雨
―――――――………
ピトッ…
額に冷たい感触がした
『…ん………』
さっきのは……夢――…?
視界はぼやけてるけど次第に目がなれてきた
誰かが…居る…?
そいつに触れたくて手を伸ばしてみた
そしたら案の定俺の手を握ってくれた
「起きたがか…?」
心配そうな声
この手の温もり
あぁ……やっぱり来てくれたのか―――
『た……っ…ま……?』
どこか安心する俺
「そうじゃ…わしじゃ銀時。ちくと来るのが遅れた…わるかったのう…」
辰馬の話によると 俺が倒れる寸前に辰馬が抱きとめてくれたらしい
そのまま俺は気絶しちまったから布団に寝かせて看病してくれたみたいだ
額に感じた冷たい感触は辰馬が絞ってくれたタオル
俺すげぇ迷惑かけたな…
なのに何で辰馬が謝るんだ?
謝らなきゃならねぇのは俺の方なのに…
『今年も来てくれたから…大丈夫。迷惑かけてごめんな』
「謝らなくていいきに―――。うなされてたようじゃがもう大丈夫か?」
『ん…。――…昔の夢を見た………。でも少し頭が痛いだけだ。タオルが気持ちいいからそのうち治ると思う。ありがとうな辰馬』
「……」
心配そうな顔のままだけど少し笑って手をギュッて握り返してくれた
なんだろ…辰馬が居るだけで落ち着く
前からそうだ
この時期は嫌いなくせに―――。少しだけ…ほんの少しだけ楽しみにしてる自分が居る
この気持ちは…―――なんだ?
『なぁ辰馬……』
「…?なんじゃ?」
俺はギュッと握られた手をさらに強く握った
辰馬がどこにも行かないように……強く
『今年も…この季節が終わったら行っちまうのか…?』
「ん?……ん……」
行かないでほしい…
『……てよ』
「…?」
『ずっとココに居てよ…辰馬…』
「ぎん……と……?」
辰馬の奴びっくりしてらぁ…
まともに俺の名前言えてねぇの…
でも居てほしいんだ
『なんか…辰馬が居ると落ち着く。この季節だけじゃなくて…ずっと辰馬に居てほしいって思う…』
「それは、どういう…」
『俺にもわかんねぇ…。けど―――離れたくないって思った』
「そうか…―――。そうじゃなぁー…」
真剣な顔で悩んでる
こういう顔……なんか…ヤバイ
「……守っちゅう」
『え?』
「わしが銀時を守っちゅう」
『え?え…?』
その言葉―――
「わしが昔銀時に言った言葉じゃ。おまんは覚えてないかもしれんがのう」
『覚えてる…――。しかもさっき夢の中でも言ってたぜそれ』
「お?そうかそうか。んー…。おんしを守ると約束したきに―――。それに銀時と離れるのは寂しいと毎年思ってたぜよ」
『……本当か…!?』
「わしゃ嘘はつかんぞ?…わしから言うつもりだったのに先に言われてしまったぜよ―――アハハ…」
少し困ったように笑ってる辰馬
ずっと居てくれる
そう考えただけで嬉しくなる
『ありがとうな辰馬』
この先辰馬と居れば―――
「気にすることないぜよ。わしが決めた事だからのう」
この気持ちが何なのかそのうち気づけると思う
「もう起きれるか?何か食べなきゃいかんぜよ」
気づいたら何かが変わるかもしれないけど―――
『あぁ――…。少し食べる』
それでも俺は握ったこの手を離さないと思う
「じゃあわしが作るきに!!」
何度も俺を救ってくれた
『まじでか…!そりゃ楽しみだな』
コイツの温かくて でっかい手を―――――
コイツを失わないように
しっかりと掴んでおこう
END