こらぼでほすと プラント7
つまり、リジェネが何かしらレイの治療をやってくれるらしい。議長様はイノベイドについては、それほど詳しくないから、リジェネも人間だと思っている。
「彼が水先案内人なんだね? 」
「ええ、そうです。これも内緒ですよ? ギル。」
ついでに、リジェネが寝室でニールと一緒なので寝込みは襲えませんよ、と、付け足して笑った。リジェネがニールの専属抱き枕だから同じベッドで寝るというと、まいった、と、議長様も苦笑した。
撞球室で酒盛りしつつ遊んでいる面々は、バラバラに気楽にやっている。トダカもビリヤードには参加している。タリアは観戦しているので、ニールがそっと近付いた。
「タリアさん、ちょっといいですか? 」
声をかけたらタリアは頷く。ソファのとなりに座り、小声で、先日のことを尋ねた。ゴールデンウィークにレイは議長様と大喧嘩をして帰って来たことだ。よそよそしい態度ではないのだが、どこか家族らしくないので気になった。
「喧嘩? あらあら、レイも元気ね。」
「ちゃんと仲直りしたのか聞いてませんか? タリアさん。なんかレイがトゲトゲしい感じなんですけど。」
「あの二人は、以前から、あんなものよ。レイにとっては養父だし子供の頃に育てたといってもシッターさんがいたから。」
「そうなんですか。」
「むしろ、あんな風に言い返せるのはレイが自分で思ったことを吐き出しているからで、私としては嬉しいのよ。」
「えーっと、うちでは、ずっとあんな感じですが? 」
「こっちに居た時は、ギルに反論なんかしなかったの。命じられることが至上という態度だったから、今のほうが若者らしいと思います。ニールくんには言いたい放題なの? 」
「俺が説教されてますが? というか泣かれるし叱られるし感情豊かだと思いますね。」
「うふふふ・・・それは何より。子育てが上手なのね? ニールくん。」
「いえ、うちは小さいのが多かったもんで扱いに慣れてるんですよ。えーっと、俺の元所属とかは、ご存知ですか? タリアさん。」
「天上人の組織のマイスターってことぐらいは把握してるわよ。うちとキラくんたちが共同で天上人の組織に資材や技術の提供をしているから、そこいら辺りはね。まあ、無事に治療できてよかったわ。みんな、ヤキモキしてたから。」
「らしいですね。みんなに散々に叱られました。ラクスに、『絶対に死ぬな。』と命じられちゃって、びっくりでした。」
「そりゃそうでしょう。ラクス様とキラくんが必死になって治療法を探していたらしいもの。マリューから聞いてるわよ? ラクス様を泣かせる罪悪人なんだって? 」
たまにマリューと連絡はとっているから、『吉祥富貴』の近況らしいことも聞いている。唯一、歌姫様を素に戻して泣かせるのはニールだけだ。
「泣かせてますねぇ。俺、説教もしてるし拳骨もしてますよ。だって、あいつが、俺は自分のおかんだって言うんで。そういうことなら、そういうふうに接していいんだろうと思ってます。かなり仕事でストレス溜めてるから発散させてやれればいいと。・・・とは言っても一緒に料理したり散歩するぐらいですが。」
「それは一番なんじゃない? 普段出来ないことをやるのがストレス発散になるもの。」
「ピリピリになってるとパンを焼いてますよ? 小麦粉を捏ねるのに何かしらぶつけてるみたいです。それが、また美味しいパンになるんで笑えます。」
「それはいいかも。今度、私もやってみようかしら。」
「タリアさんもストレスフルってあります? 」
「あるわよー。会議とかミッション中のトラブルとか。ナチュラルでもコーディネーターでも人間関係なんて同じものよ。保守的なおじ様たちの相手は疲れるわ。」
「お疲れ様です。」
「ニールくんは、どうなの? 」
「うーん、体力がなかなか戻らないのがストレスかな。思うように動けないので、そういうのはイライラします。時間かかりますねぇ。小一時間のウォーキングで根を上げてますから。」
「それ、発散は? 」
「無心で料理してると忘れます。悟空が軽く五人前くらい食べるし、おやつだと年少組も食べに来るんで十人前とか製作するんで、イライラしてられないんです。カレーなんかだとジャガイモが一キロとか剥きますから。」
「はい? 一キロ? つまりニンジンやタマネギも? 」
「はい。大概は誰かが手伝ってくれるから、まあ一人ではないですよ? あとは読書したり買い物ぐらいかな。毎日、バタバタしてるんで。」
「ほぼほぼ主夫の発想ね? 」
「主夫がメインですから。あはははははは。・・・そういえば、よっぽどの時は亭主に境内で体術の稽古をつけてもらってます。凹凹にされて、すっきり? 」
「ご亭主、強いんですってね? 肉弾戦なら負けなし。」
「らしいですね。俺は、実戦は拝んでないけど、コーディネーターとやっても転がしてます。喧嘩殺法だから、軍人には間合いが掴めないってハイネが言ってました。」
「怪我とかしないの? 」
「俺とやる時は、相当に手加減してくれてます。俺が怪我すると世話係がいなくなるでしょ? 」
あははは・・・とニールが笑っていると、リジェネが飲み物を届けてくれた。
「ママ、眠くない? 」
「ああ、まだ大丈夫。」
「眠くなったら言ってよ? 」
「わかってるよ。まだ大丈夫だから遊んで来い。」
「なあ、ママ。カップラーメン食いたい。」
「うーん、あるかなあ。なかったら適当に頼んでみる。他は? トダカさん、アテは足りてますか? 」
「アテはあるけど酒がない。アルコール度数高めのものを頼んでくれないか? 」
「ねーさん、俺、果物食いたい。最悪、缶詰のパイナップルでも可。グラディスさんは? 」
「そうねぇ、シャンパンが飲みたいかしら。トダカさん、何か作っていただけませんか? 」
「いいよ。じゃあ、それは私が注文したほうがいいな。」
「あたしも果物、希望っっ。」
内線でスタッフに、まずニールが連絡する。それから入れ替わってトダカが酒を注文した。さすが、議長様宅ではカップめんも常備している。あんだけ食って、まだ入るのか? と、シンはツッコミしているが、悟空のいつもの量よりは少なかったので納得はしている。よそさまのお屋敷だから、悟空も遠慮していたらしい。ルナマリアは悟空がカップめんを二つ目に突入して唖然としたものの、やっぱ私もーと一緒に食べていたりする。
作品名:こらぼでほすと プラント7 作家名:篠義