こらぼでほすと プラント15
「うーん、可愛いっていうより機能的な感じじゃないか? マリー。」
てな感じで、いちいち、フィッティングルームに呼ばれて感想を言わされるので、ぐったりだ。水着が選ばれたので、やれやれと思っていたら、次にリゾートウェアだとおっしゃる。確かに、サンダルやら帽子やら、それに見合う衣装も必要だから、わかるっちゃあわかるのだが、疲れることは疲れる。休憩用のベンチに座っていたら、マリーが戻って来た。
「終わったのか? 」
「ええ、流行のものをお姉さま方に教えていただきました。・・・お疲れみたいですね? ニールママ。」
「立ちっ放しだと疲れるらしい。」
「お茶にしましょう。お姉さま方も、そろそろ終ります。」
大漁だぁーとアイシャとマリューが買い物袋を引っさげて戻って来た。なんとか終わったらしい。
「あら、お疲れね? ニール。」
「マリューさん、疲れました。」
「じゃあ、お茶にしましょう。それから、化粧品に移動するわよ。」
「え? まだ、あんの? 」
「日焼け止め対策の化粧品やシャンプーなんかも一揃えしないとね。マリーさんは、あんまり詳しくないから、私たちで教えておくわ。ニールは、お茶飲んで、少し休憩していなさい。」
「いや、それなら、おやつを買いに行きます。一時間ください。」
本日はウィークデーなので、年少組が出勤前におやつを食べにくる。簡単なものは用意してあるが、せっかくだからスイーツも買って帰ろうと考えていた。
「ソレには、アタシが付き合うワ、ニール。マリュー、ニールの日焼け止めもタノムわね? 」
「了解、アイシャ。あと、アクセもつけましょうね? マリー。水着に合うリボンやイヤリングは必要よ? 」
「ありがとうございます、マリューさん。そういうところが、私は、まったく経験がなくて助かります。」
そういや、そうだった、と、ニールも内心で頷く。元が超兵さんで、そのまま軍籍にあったから、おしゃれや流行のものなんて買い物することもなかっただろう。アイシャとマリューは、そういうことに詳しいので、呼び出して正解だった。
「あのこ、箱入りムスメさんネ? 」
カフェテラスに落ち着いてから、アイシャが、そう言った。たぶん、マリーの経歴も、『吉祥富貴』では知らされているだろう。カフェオレの氷をストローで回しつつ、ニールも苦笑する。
「そうなんでしょうね。外へ出ることなく人革連に入ったらしいから、あのぐらいの世代がするようなことはしてないんでしょう。・・・・今回は助かりました。俺には、水着以外のことはわかりません。」
「うふふふ・・・だから、マリューも誘ったの。アタシたちなら、教えてあげラレルから。」
よくよく考えたら、フェルトの時は歌姫様が事前に用意してくれていたから、そこまでの準備はしなくてよかった。女性でないとわからないことがあるので、ニールは感謝している。なんせ一緒に旅行しているのが、そういうことに鈍感なアレルヤたちだからだ。
「オーヴの遠征の時もお願いします。」
「了解よ。・・・・そういえば、タリアの誘いも断ったらしいワネ? ニール。」
「え? なんで、それ・・」
「マリューに連絡が入ったの。体よく断られたって。・・・・せっかくなら リゾートラバーはアリなのに? 」
「イヤですよ。人妻なんて。」
「じゃあ、人妻じゃなきゃ、オーケー? 」
「うーん、そうなるんだけど、今は全然。・・・こちらは、何もなかったんですか? 」
「これといってはナッシング。割と平和にウゴイテル感じ? 」
「それは何よりです。」
「でも、ニールの好み、ストライクだったでしょ? 」
「そりゃそうだけど・・・もう習い性みたいになってんでしょうね。素性の不明な女性しか相手してないから。それに、タリアさんは本気じゃなかったと思いますよ? アイシャさんたちみたく、俺をからかってるって感じでした。」
そんな話をしていたら、ニールの横の椅子にハレルヤが座り込んだ。一応、ついてきてくれたらしい。
「まだ、終わらねぇーのか? じじい。」
「女性陣は準備も大変らしいぞ、ハレルヤ。おまえは買ったのか? 」
「五分で終わった。そろそろ逃亡してもいいか? アイシャさん。じじいが疲れ果ててる。」
「ゴメンなさい、ハレルヤ。今から、スイーツの買出しよ? 」
「もう勘弁してやってくれないか? じじいが熱出すと厄介だ。」
ハレルヤが珍しく丁寧にお願いすると、しょうがないわね、と、アイシャも開放してくれることになった。とりあえず、荷物だけはクルマに運んでおくことになって、一端、マリューたちと合流する。化粧品売り場といっても、それだけではないらしい。雑貨やらも並んでいる店に、マリューたちは居た。
ニールの顔を見て、マリューもしょうがないわね、と、開放してくれた。やれやれ、と、ハレルヤと荷物を駐車場へ運んだ。
「悪い、ハレルヤ。ちょっと待っててくれ。ここのドーナッツを買ってくる。」
「なら、一緒に行く。他の買出しは? 」
「うーん、おやつを作ってないから、ハンバーガーのテイクアウトもしておこうかな。」
そろそろ三時だ。年少組が、おやつを漁りに来るので、簡単なものを用意しておくことにした。物足りないと言われたら、冷凍のカレーを出すつもりだ。
素体と生きている脳のリンクは完成した。計画した通りに電極を埋めて、素体の神経と脳が繋がったはずだ。もし、どこかに不具合があったとしても、そこから治せばいい。
・・・人を一人助けるのも大変なことなんだな・・・・
作業をやり終えて、リジェネは、ようやく意識をシステムから開放した。何十時間もかかったが、思った通りにはできたはずだ。意識を外に向けると、そこには少し小さい容器が在り、電極が繋がれた状態で、沈黙している。まだ、レイは覚醒させていない。これから、最終チェックをして、目を覚まさせる。近くに、レイの素体もある。こちらも眠ったままだ。
・・・・ああ、ママに逢いたいな・・・
でも、ママのいる場所には、リジェネの目になるものがない。ティエリアは組織にいるし、電子システムのあるものが寺には少ないのだ。ママの携帯端末にアクセスすると、どうやら買い物しているらしく、ショッピングモールの中にいる。それならと防犯システムに乗り込んで、その映像を眺めた。
今日はアレハレがお供であるらしく、二人で買い物をしていた。ドーナッツを大きな箱で買って、笑い合っている。平和な風景で、ほっとする。ティエリアがリジェネの不在の間をアレルヤたちで補ってくれたので、それほど心配することはない。
たぶん、そろそろ、お盆ウィークだから、忙しくなるはずだ。リジェネが帰れるのは、それが終わった後になりそうだから、焦っても仕方がない。
・・・・よくよく、考えたら、僕らの素体も準備はしておくべきなのかもしれないな・・・・・
今、現在、レイの素体は予備として、二体を生成中だ。何かしらのアクシデントで、素体が壊れた場合を想定して、予備も作った。それを鑑みて、自分たちの素体についても考えた。
作品名:こらぼでほすと プラント15 作家名:篠義