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逢いたさ故に

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ベベン…―――ベン…―ベン…―



川の上にある一層の屋形船



窓から身を乗り出し三味線を弾いてる男が居る




「晋助。そんなに身を乗り出していたら幕府の犬に見つかるでござるよ」



ベン…――ベベン…―


仲間の言葉を聞いてか聞かずか三味線の音色を止めようとはしない



「晋助…聞いてるでござるか?」



少し苛立った気配を見せ手を止める



『あぁ…聞いてる』


「ならもう少し中で弾いてはく『少し黙れ万斉。――もうすぐ花火があがるんだよ』」



高杉の苛立った殺気に一瞬怯んだが"花火"という言葉に反応した




ヒュ-----------  バンバンバン

ヒュ-----------バンッバン




『始まったか――。綺麗なもんだ』



しばらく花火をみた後三味線を置き立ち上がり腰に刀を下げ歩き出す



「ちょっ……待て晋助!」



とっさに腕を掴み高杉を止めるが



『俺の邪魔をするな万斉。――離せ』



高杉の口から冷たい言葉が言い放たれた


だがその言葉を受けても尚止めようとする





「ッ―――。だがしかし危険すぎる!」



『俺に同じことを二度も言わせるな万斉』





ゾクッ――…


冷たい汗が万斉の背中をつたった



"もう一度言ったら殺す"と言わんばかりの目で万斉を睨み腕を放させる高杉



腕が解放されたのを確認してから船を岸辺につけさせ船から下りた





部屋に一人残された万斉は畳に座り込んでいた



(晋助…お主が好きなのは花火でなく白夜叉であろう…。今月に入りもういくつの祭りに行ってると思っているのだ。)

「――白夜叉に逢うまで止まらぬ……か…。奴は我々の敵だというのに。…一体白夜叉とは何者なのだ」




そんな万斉のことなど気にもかけていない高杉は祭りの人混みへと消えていった




作品名:逢いたさ故に 作家名:棗-なつめ-