我慢のしどころ
「あれ?馬村くん。」
諭吉がカフェに向かっていると、
馬村に出くわした。
「あ、こんにちは。」
「うちに来る用事?」
「はぁ、ここんとこ様子がおかしいので
どうしてるかと思って…」
「馬村くんもそう思うの?
実はさっきもケーキあるよって言うのに
食欲ないって食べなかったんだ。」
「え?病気ッスか?」
「うーん、元気そうに見えるけど。」
「ちょっと家まで行って
様子見てきていいですか?」
「変な気起こさない?」
「えっ、しないっス。」
「じゃあ、信用して任せるよ?」
諭吉にそう言われて
とりあえず馬村はすずめの家に向かった。
ピンポーン。
押しても応答がない。
寝てんのか?
ドアノブをガチャりと回してみる。
「戸締まりしてねえのかよ。」
「オイ?いんのか?」
呼んでみたけど返事がない。
まさか具合悪くて倒れてるとか??
「チッ」
馬村は小さく舌打ちをして、
「入るぞ!」と一応宣言をして
家の中に入った。
すぐにダイニングで、
そこを通ってすずめの部屋に行こうとしたら、
冷蔵庫の前で神妙な顔をしたすずめが
ジーッとすわっていた。
「うわぁっ!」
「わっ!馬村?!なんでいんの?」
「ピンポン押しても返事ねえし、
倒れてんのかと思って…」
「えっ、あっ、ごめん。
気づかなかった。」
戸締まりもしないで、
チャイム鳴らしても声を出しても
気づかないなんて危険すぎる。
「何やってたんだよ。危ねえだろ?」
「うん…」
そうすずめが返事したとこで、
ぐーぎゅるるるるる、と大きな音がした。
「何、腹減ってんの?」
「ちがっ!今のは違うの!」
カァァァァッとすずめの顔が赤くなった。
「さっきオマエのおじさんに会って、
食欲ないって聞いたぞ?」
「…ある。」
「じゃあ、何か食えば?」
「ダメなんだって!」
「は?わかるように説明しろよ。」
「う……お肉が…」
「肉?肉なら食えんの?」
「ちがーう!お腹に肉が
ついちゃったんだってば!」