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こらぼでほすと プラント8

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撞球室で二次会が開催されている最中に、レイと議長様は戻って来た。トダカが、用意してもらったカクテルの材料と器具でタリアに軽いカクテルを作ったり、悟空がフライドチキンにかぶりついたりという賑やかなことになっている。ニールとリジェネがローテーションというビリヤードのゲームをやっている。そこへレイはニールの背後から抱きついた。
「おかえり、お話は終わったのか? 」
「終わりました。ママ、俺も参加していいですか? 」
「ああ、じゃあ代わろうか? 」
「いえ、ママの次に打ちます。ローテーションですね? リジェネ、入ってもいいか? 」
「オッケー。なら、最初のブレイクからやりなおそう。僕、負けてるから、そのほうがいい。」
 リジェネはできるが、それほど上手くはない。ニールのほうは最近はやってなかったが、昔は得意だったので一方的な勝負になっていたのだ。バラバラと台に散らばっていたボールを手にしてリジェネが場を崩した。
「お腹空いてないか? いろいろと用意してもらったぞ。」
「ママは召し上がりましたか? 」
「飲むぐらいだ。もう入らない。・・・あ、酒もあるぞ。トダカさんが付き合って欲しいってさ。」
「了解です。眠くないですか? 」
「まだ大丈夫。先に喉を潤しておこう。」
「はい。」
 食事が用意されている応接セットのほうに引き返してくるのを見て、議長は嬉しそうに笑う。レイにとってニールは本気で守りたいものであるのだ。
「ようやく、母親役を卒業ね。」
「感謝する、タリア。」
「いいえ、あんな顔、私たちには見せてくれなかったわ。本当に親子みたい。」
「親子になったんだそーだ。レイのことを「うちの子」ってニールくんは言ってくれるんだそうで、そうですよね? トダカさん。」
「ええ、『吉祥富貴』の年少組にはママとして定着してますよ、ギルさん。何か作りましょうか? 」
「それなら、トダカさんから頂いたお酒を。あれは独特で美味しい。こちらにはコピーもありません。極東のものですか。」
「極東の大陸のものです。うちの娘さんの亭主の上司さんが送ってくれるんです。私も、あそこまで美味しいのは知りませんでした。昔ながらの製法らしいですよ。」
 今は、ほとんどが機械で作るものだ。それを手作りで作っているとなると稀少だし極東の大陸なんてことになると議長様も伝手がない。素晴らしい、と、グラスと酒を用意する。ソファに座り、その酒を口にする。独特の匂いと味がするアルコール度数の高いものだが、喉を焼くというような過激なものではない。それを腹に流して、ほっと議長も息を吐く。視線でタリアにも席を外してもらった。タリアがレイたちのほうへ移動してから小声でトダカも口にした。
「話はできましたか? ギルさん。」
「ええ、私も詳しいことは教えてもらえませんでしたが、何やら秘策があるそうです。主に天上人の技術だそうですが。」
 議長はレイの帰国をトダカからも促して欲しいと個人的な話として頼んだ。だが、トダカのほうは断った。おそらくレイは帰らないでしょう、と言ったのだ。
「なるほど、天上人の技術ですか。・・・失念していました。それでは私も知らないふりで特区へ帰ることにしましょう。この後、レイは居残りますしリジェネくんは組織へ帰るので別行動です。」
 レイのことはトダカも聞いている。ただレイの気持ちとしては最後まで特区に居座るだろうとは考えていた。何か延命の秘策があるなら、それで十分だ。リジェネはヴェーダ本体だ。何かしら用意できるものがあるのだろう。
「そうしてください。レイはママと離れたくないのだそうです。・・・なんて嬉しい誤算でしょう。私は、そう宣言したレイを誇らしいと思いました。ですから、ここからはレイの好きにさせます。トダカさん、よろしくお願いいたします。」
「承りました。その代わり、シンはいずれザフトへ復帰させますから、そちらはお願いいたします。なるべくキラ様と同等の力を維持できるように差配してやってください。」
「そうですね。キラくんとやりあえるのはシンだけです。同等の機体、同等の経験を踏ませておきます。・・・あなたも、こちらに移住されてはいかがですか? 」
「はははは・・・残念ですが、私はオーヴとの縁がありますし、うちの娘も亭主が動かなければ動けません。そちらは諦めてください。」
「レイのママさんとの結婚を画策しようと計画していたのですか、レイに叱られました。私がトダカさんの娘さんの邪魔をしたら、私を叩きのめすと脅されましたよ。はははははは・・・・レイに、そんな啖呵を切られるとは思わなくて、思わず嬉しくて笑ってしまった。」
「そうですね。たぶん、キラ様、ラクス様、カガリ様も参加されるでしょう。みなさんにとっても、うちの娘が居る場所が絶対的な避難場所です。ああ、忘れてました。私も参加しますよ? ギルさん。あの子は手元に置かないと、心配で。」
「トダカさんが親バカになったとタリアから聞きましたが、本当にそうなんですね? 」
「本当です。今回限りとはいえ、外交官特権まで用意したのは、娘の不測の事態に対応するためです。なんせ、なんでもできる娘なんでシンたちだけでは心許なくて。」
 元スナイパーで元テロリストなんていうのは、大概の事態に対応が利く。本人が何かしら行動を始めたら、シンたちだけでは対応が難しいので、オーヴの大使館と話はつけた。
「国際問題になさるつもりですか? ひどいなあ。」
「それぐらいのプレッシャーがないと、あなたは無茶されるでしょう? うちの娘は騙されてしまうかもしれない。以前、アスランを取り込んだ時のように。」
「くくくく・・・アスランは若くて経験が乏しかった。キラくんに後でボコボコにされました。」
 超法規的権限を与えるからプラントで働け、と、アスランは勧誘されてザフトに戻った。ただ、単独行動ではないから、議長の考えるように動くしかなかった。そこいらのことをトダカは指摘している。夢多き若者なら、うっかり乗せられてしまう上手い手だとトダカも思っている。
「うちの娘にはききません。地位や権限なんかに興味がない。」
「そのようですね。」
「ひとつだけ可能なのはね、ギルさん。ニールの亭主に、『一緒にプラントで暮らす。決定だ。』 と、言わせることです。亭主が命じれば、ニールは動くでしょう。」
「トダカさん、それこそ使えない。レイから聞きましたよ? ご亭主は極東の大陸に本拠地がある宗教家で、こちらには僧院がない。そのご亭主を口説くのは不可能だ。」
「まあ、そういうことです。是と答えさせるには口八丁手八丁のあなたでも困難でしょう。ただ可能性はありますよ? 」
「それ、私が殺されるんじゃありませんか? 」
「機嫌によりますね。あははははは。」
 機嫌が悪かったら、即座にマグナムが火を噴く。良かったとしても凹凹にはされるだろう。それを想像してトダカは大笑いした。




 翌朝、いつも通りに起き出して台所へ顔を出したら、スタッフが段取りはしてくれていた。食材は、すでに大使館から届いていて、タマゴも三パックもある。ついでにレイ、シン、ルナマリア、悟空、リジェネも揃っている。
「タマゴ一杯あるぜ? でも納豆はないんだってさ。」