無表情の内側
「じゃあ山野さん、また月曜に。」
そう言ってすずめと大輝は
築地へと向かって行った。
後ろから山野は見送った。
よく見ると、二人の無表情の中にも
お互いを思いやって、その微妙な変化を
ちゃんと感じ取ってるのがわかった。
「はぁ、なるほどなぁ。」
その月曜からすずめは、
山野から珍しい食べ物の差し入れをもらったり、
ご飯をおごってもらったりすることが増えた。
相変わらずすずめは無表情だが、
山野は、その僅かな変化をみつけることを
喜びに変えだしたという。
「あっ今喜んだでしょ?」
「あ、ちょっとムカついた?ね?」
山野のウザさがグレードアップして、
別の先輩が、「山野ぉ!いい加減にしろ!」
とまた怒っている。
大輝にため息混じりに
「職場変えれば?」と言われ、
「うーん。本気で考えようかな…」
と同じくため息をついたすずめだった。