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オダワラアキ
オダワラアキ
novelistID. 53970
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同窓会

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ひるなかの流星【同窓会】
馬村、すずめ20歳。
設定は他の話と合わせています。
一人暮らしのすずめの家に、半同棲状態の馬村。
そんな2人のもとへ、高校の同窓会の案内状が届く。高校1年の担任だった獅子尾先生も来るらしい。
馬村は元クラスメート達や獅子尾にすずめのことを見せたくなくて…。
大人の女性になったすずめを書きたかったんです。





まだまだ残暑の残る9月の初め、すずめはいつもより遅い朝食を2人分作っていた。

8月は夏休み時期で、毎日のように学生や親子連れが水族館を訪れる為、ほとんど働きっぱなしだったすずめも、9月に入るとようやく忙しさも一段落ついて、5日ほどの夏休みをもらうことが出来た。
まだ馬村の大学も夏休みのため、日中はダラダラと2人で過ごしている。

馬村は、すずめが今年の6月に家を借りてからというもの、ほとんど毎日すずめの家に入り浸っていて、馬村の親も公認の半同棲状態だった。
もちろん、すずめの叔父は公認ではないが。
しかし、パジャマや下着、歯ブラシなどのお泊まりセットだけではなく、替えの洋服やパソコンまで一通り置いてあり、家賃や光熱費なども折半にしていることから、すでに同棲しているとも言える。

毎日、2人分の朝ごはんを作り、早番の時は大学に行く馬村よりも早く仕事に出かける。
社会人になってからはいつも化粧をし、長い髪を緩く巻いて、短めのタイトスカートやショートパンツで仕事に出かけることが多い。

今日も休みではあるが、馬村が起きるとすでに化粧をしていて、夏らしい水色のショートパンツにチェックのキャミソールの上から、シースルーのブラウスを羽織っている。
それらの服は、すずめにとてもよく似合っているとは思うが、馬村としては少し足が出過ぎなことが気になる。

「おはよ…」
「おはよ〜ご飯出来てるよ。食べよ?」

「ああ、いただきます」
馬村は、顔と手を洗ってテーブルに着くと手を合わせる。

食事をしながら、すずめのことを覗き見ると、目が合って。
すずめは、なに、と優しく笑う。

いつから、こんなに綺麗になったんだっけ…。

すずめのことを数え切れないほど抱いて、抱くたびに女になっていくすずめにいつも胸を打たれて。

本当は誰にも見せたくない。

結婚すれば俺のものになる?
紙切れ1枚ですずめの心を繋ぎ止めておけるなら。

むしろ自分がこんなにも心の狭い男だったのかと驚くぐらい、すずめのことに関しては独占欲が強くなってしまう。

すずめは、いつからか他の男から告白されたということを馬村に言わなくなった。
言うほどのことでもないと本人が思っているからか、独占欲の強い馬村を心配させないためかは分からないが。
同じ家に住んでいるのに、それを隠し通せるはずもなく、いつも結局は話す羽目になるのだが。

いつかの、里村とかいう職場の後輩、高校の後輩でもあったが、そいつから始まり、この間もカフェで馬村が席を外している隙にナンパされていた。

「大輝?なにボーッとしてるの?冷めちゃうよ」
「ああ、悪い…」
食べることも忘れて、物思いに耽ると、すずめが心配そうに顔を見た。
「ちょっと、寝足りなかったかも」
「そっか…ならいいけど。あ、そういえば、朝おじさんから電話が来たんだ!」
「なんて?」
「同窓会の案内状が家に届いたから、うちに送っておいたよ〜だって。たぶん、大輝の家にも届いてるんじゃない?おじさんに聞いてみたら?」
馬村は携帯を確認すると、未読のメッセージがあり、案の定父親からだった。
「来てるって、取りに行くの面倒だから、俺も送ってもらうわ」


「でも、同窓会っていったって、仲のいい奴らには会ってるだろ?別に行かなくてもいいんじゃねーの?」
「え〜でも、先生も来るってよ〜。人数の集まり悪かったら可哀想じゃない」
他にも会いたい友達いるし、などすずめが行く気満々でいるのに対し、馬村はあまり乗り気ではなかった。
自分がというよりも、すずめを行かせたくないだけなのだが。

今のすずめを、獅子尾にも元クラスメートにも見せたくなかったし、これ以上すずめを好きだという男が出てくるのはコリゴリだ。
だが、すずめが行きたいと言えば、絶対に心配でついて行くだろう。

すずめの家に案内状が届き、結局2人とも出席でハガキを出した。


同窓会は9月の終わり、日曜日の夕方。
すずめもその日だけは前もって休みの申請をしていたため、時間にも余裕を持って会場に足を運ぶ。

ビュッフェ形式の立食パーティーらしく、ホテルで行われるだけあって、男性はスーツ、女性はドレスアップしている人が多かった。

すずめも、丈の短い淡いピンクのベアトップのワンピースにストールを羽織っている。
元々のスタイルの良さや、一緒にいる相手が180センチ近い長身なことも相まって、すずめと馬村が一緒に現れると、全員が、特に男どもが色めき立つのが分かる。
「よ、与謝野…さん?」
「え?あ、はい…」
「びっくりした…めっちゃ綺麗になってるじゃん!」
「マジだ〜ヤバイ…惚れそう…」
本気とも冗談とも取れない会話を軽く受け流すと、馬村と共にゆゆか達のところへ行った。
馬村としては、すずめのように軽く受け流すことは出来ずに、見せつけるようにすずめの腰を抱いた。
「ゆゆかちゃん!ツルちゃん、カメちゃん!」
「あぁ〜!すずめちゃーん!可愛いじゃーん!スッゴい似合ってるよ〜」
「ありがとう!ゆゆかちゃんに選んでもらったんだ〜良かったよ!」
「ふん、当たり前じゃない」
馬村も、犬飼たちと合流し、結局いつものメンバーで固まっていた。
しばらくして、入り口付近がざわつくと、懐かしい顔がそこにいた。

「あ、あれ、先生じゃない?全然変わってないわね」
「ふふっ、そうだね〜。懐かしい」
色々あったなぁと笑う。
今ではいい思い出だけれど。

獅子尾も、すずめたちを見つけて寄ってくる。
「ツル、カメ、ネコ、チュン!」
「せんせ〜その呼び方止めてよ!もう〜。桃太郎じゃあるまいし!あはは」
カメが言うと、確かにねとみんなが笑う。
獅子尾と目があってすずめが軽く頭を下げ微笑むと、驚いたように目を丸くした。
「あ、ほら〜先生もビックリだよね!すずめちゃん相当綺麗になったでしょ!?」
「ちょっと、ツルちゃんっ…そんな変わってないってば!」
顔を赤くして慌てたように、手を振る様子も大人の色香を身に纏っていて、獅子尾はドキッとさせられた。
背伸びをしない程度に施された化粧が、よりすずめを美しく見せていた。

「うん、確かにな…。綺麗になったよ」

獅子尾との微妙なあれこれを知っているのは1人だけで、案の定ニヤニヤと面白そうに見ているゆゆかの手をつねる。
しばらく先生と立ち話をしていると、何人かのゆゆか目当てと思われる男子が寄ってきたので、すずめたちも一緒に話をした。


すずめが会話の合間に、チラリと馬村を見ると、たくさんの女子に囲まれている。
やはり、高校の時と変わらず、本人は仏頂面で対応していたが。

そんなことに、ほんの少しヤキモチを妬いて…。
でも、馬村がモテるのは今に始まった事ではないし、いつもちゃんと言葉で、好きだ、愛してると言ってくれる馬村のことを信じていた。
作品名:同窓会 作家名:オダワラアキ