我慢のしどころ
「…は?」
予想外の答えすぎて、
馬村はしばらくア然とした。
「オマエはそういうこと
気にするほうじゃないと
思ってたけど?」
「前は気にならなかったんだけど…」
「けど?」
「馬村は気になるよね?」
「は?オレ?!」
「水着着て、お腹ブヨブヨだったら
やっぱり嫌だよね?」
「水着って///もう秋だぞ?」
「そうだけど!来年着てそうだったら
好きじゃなくなるんじゃん?」
「そんなわけねえだろ。」
「だから必死で走って元に戻そうと…」
「…走ってたのはそういうことかよ。」
ふう、と馬村は大きなため息をついた。
そして冷蔵庫を開け、ケーキを取り出し、
「おじさんの言ってたケーキってこれ?」
と尋ねた。
「うん、そうだけど…」
「フォークどこ?」
「え…ここに…って馬村食べるの?」
「ほら。」
馬村がフォークでケーキを切り取り、
すずめの口に向かって差し出した。
「ダメって!!」
「いいから、食え。」
「~~~っ。」
パク。
馬村から差し出されたケーキを
すずめは仕方なく一口食べてみる。
本当は食べたかったのだ。
「お、美味しい!」
すずめの顔に、いつもの笑顔が戻った。
「美味しいよ!コレ!
ほら、馬村も食べてみて?」
そう言ってすずめは、ケーキを一口分切って
馬村の方に差し出した。
「っ!///」
馬村は一瞬躊躇ったが、パク、と食べて、
「うめえ。」
と言った。
「だよね!」
ビヨンビヨン、とすずめが嬉しそうに跳ね、
「さすがおじさん!」と笑った。
「だな。」
と言って馬村も笑った。
「あ、馬村笑った。」
「なんだよ。」
「や、馬村が笑うと嬉しいなって。」
「オレだって好きなもん食って
ビョンビョン跳ねて笑ってる
オマエのほうがいいわ。」
「え…//、あ……」
「だからもういいんじゃん?」
「何が?」
「一人で走って帰るより、
一緒にうまいもん食って
帰るほうがよくね?って。」
「ふ、そうだね。」
馬村はそっとすずめにキスをした。
「////っ」
「オマエが一緒じゃねえと
オレがつまんねえしな。」
「馬村、それが本音だね?」
「さあな。」
残ったケーキは結局半分こして
最後まで食べた。