こらぼでほすと プラント4
翌日、車とバイクの受け渡しのために、アレハレとマリーは外出した。ハイネから鍵は預かったが、空港への送迎のために車だけは運んで来なければならないからだ。ラクスからの配達される衣装も車に積んであるから、それもマンションへ運び込む仕事もある。
「で、おまえは何してんの? 」
明日には出発のはずの寺の女房は台所で、パタパタと料理をしているので、ハイネが尋ねた。
「明日からの亭主の食事を準備してる。八戒さんが来てくれるらしいけど、チンできるものぐらいは準備しておこうと思ってさ。おまえさんも帰って来ればいいからな? ハイネ。二、三人前ずつぐらい用意してるから。」
「はいはい、帰れる時は、こっちに帰る。荷物は? 」
「用意した。・・・あ、タバコッッ。」
「はあ? 」
「三蔵さんのタバコだ。うーん、三カートン、いや五カートンは買っておくか。」
「三蔵さんが買いに行けばいいんじゃねぇーのか? 」
「なくなったら買出しはするだろうけど、ストックはしておかないと。・・・あとさ、庭の野菜の水遣りを頼んでもいいか? 毎日じゃなくていいから夜だけ。」
「はいはい、承りますよ。どうせ、俺らの口に入るもんだからな。他にはあるか? 」
「ビールはストックで足りると思うんだが・・・」
「それは八戒が管理すんだろ。そういうのは無問題だ。」
「なら、これといってはないな。悪いけど、適当に帰ってきて三蔵さんと食事してくれよ。」
「俺ら二人だと会話はないと思うんだが? 」
「それでも人が居るのと居ないのは違うから。」
「それは実体験からくるものか? ママニャン。」
「まあなあ。仕事の時は、一人がいいんだけどさ。オフに一人だと食べるのも面倒だし、ついついアルコールで誤魔化すもんなんだ。おまえさんたちみたいにスケジュールがあればいいんだけど、そういうのは個人商店にはなかったんでな。」
「そう心配しなくても八戒たちが来るし、アマギさんも暇なら顔を出してくれると思うぞ? 」
トントンと小気味良い音をさせてニールは何かを刻んでいる。当人が寂しがり屋だから、一人になる亭主が心配らしい。あの坊主に、そんなもんはいらないだろうとツッコミしたいところは我慢した。
「それならいいか。」
「それより、くれぐれも単独行動とかすんじゃねぇーぞ、ママニャン。迷子になったら、すぐに携帯で連絡するんだぞ? 」
「・・・・俺はガキじゃねぇーよ。」
「だから、注意してんだ。ガキなら楽なんだ。一人で戻ろうとかするなよ。そのほうがややこしいことになるんだからな。」
ハイネもわかっちゃいるが注意はする。単独行動なんてされたら、それこそ騒ぎになる。できるだけ穏便にプラントツアーは済ませていただきたい。なんせ、この寺の女房は、そういうことに関してはプロだからだ。迷子のフリで単独行動されるとシンやレイでは掴まえられない。なんせ、最高のナビシステムであるリジェネがくっついているからだ。情報を引き出しておけば、どこへでも行ける厄介な男だ。ついでに、ニール自身は、その最高のナビシステムが使えていることすら気付かない無頓着の極まっているところも厄介だ。
「俺はプラントは初めてだから、目的地はないよ。」
「行きたいところはシンかレイに言って連れて行かせろ。」
「わかってる。」
「おまえが行方不明になると、トダカさんが大使館を動かすからな。絶対に離れるなよ? あの人は本気だからな。ウヅミーズラブ一桁組の本気は洒落にならん。」
そう言われて、ニールも、ああ、と、納得する。ウヅミーズラブは数人だが、その下部組織は世界中に散らばっている。それらを召集されたりすると、とんでもないことになるのは理解できる。それに下手なことがバレるとカガリまで参戦してくるだろうから、とても厄介だ。ニールだって穏便に楽しい旅行をしたい。
「わかってるよ。だいたい、俺、見知らぬ場所でふらふらとかしないよ。」
「そうだ、それでいい。頼むから気をつけてくれ。・・・あと、土産とかいらないから。こっちにも同じものがあるからな。」
「いやまあ、なんか見つけたらな。なんか欲しいものかあったら調達してくるけど? 」
「これといってはないな。オリジナルなものは、こっちなんだから、あっちのものは欲しいとは思わない。プラントのものって基本、地球の各地域のものの模倣だからさ。合成したものが多いんだ。」
「ああ、そうなのか。酒とかも? 」
「おまえ・・・トダカさんの飲んでるものが最高級だって、わかってるか? あれ以上のものはない。」
「いや、うちの亭主にさ。なんかお土産を、と、考えてんだけど、ビールだと数が必要だから、なんかいい酒でも、と、思ったんだ。」
「それも、こっちのほうが美味いから却下。そういうことなら、レイに頼んでビールでも配送してもらえ。それなら、まあ、バドぐらいの味のはあるぞ。」
何かしら用意したいというなら、そこいらが妥当だろうとハイネが言う。ビールならメーカーによって味が違うから土産にはなるだろう。酒となると合成されたものがメインだから、さすがに味が落ちる。
「お菓子は? 」
「現地でレイとシンの関係者に教えてもらえばいいさ。今の流行ものっていうなら珍しいだろう。どうせ、あっちには、あいつらの同期がいるから顔は出すはずだ。」
「ああ、それなら、そうさせてもらおう。」
刻まれていたタマネギは、鍋の中に投入される。このクソ暑いのに、肉じゃがを製作している。そんなもの坊主が食うのか、ハイネは不思議だったが、まあ、八戒がアレンジするかどうにかしてくれるだろう。出来上がったら冷ますまでに買い物に出て、と、考えていたらニールも同じ事を言い出した。亭主のタバコを買出したいというので、ハイネが車を出すことにした。
翌日。午後までまったりと過ごしていたが、そろそろ時間だ。送迎には、アレハレたちがあたるというのでハイネは玄関で見送った。たかが二週間なので身軽なものだ。空港からオーヴへ飛行機で移動して、その後はシャトルで宇宙に上がる。シャトルに乗りさえすれば、十数時間でプラントに辿り着く。ちょうど夜の便なので、そのまま寝ていれば到着する。
このメンバーは、どこでも寝られるメンバーだから寝心地が、どうとかいうこともない。リジェネは寝たふりでヴェーダとリンクして一仕事するつもりだ。
「気をつけてね? ニール。」
「いってらっしゃい、ニールママ。」
空港まで送迎してくれたアレハレとマリーは、このまま遊びに行くつもりだ。
「そっちも無茶すんなよ? 楽しんでおいで、マリーさん。」
「ねーさんのことは任せてくれ。俺らで、フォローしておくからさ、アレハレ。」
「うん、頼んだよ、シン。僕らも、これからドライヴして遊びに行って来るよ。」
デパーチャーゲートで見送りを受けて搭乗口に向かうのが不思議な気分だ。ニールは、いつも見送る側で、こうやって搭乗口に入るのも滅多になかった。
「どうかしましたか? ママ。」
「いや、俺が出発を見送られるって不思議な感じでさ。いつもは見送る側だったろ? 」
「そうですね。オーヴの時は、みんな一緒で見送る人はいませんでした。」
「そういや、僕も見送られるって初めてかも? 」
「で、おまえは何してんの? 」
明日には出発のはずの寺の女房は台所で、パタパタと料理をしているので、ハイネが尋ねた。
「明日からの亭主の食事を準備してる。八戒さんが来てくれるらしいけど、チンできるものぐらいは準備しておこうと思ってさ。おまえさんも帰って来ればいいからな? ハイネ。二、三人前ずつぐらい用意してるから。」
「はいはい、帰れる時は、こっちに帰る。荷物は? 」
「用意した。・・・あ、タバコッッ。」
「はあ? 」
「三蔵さんのタバコだ。うーん、三カートン、いや五カートンは買っておくか。」
「三蔵さんが買いに行けばいいんじゃねぇーのか? 」
「なくなったら買出しはするだろうけど、ストックはしておかないと。・・・あとさ、庭の野菜の水遣りを頼んでもいいか? 毎日じゃなくていいから夜だけ。」
「はいはい、承りますよ。どうせ、俺らの口に入るもんだからな。他にはあるか? 」
「ビールはストックで足りると思うんだが・・・」
「それは八戒が管理すんだろ。そういうのは無問題だ。」
「なら、これといってはないな。悪いけど、適当に帰ってきて三蔵さんと食事してくれよ。」
「俺ら二人だと会話はないと思うんだが? 」
「それでも人が居るのと居ないのは違うから。」
「それは実体験からくるものか? ママニャン。」
「まあなあ。仕事の時は、一人がいいんだけどさ。オフに一人だと食べるのも面倒だし、ついついアルコールで誤魔化すもんなんだ。おまえさんたちみたいにスケジュールがあればいいんだけど、そういうのは個人商店にはなかったんでな。」
「そう心配しなくても八戒たちが来るし、アマギさんも暇なら顔を出してくれると思うぞ? 」
トントンと小気味良い音をさせてニールは何かを刻んでいる。当人が寂しがり屋だから、一人になる亭主が心配らしい。あの坊主に、そんなもんはいらないだろうとツッコミしたいところは我慢した。
「それならいいか。」
「それより、くれぐれも単独行動とかすんじゃねぇーぞ、ママニャン。迷子になったら、すぐに携帯で連絡するんだぞ? 」
「・・・・俺はガキじゃねぇーよ。」
「だから、注意してんだ。ガキなら楽なんだ。一人で戻ろうとかするなよ。そのほうがややこしいことになるんだからな。」
ハイネもわかっちゃいるが注意はする。単独行動なんてされたら、それこそ騒ぎになる。できるだけ穏便にプラントツアーは済ませていただきたい。なんせ、この寺の女房は、そういうことに関してはプロだからだ。迷子のフリで単独行動されるとシンやレイでは掴まえられない。なんせ、最高のナビシステムであるリジェネがくっついているからだ。情報を引き出しておけば、どこへでも行ける厄介な男だ。ついでに、ニール自身は、その最高のナビシステムが使えていることすら気付かない無頓着の極まっているところも厄介だ。
「俺はプラントは初めてだから、目的地はないよ。」
「行きたいところはシンかレイに言って連れて行かせろ。」
「わかってる。」
「おまえが行方不明になると、トダカさんが大使館を動かすからな。絶対に離れるなよ? あの人は本気だからな。ウヅミーズラブ一桁組の本気は洒落にならん。」
そう言われて、ニールも、ああ、と、納得する。ウヅミーズラブは数人だが、その下部組織は世界中に散らばっている。それらを召集されたりすると、とんでもないことになるのは理解できる。それに下手なことがバレるとカガリまで参戦してくるだろうから、とても厄介だ。ニールだって穏便に楽しい旅行をしたい。
「わかってるよ。だいたい、俺、見知らぬ場所でふらふらとかしないよ。」
「そうだ、それでいい。頼むから気をつけてくれ。・・・あと、土産とかいらないから。こっちにも同じものがあるからな。」
「いやまあ、なんか見つけたらな。なんか欲しいものかあったら調達してくるけど? 」
「これといってはないな。オリジナルなものは、こっちなんだから、あっちのものは欲しいとは思わない。プラントのものって基本、地球の各地域のものの模倣だからさ。合成したものが多いんだ。」
「ああ、そうなのか。酒とかも? 」
「おまえ・・・トダカさんの飲んでるものが最高級だって、わかってるか? あれ以上のものはない。」
「いや、うちの亭主にさ。なんかお土産を、と、考えてんだけど、ビールだと数が必要だから、なんかいい酒でも、と、思ったんだ。」
「それも、こっちのほうが美味いから却下。そういうことなら、レイに頼んでビールでも配送してもらえ。それなら、まあ、バドぐらいの味のはあるぞ。」
何かしら用意したいというなら、そこいらが妥当だろうとハイネが言う。ビールならメーカーによって味が違うから土産にはなるだろう。酒となると合成されたものがメインだから、さすがに味が落ちる。
「お菓子は? 」
「現地でレイとシンの関係者に教えてもらえばいいさ。今の流行ものっていうなら珍しいだろう。どうせ、あっちには、あいつらの同期がいるから顔は出すはずだ。」
「ああ、それなら、そうさせてもらおう。」
刻まれていたタマネギは、鍋の中に投入される。このクソ暑いのに、肉じゃがを製作している。そんなもの坊主が食うのか、ハイネは不思議だったが、まあ、八戒がアレンジするかどうにかしてくれるだろう。出来上がったら冷ますまでに買い物に出て、と、考えていたらニールも同じ事を言い出した。亭主のタバコを買出したいというので、ハイネが車を出すことにした。
翌日。午後までまったりと過ごしていたが、そろそろ時間だ。送迎には、アレハレたちがあたるというのでハイネは玄関で見送った。たかが二週間なので身軽なものだ。空港からオーヴへ飛行機で移動して、その後はシャトルで宇宙に上がる。シャトルに乗りさえすれば、十数時間でプラントに辿り着く。ちょうど夜の便なので、そのまま寝ていれば到着する。
このメンバーは、どこでも寝られるメンバーだから寝心地が、どうとかいうこともない。リジェネは寝たふりでヴェーダとリンクして一仕事するつもりだ。
「気をつけてね? ニール。」
「いってらっしゃい、ニールママ。」
空港まで送迎してくれたアレハレとマリーは、このまま遊びに行くつもりだ。
「そっちも無茶すんなよ? 楽しんでおいで、マリーさん。」
「ねーさんのことは任せてくれ。俺らで、フォローしておくからさ、アレハレ。」
「うん、頼んだよ、シン。僕らも、これからドライヴして遊びに行って来るよ。」
デパーチャーゲートで見送りを受けて搭乗口に向かうのが不思議な気分だ。ニールは、いつも見送る側で、こうやって搭乗口に入るのも滅多になかった。
「どうかしましたか? ママ。」
「いや、俺が出発を見送られるって不思議な感じでさ。いつもは見送る側だったろ? 」
「そうですね。オーヴの時は、みんな一緒で見送る人はいませんでした。」
「そういや、僕も見送られるって初めてかも? 」
作品名:こらぼでほすと プラント4 作家名:篠義