こらぼでほすと プラント13
休ませておきたいので、シンと悟空で、そう勧める。この暑さだから、あまり通常業務をやらせたくないからのことだ。うーん、と、ニールは渋ったものの、私だけスキンシップが足りない、と、歌姫様に愚痴られて、しょうがないな、と、頷いた。
午後近くに、シンが様子を見に、脇部屋の障子を、そっと開けると、歌姫様とメイリンはテレビを観賞していた。もちろん、ニールは布団で寝ている。
「クルマが来たぜ、オーナー。」
「はい、では撤収いたします。シン、デリバリーは届きましたか? 」
「ああ、届いた。」
ラクスを迎えに来た護衛陣と、そのクルマには寺の昼飯が鎮座していた。それと引き換えに、ラクスを引き取ることになっている。
「午後から、アレルヤたちが戻ります。私たちは、これからユニオンですので夜には戻りません。」
「わーった。」
アレルヤたちの分を確保するために、ラクスは嘘をついた。ユニオンとなると日帰りは無理だ。おかんの寝顔を眺めて、「では、いってきます、ママ。」 と、声をかけて出発する。
「夕方には、キラもいらっしゃるでしょう。」
「ああ、アスランから連絡があった。おやつは適当に運んで来るってさ。」
「ママの食事は、別メニューで用意してもらいました。目が覚めたらお願いします。」
「了解。」
回廊を歩きながら打ち合わせして、居間に顔を出す。坊主が書類仕事をしていたので、「パパ、お仕事にいってまいります。」 と、ぺこっと歌姫様がお辞儀をしたら、坊主は、ものすごーくイヤそうな顔をして、懐に手を入れようとして、横で一緒にお辞儀しているメイリンに気付いて、諦めて手を上げた。懐にはマグナムだが、メイリンには刺激が強すぎるだろうと配慮したらしい。
「気をつけてな、歌姫さん。」
「はい、悟空、お邪魔いたしました。」
玄関には、すでにヒルダが待っている。仕事はサボれないので、歌姫様も素直にクルマに乗り込んだ。
ヴェーダに辿り着いたリジェネは、連邦に知られていない侵入口から小型艇を乗り入れた。ここは最深部で、イノベイドの素体工場やら、MSの工廠やらがある。
「素体は完成している。準備するから、少し待ってて。」
それだけ言うとリジェネは素体から抜けた。ヴェーダの電脳空間で、レイの手術の手筈を用意する。レイが是と答えた段階から準備はしていたので、システムは完成している。それを実際に行なうために、機械やら必要な薬品やらの手配をしているのだ。
レイの眼の前には、レイと瓜二つの身体がある。まだ、医療ポッドのようなものに入っているので触れられないが、レイ当人が見ても、そっくりだと思うものだった。
・・・・遺伝子情報だけで、ここまで似せられるものなんだな・・・・
身体を捨てる、ということを、そこで実感する。この素体とヴェーダで脳だけを取り出したレイがリンクする。違和感はないらしいが、不思議な気分だ。今の身体がなくなって、この身体を動かすことができれば、レイは二十年は生き永らえることができる。老化の心配もしなくていいし、今のままの体力を維持できる。
・・・あなたのお陰で、こんな冒険をすることになりました、ママ。でも、後悔はしてません。むしろ、楽しんでいる気分だ。まだまだ、あなたとやりたいことがあるので、ここで死んでもいられませんからね・・・・・
本格的に歌姫様とキラがプラントに移るには数年はかかる。それまでは、レイも、特区で居座るつもりだ。できるだけギリギリまで居座って、ママと楽しい思い出を作ろうと思う。なんでもない日常のことを、ママとやりたい。それがレイには幸せな宝物になる。
そんなことをつらつらと考えていたら、リジェネの身体が起き上がった。
「お待たせ、レイ。まず、きみのほうからだ。」
「ああ、さっさとやって帰ろう、リジェネ。何をすればいい? 」
「この再生槽に沈めて、きみの身体と脳を切り離す。次に目が覚めたら、きみはイノベイドになってるから、これといって問題はないはずだ。もし、目が覚めて違和感があったら、その時に言って。調整するから。ああ、服は脱いでね。それ、素体に着せるから。」
そうだった、と、レイは再生槽の前で衣服を脱いだ。それから再生槽に横たわる。機械が下りてきて、再生槽が閉じられる。
作品名:こらぼでほすと プラント13 作家名:篠義