雨
夜 俺はいつものように結野アナの天気予報を見る
「―――ということで梅雨前線がきていまーす。明日からは本格的に降り始めるでしょう。江戸もついに梅雨入りです。傘は毎日持ち歩いた方が良いかもしれませんね。ではこれで天気予報を終わります」
「結野アナの天気予報でした。では次のニュースです。昨日大江戸銀行に―――――」
梅雨入り…
今年もこの時期が来たか
雨は嫌いだ
色々なこと思い出しちまうから悪夢を見たり寝苦しかったりで体調も悪くなる
"明日から雨"
なんて考えただけで早くも頭痛がするぜ……
『そうだ……梅雨ならそろそろアイツが………』
ズキンッ―――
『いっ!!!……っってぇ…――クソッ……』
生臭いにおい
敵味方の呻き声
救えなかった仲間
守れなかった……先生
『やば………吐きそう………』
クラッとした瞬間 もうろうとしてる意識の中でも"倒れる"と自覚をしたが体に力が入るわけもない
倒れる衝撃を感じる前に銀時は気を失った―――――
―――――――……
空は絵に描くような曇天
すぐにでも雨が降り出しそうだ
俺は今力無く刀を握り立ち尽くしている
ただ真っ直ぐ前を見つめて…
さっきまで命のやりとりをしていたとは思えないほどの静けさ
多分…天人の野郎たちは今日はもう攻めてこないだろう
かなりの犠牲がでたからな
もちろん――…俺達の仲間も……
『……ッ』
今日はさすがに暴れすぎたみたいだ
日頃の睡眠不足もあるがクラクラしてきた
―――しばらくは何も考えたくない
「……き」
「ぎ……と……」
「銀時」
なんだ…?
何か聞こえ……
「銀時…!!!」
『…ッ!?』
「しっかりせぇ銀時…!!おまんいつまでこんな所に居るつもりじゃ!!!」
あぁ……辰馬が呼んでたのか…
辰馬は俺の両肩に手を置いて俺を揺らしてる
すっげー顔してるぜ辰馬
『…ちょっと疲れただけだ。今戻る』
「何を言ってるんじゃ銀時!!おまんさっきの戦が終わって何時間たったと思ってるんじゃ!?何時間こんな場所に居たんじゃ!!!」
辰馬お前…何で泣きそうな顔してんだ…?
『あ…もうそんなに時間たったか…?そうか――』
「銀時……」
もっとひどい顔になりやがった
『…何でお前泣きそうな顔してんだよ』
「……が……か…い……ら……じゃ…」
『何言って――――』
「おまんが泣かないからじゃ…!!!」
泣き叫ぶような声と同時に俺は辰馬に抱きしめられた
すっげぇ力で―――
でもな
辰馬に抱きしめられたら…強がれねぇんだ
「一人で全部抱え込むな…わしらが居るぜよ…」
ほらな?
こいつはいつもそうだ……
『……今日も…沢山失っちまった…』
ああ―――…自然に言葉が出る
『俺は無力だ……アイツらを…仲間を守りたいのに』
自分に腹が立つ
『俺は…仲間を守るために戦ってるのに……』
悔しい
『そのうち……高杉やヅラ………辰馬まで失っちまいそうで…』
悲しい
『……怖い』
ギュッと抱きしめられてたのに急に離されて俺の顔を真っ直ぐ見てきた
「わしらは居なくなったりしないぜよ。」
え――…?
今…何て…
「おまんは一人じゃないきに……おまんがわし達を守るのと同じでわしらもおまんを守る。―――何よりわしが銀時を守るぜよ」
一人じゃ……ない…?
俺を守る…?
「その悲しさも…悔しさも……一人で抱えちゃいかんぜよ…。泣きたいときは泣くんじゃ銀時…」
今度は優しく抱きしめられてた
温けぇなぁ……
すげぇ安心する―――
『……ッ………く……ッ…』
気がついたら涙がでていた
もう暫く出てなかった涙が…
「わしは此処に居るぜよ…――」
『…つまぁ……辰馬ぁ……』
子供みたいに泣きじゃくる俺を辰馬は相変わらず優しく抱きしめてくれている
ザァァァァァァァ―――――…
とうとう雨が降り出した
まるで……今の俺を表すかのように…――