もしもの話
「なんで急にそんなこと言いに来たの?」
「言いに来たっつーか、
猿丸の彼女が妊娠したらしくて、
飲みん時、どうしたらいいって話になって…」
「えっ!?」
「それでいろいろ考えさせられたっつーか。」
「そ、そうだったんだ…
どうするんだろう?」
「さあ…まだ学生だしな。」
「もし大輝だったら?」
「結婚する。」
「!…即答だね。」
すずめは迷いのない大輝の言葉にビックリした。
「オマエが嫌じゃなければだけど。」
「嫌とか…えっと…もし妊娠しちゃったら、
ってことだよね?」
「まぁ、オレはまだ学生だから、
そうならないように気をつけるよ。
オマエのおじさんにも釘さされてるしな。」
そう言ってすずめの頬にキスをした。
「遅くに悪かったな。」
「ううん。ちゃんと考えてくれて嬉しいよ。」
「じゃあな。」
大輝が帰ろうとすると、
すずめは大輝の服の裾をひっぱり、
「えと…口にも…」
と少し俯いて言った。
「え…////」
すずめのリクエストに驚きを見せつつも、
大輝はすずめの唇に自分の唇を合わせた。
そして「またな。」と
今度は本当に帰っていった。
すずめは大輝を見送りながら、
「これはプロポーズ…ではないんだよね…?」
と火照った顔でつぶやいた。
自分の部屋に戻ったすずめは、
もしもの話だから、と自分に言い聞かせながらも、
そうなったら、と幸せな想像をして、
ヒャー!とかうわぁ!とか
時々奇声をあげ、ベッドの上で
ボカボカとクッションを叩いて、
すずめは変な病気じゃないだろうかと
諭吉に心配されたらしい。