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こらぼでほすと プラント13

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翌日、寺の女房は通常通りに起きて、洗濯機を回し、朝ごはんの準備もした。沙・猪家夫夫は前夜に帰ったので、総勢六名なので、さくさくと簡単なメニューが作られていく。坊主は、食卓に座って新聞を読みながら、会話を楽しんでいる。
「レイは、キラたちがプラントに移るまでは、こちらで暮らすことになりました。・・・今まで通りってことで。」
「おう。」
「あっちに居たレイは、感情の乏しい子供だったらしくて、ギルさんもタリアさんも驚いてましたよ。・・・・愛情って大切なもんなんですねぇ。」
 議長様は、しみじみと、そのことを話した。子供を養育するというのは、知識を蓄えさせて肉体を成長させるたけではなかったのだと後悔したらしい。私邸で、レイと会話して、そう思ったのだとおっしゃった。愛して育てるということを知らなかったからだ。今のレイは、それを知っていて、愛されていると感じたと微笑んでいた。だから、愛してくれるニールを守ろうとするし、そのためにレイ自身も強くなる。その一連の流れを実感したそうだ。
「そんなの普通のことじゃねぇーのか? 」
「いや、たぶん・・・違うんでしょ。俺が一般家庭で両親に愛情をもって育ててもらったから、それをお裾分けできるんだと思います。刹那やティエリアやアレハレにも、お裾分けできたから、あいつらは俺を慕ってくれる。・・・・あんたにもあったから、悟空に慕われているんじゃないですか? 」
「俺は捨て子だぞ? 」
「でも、あんたのお師匠さんが拾って育ててくれたんでしょ? 別に肉親だからじゃない。きちんと心を向けて、あんたを育ててくれたから、あんたは優しいんだと思います。」
「悟空は、金蝉が育てたんだ。俺じゃねぇ。」
「俺にも優しいでしょ? 」
「うぜぇ。・・・出汁巻き。」
「はいはい。」
「俺の師匠は、かなりの破戒者で、タバコも酒も好き放題でバクチまでやってたぞ。・・・・まあ、俺を受け入れてくれたとは思う。最後に、俺に三蔵まで譲りやがったしな。」
「ん? お師匠さんは亡くなったんですか? 」
「・・・・殺された。 仇は討った。」
「そうですか。・・・うちは最終的に弟が仇は討ってくれたらしい。」
 坊主もマトモではないのは解っている。だから、女房も流すように返事した。冷蔵庫からタマゴのパックを取り出して、ボールに割りいれる。六人だから一パック丸ごとだ。
「何にも言わずに逝きやがったから、俺は苦労させられたんだ。ちっとは話しておいてくれれば・・・・いや、今更だな。あれが俺に課した修行だったんだろう。」
「・・・・俺は、どうなんだろうな。味噌汁はワカメでいいですか? 」
「明日は豆腐にしろ。・・・・おまえも修行したんじゃないか? 超一流のスナイパーになったんだろ? 」
「喜んでないと思いますけどね。」
「うちは面白がってるだろうぜ。・・・・俺が、どうなるかわかってて、何も言わなかったんだからな。」
 三蔵の地位を継げば、次の標的は坊主だ。それも承知の上で、坊主の強さを信じていたから、何も言わなかったのだろう。そういう意味では、愛情なのかなんなのか、坊主も疑問に思うところだが、なんとかするだろうと考えていたからの放置なら、坊主の力を信じていたことになる。朗らかに微笑む師匠の顔を思い浮かべて、坊主も苦笑する。万事にだらしない師匠だったが、優しい人ではあった。今となっては、何も聞けないが、それでいいのだろう。
「逢ってみたかったな。」
「やめとけ。あれこそ、押し倒しにかかるぞ。」
「え? まあ、それは、それでもいいんだけど・・・聞いてみたかったな。あんたの幼少時のことを。」
「言わせるかっっ。」
 カチャカチャと音がして、じゅうっと玉子焼き器に黄色い液体が広がる。それに伴って、おいしい匂いがする。あはははは・・・と女房は笑いながら、タマゴを焼く。そこへ悟空が飛び込んできた。
「おっはーママ。」
「悟空、納豆ないんだけど、いいか? 」
「えーーーーーーーーコンビニまでひとっ走りするっっ。他は? 」
「食パンとイチゴジャムも頼む。」
「了解。」
 帰って来たばかりで食材が不足していた。とりあえず、あるもので作っているが、悟空は、どうしても納豆が食いたいらしい。財布を持って、てってけてと駆け出した。昨晩の残りがあるので、それほど不足はしていないが、生野菜が全滅で、そこいらが女房は気に入らないが、こればかりはしょうがない。食パンとイチゴジャムはメイリンのためのものだ。和食が食べられるのか不明なので、無難なものを用意する。
「納豆はなかったのか? 」
「あれは特区だけですよ。オーヴにはあるけど、それも特区のものらしい。・・・・何回かは、オーヴ大使館の食事を食べさせてもらったから、それほど餓えませんでしたが、悟空は食べたいって叫んでました。」
「保存食のはずだが・・・ああ、そうか、納豆菌がないからか。」
「というか、空気を清浄に保ってるから菌の繁殖も難しいんじゃないですか? 」
 くるくるっと何度かタマゴを巻くと立派な出汁巻き卵になる。それをまな板において、次の出し巻きにかかる。冷凍庫から、菜モノの煮物を取り出して電子レンジで解凍する。
「煮物は食わなかったんですね。」
「八戒が作ってたからな。それほど消費できなかっただけだ。カレーは食ったぞ。」
「あんた、カレーばっか食ったでしょ? 在庫がない。」
「あれが一番、楽なんだ。メシとカレーをチンすりゃできあがる。麻婆豆腐は甘すぎた。メシにかけるから、今度からは辛めにしてくれ。」
「ん? それは肉豆腐でしょ? 俺、麻婆豆腐は作ってない。」
「どうりで甘いと思った。七味をかけて食ったんだ。」
「そりゃすいませんねぇ。次回は、麻婆豆腐も用意します。」
「まだ出かけるのか? 」
「うーん、俺は予定はないんですが、次にフェルトが降りて来るらしいんで、もしかしたらオーヴに拉致されるかもしれないな。お盆なら残ります。」
「まあ、いいんだが・・・」
「寂しいと思ってくれました? 」
「面倒だっただけだ。おまえじゃなくてもいい。」
「あははは・・・せいぜい、亭主のお世話をざせていただきます。お盆のバイトの手配は? 」
「まだだ。予約は、適当に入れてあるから確認しておけ。」
 出来上がった料理をツマミ食いしつつ亭主は、楽しそうに話しているし、準備をしながら、女房も相槌をうっている。それを客間の襖を薄く開いて、歌姫様とメイリン、シンが観察している。
「大丈夫そうだな。」
「でも、シン、午睡は長めにしてくださいね。」
「わかってる。オーナーの予定は? 」
「午後近くまでで撤退いたします。午後からアレハレたちが戻る予定ですから、それまでは待機してください。」
「ほんと、仲の良いご夫夫なんですねぇ。ほのぼのして幸せそー。」
「でも、本人たちはいちゃこらじゃないと言うんだぜ? メイリン。俺、あれ以上に、いちゃこらしてる夫婦は知らないんだけどさ。」
「無自覚のいちゃこらは最強です、シン。・・・さて、そろそろお手伝いに参戦いたしましょうか? 」
「そうですね。」
 すでに全員が着替えている。本来なら、すぐに手伝いに出ているのだが、寺の夫夫がいちゃこらしているので、しばらく観察して和んでいた。