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オダワラアキ
オダワラアキ
novelistID. 53970
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あなたの優しさに包まれて 前編

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るなかの流星【あなたの優しさに包まれて】
すずめ、大輝25歳
幸せな結婚生活を送る2人だったが、すずめにはある悩みがあって…。
すずめかなり落ちます…。でもラブありです。最後には幸せにしてみせます(笑)
結婚後なので、文章の中の2人の表現を大輝、すずめにしています。
前編後編予定で、少しばかり長くなります。





2人が結婚を決めたのは、大輝が仕事を始めて1年目の頃だった。
すずめは、すでにバイトからの年月を合わせれば、水族館での仕事は5年目に入る。
大輝とのことも、仕事も何もかも順調に、毎日平穏に過ごしてはいるが、すずめはここのところ少し不安に思うことがある。

まだ、25歳。まだ大丈夫のはず。
周りからもまだ若いんだから…そう言われるほどに、誰にも言えなくなった。


「…め、すずめちゃん!」
すずめは物思いに耽っていて、呼ばれたことに全く気がつかなかったらしい。
「ご、ごめん!なに?」
「ぼうっとしてたからさ、どうしたのかと思って…」
亀吉と鶴谷が心配そうにすずめを見た。
「あはは…ごめん、ごめん、眠かったのかも」
「あんた…人が話してるときに寝るんじゃないわよ…」
ジロリとゆゆかに睨まれるのもいつものことで。
今日は、いつもの高校メンバーで久しぶりの近況報告をしながらのランチだった。
「あ、でも、うちの子もすっごい寝汚いんだよねぇ〜」
「朝とか起こすの大変よね〜」
ゆゆかと鶴谷は結婚後、子どもを1人授かり、2人とも大変だと会うたびに愚痴をこぼすわりには、とても楽しそうに子どものことを話す。
亀吉は結婚こそしていなかったが、彼氏と一緒に暮らしていて、結婚秒読み段階だ。
「すずめちゃんは?まだ子ども欲しくないの?」
亀吉が話を振ってくると、すずめは何とか強張る顔を笑顔に変えて応えた。
「うーん、まぁ自然に任せます…かな。そんなに焦ってもいないし…」


すずめが、何となくの違和感を感じ始めたのは、結婚後1年を過ぎた頃だった。
自分の両親からも冗談めかして孫はまだなのと言われることも多くなり、親戚からも法事や年始の挨拶などで会うと必ずその話題になった。
大輝とは、多分周りに言えば多いねと言われるぐらいのSEXの回数をしていて、そもそも付き合っている頃から特にきちんとした避妊をしていなかった。
子どもも積極的に作ろうというよりは、そのうち自然に出来たらいいね、ぐらいの考えだったと思う。

そんな時、何気なしにテレビで女優が不妊治療をしていることを告白していたことを思い出す。
結婚後2年、普通の性生活を送っていて妊娠に至らないことを不妊と言うのだと。
基礎体温…排卵日、すずめの頭に残っていたワードをネットで検索すると、妊娠についての色々なことを知ることが出来たので、その頃から、基礎体温をつけ始め、基礎体温表にSEXをした日は◯を付けてみた。
排卵日は基礎体温が0.3度以上上がった日の前後らしいので、グラフにしてみるとかなり分かりやすく、排卵日あたりにも性行為を持っていることが分かる。

(こんなに妊娠ってしないものなの?)


仕事が深夜にまで及ぶことも珍しくなく、毎日疲れて帰ってくる大輝にそのことをどうしても言えないでいた。
もちろん夫婦の問題である以上は話をした方がいいとは思っているが、何よりも大輝にとっての妊娠の重要度が分からなかった。
そんなことで悩んでいるのかと思われるのが怖かった。


すずめの仕事は、土日や祝日に休みを取れることがほとんどなく、土曜日の遅番から帰ってきて、日曜日は早番というサイクルが体力的にはかなり厳しい。
そういうシフトの時は、大輝が朝ご飯を作ってくれることも珍しくない。
「すずめ、ほらそろそろ起きろ。遅刻するぞ」
「う…ん…」
モゾモゾと動き、ベッドサイドから基礎体温計を取り出すと口に咥えた。
「おまえ、熱でもあんの?大丈夫か?」
「んーん」
心配そうにすずめの額に手を当ててくる大輝に、首を振って否定する。
ピーピーと体温計測終了のアラームが鳴り、体温が高温期から低温期へ移行しているのを確認し、すずめはため息をつく。

(あ〜あ、今日か明日生理くるな…)

「おはよ」
「ああ、おはよ…大丈夫か?具合悪いんじゃないのか?」
「ううん、眠いだけ〜大丈夫だよ。支度しなきゃ」
すずめは気持ちを切り替えて、顔を洗い着替えを済ませると、大輝の作ってくれた朝ご飯を食べた。
美味しそうとはしゃぎながらご飯を食べるすずめに、大輝は軽く吐息をつく。
「なぁ、おまえ最近おかしいぞ?なんか悩んでるだろ」
「え…な、悩んでない…よ?」
「昔も言ったけど…俺はそんなに頼りにならない?おまえの悩み受け止めるぐらいのこと出来るつもりだけど?」
「……」
「言いたくなかったらそれでもいい。けど、1人で解決しようとすんなよ?ほら、遅刻するから早く食え」
「大輝…あり、がと…今日帰ったら話すね」
頭をくしゃりと撫でられ、時計を見るとゆっくり食べていられない時間になっていた。
「大輝片付けごめん!行ってきます!」



大輝に話すと言ったものの、この漠然とした不安をどう話していいのか分からなかった。
もしかしたら、まだ焦ることないじゃないかと言われるかもしれない。
そもそも大輝から子どもが欲しいと聞いたことはない。
自分1人だけが空回っているかもしれない。
そんなことを考えながらの仕事はうまくいくはずもなく、いつもはしないようなミスばかりで、後輩にまでどうしたのかと心配される有様だった。

それでも何とか仕事を終えると、家に帰る足取りは重くゆっくりゆっくり歩くが、それでも16時を過ぎた頃には家に着いた。

「ただいま…」
「おかえり。飯出来てるぞ」
「うん、ありがと。手洗ってくるね」
基本的に土日、祝日仕事のない大輝は、休みの日はほとんどの家事をしてくれる。
大輝の仕事が朝早く夜遅いため、普段家事を手伝えないことを申し訳なく思っているらしいが、むしろそこまで残業の多くないすずめからしてみれば、たまの休みくらいゆっくりしてほしいと思う。

まだ夕食には早い時間だったが、普段2人きりでゆっくり夕食を食べられることなどなかなかない。
そういう日ぐらい、早めに軽く飲みながら食べようと夕食を温めた。
記念日でもないのに開けたシャンパンで乾杯を済ませる。
「ふーん、これなかなか美味いな」
「ね、安かったのにね!今度からうちの常備酒はこれにしよっかな」
「おまえそんなに強くないんだから、甘くても飲みすぎんなよ?」
「わかってますよーだ、あ〜大輝の作った鯖の味噌煮美味しい〜」
「そりゃどうも」
すずめも、高校を卒業してから現在の就職先である水族館に正社員として働くことになるまでは、アルバイトとしての勤務だったため、他に空いた時間は諭吉の店で手伝いをしていた。
そこで、諭吉に料理を習いレシピ通りに面倒くさがらずに作れば、すずめでもなんとかなるというレベルまで上げてもらったのだが、何故か諭吉に料理を習ったはずのすずめよりも大輝の方が料理上手だ。