こらぼでほすと プラント15
リジェネとティエリアは素体の準備はしていない。ティエリアは、諸事情で、ミニがあることはあるが、それではマイスターの仕事はできない。万が一の場合、即座にヴェーダに戻るなら、素体を壊すのが一番手っ取り早い。もちろん、そんなことをニールが知ったら悲しむから、こっそり内緒で、ということになるが、それでも必要になることもあるだろう。レイの素体の予備を作るついでに、自分たちの分も生成しておくとするか、と、意識をシステムの中へ戻す。使わないのが一番だが、何があるのかわからない。それに、ティエリアはマイスターだ。素体を損傷させることもあるだろう。
使わなければ幸いだ。なんせ、使うには、その素体を破壊する必要がある。リンクしている素体は、ひとつしかないからだ。新しい素体に移るには、元の素体は使用できない状態でないと無理な仕組みになっている。いくつかの指示を出して、素体の準備をすると、最終チェックにリジェネも取り掛かった。
覗かれていることに気付かないニールとハレルヤは、さくさくと買い物を済ませた。もう時間がないから、必要なものを買うとハレルヤが運転してきたクルマで引き返した。悟空は夏休みだが、短期肉体労働バイトをしているので五時には戻って来る。『吉祥富貴』に出勤は六時だから、それまでにお腹に詰めておかなくてはならない。なんとか四時過ぎに戻ったら、寺には誰もいなかった。
「よかった。間に合った。」
「あっちぃーなー、クーラーがついてねぇーじゃねぇーか。」
エアコンのついていない室内は熱帯雨林並の湿気と温度になっている。慌てて、ハレルヤがエアコンをつけてまわっている。買って来たものを食卓に置いて、ニールも麦茶を用意した。まずは水分補給。特区では、夏の常識だ。ハレルヤが戻って来て、ごくごくと麦茶を飲み干す。
「晩飯は何が食べたい? 」
「なんでもいい。とりあえず、横になれ、じじい。顔がデロデロだ。」
「あんなに手間がかかるもんだとは思わなかった。水着だけじゃなくて履物とか化粧品とかさ。いろいろと用意するもんがあるらしい。そんなの、考えなかった。」
「まあ、野郎なんてレンタルで、どうにかなるぐらいだからな。」
「おまえ、泳がなかったのか? ハレルヤ。」
プラントツアーの間、ハレルヤたちとマリーは特区を旅行していたはずだが、マリーは何も持っていない。どうしていたのか、気になった。
「泳いだが、レンタルしてたんだよ。マリーも同様にな。短時間だったし。」
「そっか。オーヴだと半日くらい、水着のまんまとかになるもんな。」
少し涼しくなったので、ニールも卓袱台の前に移動する。亭主は、どうせパチスロかなんかだろう。檀家の予約帳をチェックすると、いくつか増えていた。かなりの数が入っているので、そろそろ打ち切りにさせてもらわなければならない。
「明日、掃除手伝ってくれるか? 」
「墓地か? 」
「ああ、草むしりしておかないと。本堂も、そろそろ片付けないとな。」
「わかった。いいから、ちょっと横になれ。」
「ごめん、悟空が帰ってきたら起こしてくれ。」
どっこいせ、と、ニールが畳に横になると、すぐ大人しくなった。疲れた顔をしていたので、ハレルヤは、やれやれとタオルケットをかけてエアコンを弱くする。人ごみは、まだまだ疲れるらしい。
ほどなくして、坊主はスクーターで戻って来たが、畳に転がる女房を一瞥して、冷蔵庫からビールを取り出した。それから食卓に乗っているハンバーガーをひと包み持って来て齧りつく。
「何をやらかした? 」
「マリューとアイシャが連れまわした。」
女性陣に連れ回されて疲れたらしい。そういうことなら放置しておく。食べるものもあるし、坊主のほうは困らない。
「三蔵さん、本堂の掃除はじじいにやらせてもいいのか? 」
「ああ、トダカさんが手伝うから連絡しとけ、橙猫。明日って言ったか? 」
「いや、明日は墓地の草むしりって言ってた。」
「それなら、今夜、舅と打ち合わせしておく。」
お盆ウィークまでに掃除はしておかなければならない。トダカは、この週末辺りを予定しているから、打ち合わせは坊主の担当だ。 来週から、お盆ウィークに突入するから、それまでに掃除は終わらなくてはならない。年末の大掃除ほどではないので、気楽なレクリェーションになっている。
作品名:こらぼでほすと プラント15 作家名:篠義