を出る。

鬼。

その一言を聞いただけで、頭に思い浮かべてしまう。

―…風間千景。

いつからだろうか。

こんなにも頭の中があいつのことで埋めつくされてきたのは。

先日の道案内で倒れた俺を抱きとめてくれた時から?

その前の戦闘で俺を庇ってくれた時から?

いや、きっと、もっと前からだろう。

最初は敵意しかなかったはずだ。

それがいつの間にか、奴の姿を探してしまうようになった。

奴と刃を交えることを心待ちにしている自分がいた。

敵なのに。

戦わなければならない相手なのに。

ましてや奴は、俺がこのような忌々しい体になるきっかけを作った張本人だ。



「はぁ…なーにやってんだかな、副長ともあろう者がよ」



自傷気味にポツリと漏らす。

中庭に辿りついた俺の周りには誰もいない。

俺の言葉は深い夜の闇に呑みこまれていった。



「新選組副長ともあろうものが随分と無防備だな」

「…っ!誰だ!?」



突如現れた声。

気配すら感じなかった。

ユラリ、と目の前の闇が動く。



「…風間、千景」



それは、まさに今の今まで俺の頭の中に存在していた人物だった。

一瞬、ついに俺の頭がいかれて幻覚が見え出したのではないかと疑う。



「何だ、化け物を見るような目で見て。無礼な奴だ」

「何故ここに来た?また千鶴を狙ってか?」



刀に手を添え、目の前の男に言う。

こいつがここにやってくる理由なんて、それしかない。

千鶴がいるからここに来る。

それだけ。

―ズキン

胸が苦しい。

締めつけられているかのように、痛い。

俺はこの感情を知っている。

決して言葉にはしない。

したくない。



「違う」



返ってきた答えは、予想に反するものだった。

では何故、と続けようとした俺の言葉を遮って、風間は言った。



「…貴様に、礼を言いに来たのだ」

「礼…?何のだ?」



俺が問うと、風間は少し俯いた。

言いにくそうにしている。

数秒の間をおいて、ようやく話し出した。



「…この前の、道案内の礼だ。あの場で言おうと思っていたのだが、その…言いそびれてしまって。しかし礼を言わぬままというのも気分が悪いと思い…」



ゴニョゴニョと呟くように言う風間。

俺はそれを聞いて呆然とした。

開いた口が閉じられない。



「お前、まさかそれを言うためだけにここに来たのか…?」

「…悪いか」

「…ぶふっ!」



ぶっきらぼうに言い放つ男を目の前にして、俺は思いっきり吹き出した。

笑いが堪えられない。



「なっ、いきなり何なのだ!」

「だってあの風間がわざわざそんなことの礼を言うためだけに…くくくっ!」

「笑うな!何がおかしいっ!」



ああ、腹が痛い。

腹筋が割れそうだ。

まったく、この前の迷子のことといい今のことといい…。

おもしろすぎる。



「…ふぅ、で?礼の言葉は?」

「…先日は助かった。心から礼を言う」

「はいよ、どういたしまして。…ぷっ」

「わざとか貴様っ!!」



悪い悪い、と心にも思っていない言葉を並べて言い訳する。

全く、何をしているのだろうか、俺は。

普通に考えてあり得ない状況で、俺は笑っている。

心からこの場を楽しんでいる。

ずっとこの時が続けば、とまで考えてしまっている俺がいる。

自虐気味に苦笑いがこぼれた。



「全く…まぁ、礼は言えた。それでよしとしよう」

「…帰るのか?」



自分のものとは思えないほど弱弱しい声に、自分で驚いた。

すぐにバッ、と口を覆う。

…しまった。

今の言い方だと、まるで風間に帰ってほしくないみたいじゃねえかよ。

自分で自分に悪態をつく。

ふと風間を見たが、風間は動こうとしない。

どこかソワソワとしながら、袂をやたらと意識している様子でたたずんでいる。



「帰ってほしいのなら…すぐにでも帰る」

「違うっ!」

「っ…?」

「…ぁ…っ」



再び口を覆う。

俺は今、何を言った?

『帰ってほしいのなら…すぐにでも帰る』

『違うっ!』

この流れでの違う、は…。

『帰らないでくれ』

顔に熱がこもってくるのがわかる。

目の前の男に、『違う』の真意を見透かされてはいないだろうか。



「…帰ってほしいのなら今すぐにでも帰るが…」



言いながら俺に一歩ずつ近づいてくる。

―ドクン

胸が大きく高鳴ったのがわかった。

風間はそのまま距離を詰め、