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オダワラアキ
オダワラアキ
novelistID. 53970
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何度でも…前編

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ひるなかの流星【何度でも】

すずめ20歳。大輝×すずめ。
ラブ有りです。
大輝と同棲していない設定。
酔い潰れ、朝目覚めると隣にいたのは!?
獅子尾×すずめではありませんが、ちょっとした絡みもあるので、獅子尾は嫌いという方はご注意を。
しかもしばらく馬村出てこないので。
少し長い話にチャレンジです♫
最近、別漫画の二次小説にハマってしまいまして、書くのが疎かになってます。




「すずめちゃんも、やっと20歳になったことだし!ってことでカンパーイ!」

すずめが先月20歳の誕生日を迎え、何かの会話の流れで誕生日のことを話すと、日頃から飲み会をしたいと息巻いている同僚たちに、仕事のあと誕生日会だなんだと付き合わされる羽目になってしまった。

同僚の佐伯綾子は、見た目はとっつきにくそうな美人だが、合コンや飲み会が大好きで、仲のいいすずめともよく食事に行っていた。
周りからは、酒豪ゆえに男が出来ないなどと言われるほどに酒好きだ。

すずめは、自分が酒に弱いことを熟知していたので、弱いカクテルをチビチビと口に運ぶが、それを見た綾子がすずめの隣に腰を下ろし新しい酒を置いた。

「すずめちゃん〜ほら飲んで飲んで!」
「綾子さん、私お酒あんまり強くないの知ってるでしょ?」

綾子は、酔っ払ったらちゃんと送ってあげるわよ〜と言うが、いつも綾子をタクシー乗り場まで送るのはすずめの方だった。
今日もそうならなければいいが。

「すずめちゃんも、この後2次会行くでしょ?女子会しようよ〜」
見た目は全く酔っているようには見えないが、綾子のこのテンションの高さはそこそこ酒が入っている証拠だった。

今日仕事のメンバーで飲みに行くことは大輝に言ってあるし、その後の約束もしていなかったため、少しならとすずめは答えた。

「でも、綾子さん、飲み過ぎないでくださいよ〜。送るの私なんだから」
「だーいじょうぶ!全然酔ってないから!」
酔っ払いの〝酔っていない″ほど信じられないものはないが、フラついたりしているわけではないので、まだ大丈夫そうだ。


1次会が終わり、2次会へは同僚の女の子4人で行くことになった。
うち、1人はもちろん綾子で、あとの2人もいつも食事に行ったりしている舞と詩織だ。
結局いつもの気兼ねしないメンバーになる。
同僚全員で飲むよりもすずめはこういう内輪で食事をしたりする方が好きで、酒があまり強くはなくても2次会に参加するのはそのためだった。

1軒目の居酒屋から程近い場所のダイニングバーに入ると、顔見知りの従業員がこんばんはと挨拶をしてくれる。
元々は、舞が見つけた店で、店の雰囲気がよく料理が美味しいのももちろんだが、従業員のレベルが高いのと興奮して話してくれたのを覚えている。
それから4人で食事に行くときは、ほとんどこの店に通っていた。
確かに言われてみれば、働いている従業員目当てでくる女性も多いというのが分かるほど、綺麗な顔立ちの男性が多かった。

「はい、2次会〜カンパーイ!」
またも綾子の音頭でグラスを合わせると、すずめもカクテルを飲んだ。
カクテルもバーテンダーが作ってくれる本格的なもので、美味しくてつい飲み過ぎてしまいそうだ。

「すずめちゃん、今日は彼氏との予定ないんだ?」
「うん、今日は約束してないけど」

人の恋話が大好きな舞が、すずめに彼氏がいると知ってからは、ことあるごとに写真を見せて、今日はデートするのかなどを聞いてくる。

舞は良くも悪くも軽いので、1人の男性と長続きした試しがない。
彼氏がいる間浮気をするようなことはしないが、それは身体の関係はないという意味で、他の男性と食事に行ったりなどはしょっちゅうだ。

「凄いよね〜高校の時から3年でしょ?私そんな長く付き合ったことないよ〜」

感心するように舞が言うが、実は1人の恋人と長く続かないことに悩んでいることを、すずめは知っていた。

「3年ってそんなに長いかなぁ?舞は…まぁ飽きっぽいよね。もうちょっと別れる前に考えてみたら?」
すずめと同じく今の彼氏と3年付き合っている詩織が、舞をチラリと見て冷ややかな目で言うが、心の奥では舞のことをいつも気にかけている故の言葉だ。
舞もそのことを知っているから、詩織の諭すような言葉にも理解を示している。

舞の今日の装いはいつもと同じように、金髪に近い長い髪をトップで纏めて、グレーのカラコンを入れている。
服も露出の激しいものが多く、舞が軽く見られる原因は、この外見にもあるとすずめは思っている。
話を聞けば、もちろん舞にも問題はあるが、相手の男が働いていなかったり、二股三股は当たり前だったりと、ダメな男を好きになる傾向にあるようだ。
「飽きっぽいっていうか、舞にも本当に好きな人が出来れば、変わるんじゃないかなぁ?」
すずめが言うと、全員が顔を見合わせて惚気だね〜とニヤリと笑う。


女同士の話に花を咲かせていると、すずめたちのテーブルに頼んでもいないカクテルが置かれる。
「これ良かったらどうぞ〜」
いかにも遊んでそうな3人組の男性に声を掛けられ、もちろんすずめは無視を決め込むが、チラリと舞を見て嫌な予感がした。

「え〜いいんですかぁ?やったぁ」

ああ、やっぱりとガクッと肩を落とす。
これも舞の悪い癖で、今まで奇跡的に危ないことはなかったが、舞と仲の良い詩織が何度言っても直らない。
すずめと詩織がため息をついて、わざとらしく帰る準備を始めると、舞と男たちの間で一緒に飲むことが決まってしまっていた。

「舞、帰ろう」
「みんな帰っちゃうの〜?残念だけど、じゃあ舞ちゃんは、俺たちと飲もうか!」
男たちは乗り気の舞を帰すつもりはないらしく、綾子が帰ろうと舞の腕を引っ張っても、反対側から舞の肩を掴みホールドされてしまう。
そこで、こういうタイプの男たちは危ないと舞が気がついてくれればいいが、そうではないことをすずめたちは知っていた。
「飲みましょ〜!」
予想通りの舞の言葉に、3人はため息をついた。

男たちは、どこか別の店に移動する風でもなく、すずめたちが懇意にしている店に留まるようだった。
顔見知りの店員もいるし、すずめたちが付いていれば危ないことは起きないだろうと、3人は立ち上がりかけた椅子に再度腰を下ろした。
あとは、なるべく早くに切り上げるだけだ。
「あれ?一緒に居てくれるの〜?嬉しいな。飲もう飲もう!」
外見的には舞と同じような、金髪にピアスの男がすずめの肩を組んだ。
振り払おうとすると、絶妙なタイミングで手を離す。
慣れている様子の男に、すずめは嫌な予感がした。



***


大学時代の友人と、久しぶりに会う約束をしていた獅子尾は、普段は滅多に降りない駅の改札を通った。
お洒落で美味しい酒を出す店があると、友人と待ち合わせをしていたのだが、指定された駅に降りるとふと思い出す。

そういえば、この近くじゃなかったか。

高校を卒業後にすずめが働いている水族館のことを、諭吉から聞いて知っていた。
諭吉と獅子尾の間では、すずめの話は特にタブーになっておらず、獅子尾の怪我をキッカケにすずめとの話し合いを設けてから、吹っ切れたのだと諭吉は思っているようだ。
作品名:何度でも…前編 作家名:オダワラアキ