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我慢のしどころ

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むにっ。

「……。」

これは…ヤバイかもしれない。


ー放課後ー

「オイ、蓬莱軒の中華まん
 食って帰らねえ?」

馬村に誘われ、すずめの目はキラン、と光る。

が、すぐに、

「やっ、やっぱりやめとく!」

と、断った。

「は?具合でも悪ぃのかよ。」

「ちっ違うよ!そ、そう!
 ゆゆかちゃんと帰るから!」

「そうかよ。」

「じゃあ馬村、またね!
 ゆゆかちゃん、帰ろ!」

「えっ、ちょっ!何よ!」

すずめはゆゆかの腕を引っ張り、
慌てるように帰っていった。


「なんだ?アイツ…」

食べ物ぶら下げてノッてこないことなんて
今までなかったのに…

残された馬村は、
ちょっと面白くないと思っていたが、
仕方なく一人で帰った。


その頃、先に帰ったすずめとゆゆか。

「はぁ?太ったぁ?」

「ゆっ、ゆゆかちゃん!
 シーッ!シーーーーッ!」

すずめは周りをキョロキョロ見ながら
ゆゆかの口を塞いだ。

「モガッ、ちょっ、苦しっ!」

「あ、ごめん…」

「馬村と放課後、美味しいものばかり
 食べに行ってたら、
 お腹に肉がついてきて…」

「そりゃ、あんだけ食べてればね。」

「おじさんのご飯も美味しいし…」

「それはすごくよくわかる。」

ゆゆかがウンウン頷いた。


「どうしよう!ゆゆかちゃん!
 馬村と美味しいもの食べるのは嬉しいけど
 このままじゃよくないよね?」

「ま、その肉のままだと馬村くんに
 愛想つかされるのも時間の問題ね。」

サーッとすずめの顔が青くなって
固まっている。

あー面白い。

ゆゆかはそんなすずめの様子を面白がっていた。

「それにしてもアンタが
 そんなことを気にするように
 なるなんてね~。」

「要するに、食べる量より、
 動く量が上回ってたらいいんでしょ?
 アンタ、運動得意じゃない。
 運動デートとかしたらどうなのよ。
 私はイヤだけど。」

「馬村、汗かくのイヤって…」

まぁ自分もそうだから人のことは言えない、
と、ゆゆかは密かに思っていた。

「ふーん、走るのは速いのにね。」

「じゃあ、人知れず運動するしかないわね。」


「や、やっぱり?」

「私走るよ!」


「走るの好きね。
 学校来る前に走るんだったら、
 ちゃんとシャワー浴びて来なさいよ?
 クッサイんだから!」

「わかった!甘いのも我慢する!」

「食べ物制限はアンタには
 無理と思うけど…」

「間食だけ!」

「…」

ゆゆかは心の中で密かに
これは長くないな、と思った。

作品名:我慢のしどころ 作家名:りんりん