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こらぼでほすと プラント1

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多少なりとも体力作り、ということで、適当にスタッフが顔を出して、ニールのウォーキングに付き合うことになっている。誰も来なければ、境内や墓所の掃除をするぐらいのことはできるようになった。
 今日も、そういうことで炎天下に麦藁帽子を被って、墓所の草むしりなんてものをやっている。
「あれ? おまえ、この間の・・・」
 せっせと草むしりをしていたら、ニールの足元をふわりと触りつつ黒猫が歩いている。あれから、何度か顔を見ているが、なぜか、リジェネが苦手らしく気配があると逃走する。今日は、リジェネがキラに呼ばれて留守にしている。にゃうーんと黒猫は鳴いて、ニールの眼の前にちょこんと座った。
「こんな暑いとこにいて大丈夫か? ・・・水でも飲むか? 」
 炎天下に黒い毛皮というのは暑いだろう、と、ニールが頭を撫でる。いや、おまえだ、と、ハイネがいれば指摘するところだ。体力作りとはいえ、まだまだ夏の暑さなんてものはニールには厳しい。
「ハムでよければ、ご馳走するけど? 」
 そう尋ねると黒猫は立ち上がり、にゃうーんと鳴いた。なんとなく通じているのか、寺のほうへ数歩歩いて黒猫は振り返っている。そういうことなら、休憩するか、と、ニールも寺のほうへ引き返した。七月の空は真っ青で、五月蝿いぐらいにセミが鳴いている。この季節は何度、体験しても慣れないものだが、去年よりは、なんとか動けている。少しずつ体力が戻っている証拠だ。



 ハムを用意して脇部屋の前に戻ったら、黒猫は待っていた。ここに来るとエサが貰えると学習したらしい。どうぞ、と、小皿に入れたミルクとハムを置いてやると、ハモハモと食べている。癒されるなあ、と、ニールのほうは、のんびりと眺めていると、頭に冷たいものが置かれた。
「ん? 」
「飲め。」
 亭主が回廊を昇ってきて、ペットボトルを女房の頭に置いた。戻って来た女房が嬉々として、ハムとミルクを用意していたので、おまえも水分補給しろ、と言うことらしい。
「あんたは? 」
「いいから飲め。・・・おまえ、顔が赤いぞ? 」
「あー、結構、暑かったからなあ。日焼けしたかな。」
「炎天下はやめろ。てめぇーの体力だと消耗する。」
「いや、大丈夫ですよ。大した時間じゃないし・・・それより、あんたは大丈夫なんですか? これ、猫ですよ? 」
 実は、坊主は猫が苦手だ。たまに寺の夫夫で散歩しても、猫は苦手だ、と、避けている。それなのに、その黒猫だけは苦手だと言わないので、女房も不思議に思っていた。あれから、たまに黒猫はやってくるが、亭主は、この黒猫だけは追い出さないのだ。本堂の前の階段に座り、となりの女房に亭主は笑いかける。
「これは、いいんだ。これ以外は殺す。」
「気に入ったんですか? 」
「気に入ったのは、おまえだろ? 居着いたら、どうするつもりだ? 」
「こんなに毛並みのいい猫は飼い猫ですよ。だから、居着きはしない。おやつを食べに来ているだけです。・・・でも、リジェネや悟空は怖いらしくて、あいつらがいると逃げるんです。」
「ガキは苦手なんだろ。・・・・そろそろじゃないのか? 」
 クピクピとミネラルウォーターを飲んで女房が、亭主の言葉に頷いた。
「来週ぐらいだと思うんですが・・・あんた、どうします? 一緒に行きます? 」
「行かねぇーな。俺は、長時間、タバコが吸えないなんて不自由は願い下げだ。」
「でも、ひとりですよ? 」
 来週、ニールと悟空、リジェネはプラントへ旅行に行く。寺の住人が根こそぎいなくなるので、できれば、亭主も一緒に、と、女房は勧めているのだが、頑として受け付けない。ニコ中の坊主は、長時間の禁煙が辛いし、わざわざ宇宙に遠征するのが面倒だった。
「気楽でいい。適当にチンできるものは用意しておけ。あとは、コンビニなり店なりで食う。」
「洗濯は? 」
「溜めておく。どうせ二週間かそこらだろ? それに八戒が顔を出すから問題はない。心配なら行かなきゃいいだろ? 」
「さすがに、断るわけにもいかないでしょう。シンとレイと悟空が準備してくれてるんだし・・・遠出は久しぶりですしね。」
 前回の宇宙への旅行というか治療は、ほとんど医療ポッドの中だったので、実際にシャトルでの移動なんて数年ぶりのことになる。それに訪問するのが鎖国状態だったプラントなので、寺の女房も興味津々の状態だ。ただ、寺の亭主が同伴しないので、そこだけが気懸かりなのだ。一緒に出かけてくれれば世話が出来るのだが、亭主はウンとは言わない。
「サバイバルには慣れてる。サルが養子になる前は、単独で修行してたしな。・・・・メシなんて空腹になったら食えばいいし、寝るところも確保できてるんだから快適だ。」
「そういうもんですかねぇ。」
「おまえだって、以前は単独だったろ? 」
「あーまあーそりゃそうだけど。」
 片や、ハードな坊主修行、片や、ハードなスナイパーなんて仕事だったので、そこいらは共通している。単独で仕事をしていた時があるから、どちらも慣れているといえば、そうなのだ。女房のペットボトルを取上げて、坊主が、ウグウグと飲む。
「野宿ってありだったか? 」
「相手が別荘なんかに篭ってると野宿で何日かっていうのもありました。あんたも? 」
「寺も民家もなければ野宿だ。食事も狩りで、なんとかなった。あれよりは断然、マシだろ? 」
「俺、携帯食と水だけは確保してたので狩りはしてませんが? てか、あんた、動物がさばけるんですか? 」
「血抜きしなきゃクソマズイ。それに毛皮は焼くと臭いしな。・・・おまえ、携帯食って・・・それ、野宿じゃねぇーだろ? 」
「でも、寝るのは地面でした。だいたい、火は焚けないんですよ。相手にバレるから。」
「あーなるほど。」
「火力ってレーダーに察知されちまうでしょ? レーダーの範囲よりは離れてるとはいえ、強力なエネルギーはマズイです。」
「そこいらは違うんだな。獣避けに焚き火は絶対だったからなあ。」
「もちろん、熊だの猪なんかは遭遇してたけど、サイレンサーで撃ってました。食ってないけど。」
「熊と猪は美味いのに。もったいない。」
「・・・俺、さばけませんよ。 なるべく逃亡させるために殺しませんでしたし。」
「まあ、目的が違うからな。」
「そうですねぇ。あんたみたいに食料は必要じゃなかった。たぶん、刹那はさばけますよ。あいつは、あんたと同じサバイバル生活でしたから。」
 とても血生臭い話だが、当人たちには普通の生活だったからおかしな話とは思っていない。どちらも顔を寄せて、こそこそと喋っているので傍目には、いちゃこらに見えるのがポイントだ。黒猫は、おやつを平らげると、寺夫夫の顔を眺めている。気付いて、ニールが猫の頭を撫でてやると、にゃおーんと鳴いて階段を下りていった。
「ちょっとクーラーにあたれ。」
「はいはい。」
 あまり長時間、炎天下に出しておくと女房が干からびるので、坊主が回収する。急ぐ用事もないので、女房も軽く昼寝をすることにした。