こらぼでほすと プラント17
お盆ウィークの最終日は、いつも静かなものになる。前日までに、坊主の回向サービスは、ほぼ終了するので、比較的、時間がある。墓地の客も、割りとまばな感じになっている。
「明日、帰って来るんだよな? 」
「ああ、そうらしい。・・・・なんか、イヤな予感がする。主に宅急便関係で。」
毎度のことだが、ニールが参加するしないに拘わらず、オーヴ遠征の後は荷物が届く。カガリからの差し入れだが、とんでもない量がやってくるのだ。お盆は特に、ニールが参加しないので、たくさん送ってくる。さらに、『吉祥富貴』も夏休みだから、大量の食材を捌く場所もないとくる。
「うーん、今日か明日だよな。トダカさんとこの親衛隊も呼んで、消費していただけばいいんじゃないか? ここだと手狭だから店のほうでさ。」
「毎回、迷惑かけるけど、いいのかな? 」
「タダだぞ? 迷惑でもないだろ? どうせ、入りきらないのは店の冷蔵庫に叩き込むことになるんだから。」
「そうだよなあ。送るなって言っても聞かないし。」
「カガリにすりゃ、おかんに美味しいものを食わせたいってことなんだから、諦めろよ、ママニャン。今回は、アレハレたちも居るから、喜ぶぞ? 」
「そうなんだけど・・・」
ハイネのブランチに付き合って、コーヒータイムをやっている。たぶん、今日か明日に、大きな荷物が届くので、留守にできない。まあ、大人五人ぐらいだと食材の消費も少ないから、毎日、買出しすることもないので、ニールも出かけるつもりはない。坊主は、回向サービスの午前便に出ているが、そろそろ戻るだろう。バイトさんの食事は脇部屋に配達してあるので、あちらも自由にやってもらっている。
「今日、何かリクエストは? 」
「うーん、明日は海鮮なんだから肉がいいかな。面倒なら鍋にしようぜ? 」
「キムチ鍋とか? 」
「それでもいいな。でも、キムチ鍋だと、おまえが食えないだろ? 水炊きにして、各人で辛味は調整すればいい。材料は? 」
「鳥も豚もあるから大丈夫。キャベツもあるし・・・強いてあげるなら、もやしがない。」
「それぐらいなら、スーパーで買ってくるか、お父さんに頼め。俺、冷奴がいいな。」
「豆腐はないな。おまえ、留守番してくれるだろ? 午後からスーパーまで行って来る。」
「ダァメッッ。炎天下はやめろ。」
「でも、材料が足りない。」
「三蔵さんが戻ったら、休憩してる隙に・・・いや、怒るな。」
「怒るだろうな。だからさ。」
坊主は休憩している間は、女房を構いたい人なので、外出するなんていうと、とても不機嫌になる。下手をするとマグナムで狙い撃たれるので、あまり出かけたくはない。
「トダカさんに連絡しろ。」
「来るつもりかどうか、わかんないのに。」
「おまえが、『お父さん、助けて。』って電話すれば来るだろ? 親バカ全開なんだからさ。」
「いちいち、そんなことで使い走りさせるわけにはいかないだろ? ああ、帰って来た。」
パルパルと軽いエンジン音が聞こえたので、寺の女房は立ち上がる。今日は二軒だから、大して汗もかいていないだろうが、出迎えるのは基本だ。
「おかえりなさい。」
「貰い物だ。冷やしとけ。」
「梨ですか。」
回向先からの貰い物は梨だった。きれいにパッキングされているので、そのまま冷蔵庫に投げ入れる。黒袈裟を脱がせると、女房は缶ビールを取り出して手渡す。午後からは三軒。それも三時ごろからの予定だから、アルコールは抜ける。
「ちょっとスーパーまで行って来てもいいですか? 」
「ああ? 何が足りないんだ? 」
「もやしと豆腐。今日は鍋でもしようかと思うんですが、リクエストは? 」
「キンキンに冷やした刺身こんにゃくを酢味噌だな。酢の物も。」
「それもないな。酢の物って、ぬた和えとか? 」
「なら、イカを入れろ。ウスアゲだと味が足らねぇ。枝豆はあるのか? 」
「まだ、あります。」
「じゃあ、そこの居候に走らせろ。」
「スクーターで俺が行こうかな? と思うんですが? 」
「・・・死にてぇーのか? アホ嫁。」
「あれぐらいなら、なんとか乗れますよ。」
「右目の視覚が狭いやつは乗るな。怪我するぞ。・・・おまえは俺の相手をしろ。次は三時だ。」
「はいはい、亭主の相手はします。じゃあ、シャワーでも浴びてください。」
これを聞かされているハイネも慣れたものだ。とりあえず、坊主が言ったものをメモするぐらいのことはする。坊主が歩き去ると、女房にメモを見せる。
「ヌタって、わけぎだな? 」
「ああ、それと酢味噌も買わないと。クリーニングを出しに行くから、その時に寄ってくるか。おまえ、留守番な? ハイネ。」
「はい? 」
「だって、酢味噌のメーカーがわかんないだろ? クリーニングも入れ替えみたいなもんだから、俺が言ったほうが話は早い。」
「そうだけど。一人はやめてくれないか? 」
「毎日、やってることなんだから大丈夫だよ。」
「でもな、夕立するとマズイだろ? 俺が居る時にダウンされたら、俺が三蔵さんに凹だぞ? ママニャン。」
「でも、留守番がいないと荷物が届いたら、マズイしなあ。」
確かに、そうなので、ハイネはトダカにメールすることにした。来訪予定なら、留守番なり、ニールの付き添いなりが頼める。即座にニールの携帯端末が鳴り出した。
「・・・はい・・・ああ、すいません。違うんです。買い物に行きたいんだけど、ハイネが一人はダメだって・・・・はい・・・いえ、夕方でいいんです・・・はい・・・・わかりました。泊まります? お父さん。・・・・はい・・・はい。」
娘が買い物に行きたいのに出かけられないと言えば、親バカなトダカは、いそいそとやってくる。と、思っていたら、携帯を切ったニールが、「バカッッ。」 と、ハイネを叱る。
「来るんだろ? お父さん。」
「今夜の夜便でオーヴへ出向くから、それまでに買い物に付き合うってさ。今日は来ないつもりだったんだよ、ハイネ。・・・余計なことを。」
「ああ、墓参りか・・・そうか。」
「アマギさんも行くから、夕方に来て食事して出かけるって。」
夜の便なので、寺で食事する時間はあるらしい。早めに出て、こちらに立ち寄ってくれるとのことだ。トダカは、オーヴでの大戦の時に部下をかなり亡くしている。そのため、お盆には必ず、オーヴに戻って慰霊碑を参ってくるのだ。今回は、年少組が留守だから、ギリギリまでニールの相手をしてくれていた。
そういうことなら、冷凍の食材を解凍に回すことにした。鍋だけでは物足りないだろうから、いろいろと物色しておく。
「昼は? 」
「木の葉丼とそうめん。準備してある。ハイネも食べるか? 」
「いや、お父さんが来るなら、俺は、ちょっと出てくる。」
「夜は? 」
「もちろん、いただきます。それで、お父さんとアマギさんを空港まで送迎させていただきましょう。ママニャンも行こうぜ? 」
「そうだな。見送りに行こうかな。」
などと言い合っていたら、坊主が戻って来た。作務衣に着替えて、さっぱりしている。台所で、わたわたしているニールに近寄り、冷蔵庫からビールを取り出す。
「で? 」
「明日、帰って来るんだよな? 」
「ああ、そうらしい。・・・・なんか、イヤな予感がする。主に宅急便関係で。」
毎度のことだが、ニールが参加するしないに拘わらず、オーヴ遠征の後は荷物が届く。カガリからの差し入れだが、とんでもない量がやってくるのだ。お盆は特に、ニールが参加しないので、たくさん送ってくる。さらに、『吉祥富貴』も夏休みだから、大量の食材を捌く場所もないとくる。
「うーん、今日か明日だよな。トダカさんとこの親衛隊も呼んで、消費していただけばいいんじゃないか? ここだと手狭だから店のほうでさ。」
「毎回、迷惑かけるけど、いいのかな? 」
「タダだぞ? 迷惑でもないだろ? どうせ、入りきらないのは店の冷蔵庫に叩き込むことになるんだから。」
「そうだよなあ。送るなって言っても聞かないし。」
「カガリにすりゃ、おかんに美味しいものを食わせたいってことなんだから、諦めろよ、ママニャン。今回は、アレハレたちも居るから、喜ぶぞ? 」
「そうなんだけど・・・」
ハイネのブランチに付き合って、コーヒータイムをやっている。たぶん、今日か明日に、大きな荷物が届くので、留守にできない。まあ、大人五人ぐらいだと食材の消費も少ないから、毎日、買出しすることもないので、ニールも出かけるつもりはない。坊主は、回向サービスの午前便に出ているが、そろそろ戻るだろう。バイトさんの食事は脇部屋に配達してあるので、あちらも自由にやってもらっている。
「今日、何かリクエストは? 」
「うーん、明日は海鮮なんだから肉がいいかな。面倒なら鍋にしようぜ? 」
「キムチ鍋とか? 」
「それでもいいな。でも、キムチ鍋だと、おまえが食えないだろ? 水炊きにして、各人で辛味は調整すればいい。材料は? 」
「鳥も豚もあるから大丈夫。キャベツもあるし・・・強いてあげるなら、もやしがない。」
「それぐらいなら、スーパーで買ってくるか、お父さんに頼め。俺、冷奴がいいな。」
「豆腐はないな。おまえ、留守番してくれるだろ? 午後からスーパーまで行って来る。」
「ダァメッッ。炎天下はやめろ。」
「でも、材料が足りない。」
「三蔵さんが戻ったら、休憩してる隙に・・・いや、怒るな。」
「怒るだろうな。だからさ。」
坊主は休憩している間は、女房を構いたい人なので、外出するなんていうと、とても不機嫌になる。下手をするとマグナムで狙い撃たれるので、あまり出かけたくはない。
「トダカさんに連絡しろ。」
「来るつもりかどうか、わかんないのに。」
「おまえが、『お父さん、助けて。』って電話すれば来るだろ? 親バカ全開なんだからさ。」
「いちいち、そんなことで使い走りさせるわけにはいかないだろ? ああ、帰って来た。」
パルパルと軽いエンジン音が聞こえたので、寺の女房は立ち上がる。今日は二軒だから、大して汗もかいていないだろうが、出迎えるのは基本だ。
「おかえりなさい。」
「貰い物だ。冷やしとけ。」
「梨ですか。」
回向先からの貰い物は梨だった。きれいにパッキングされているので、そのまま冷蔵庫に投げ入れる。黒袈裟を脱がせると、女房は缶ビールを取り出して手渡す。午後からは三軒。それも三時ごろからの予定だから、アルコールは抜ける。
「ちょっとスーパーまで行って来てもいいですか? 」
「ああ? 何が足りないんだ? 」
「もやしと豆腐。今日は鍋でもしようかと思うんですが、リクエストは? 」
「キンキンに冷やした刺身こんにゃくを酢味噌だな。酢の物も。」
「それもないな。酢の物って、ぬた和えとか? 」
「なら、イカを入れろ。ウスアゲだと味が足らねぇ。枝豆はあるのか? 」
「まだ、あります。」
「じゃあ、そこの居候に走らせろ。」
「スクーターで俺が行こうかな? と思うんですが? 」
「・・・死にてぇーのか? アホ嫁。」
「あれぐらいなら、なんとか乗れますよ。」
「右目の視覚が狭いやつは乗るな。怪我するぞ。・・・おまえは俺の相手をしろ。次は三時だ。」
「はいはい、亭主の相手はします。じゃあ、シャワーでも浴びてください。」
これを聞かされているハイネも慣れたものだ。とりあえず、坊主が言ったものをメモするぐらいのことはする。坊主が歩き去ると、女房にメモを見せる。
「ヌタって、わけぎだな? 」
「ああ、それと酢味噌も買わないと。クリーニングを出しに行くから、その時に寄ってくるか。おまえ、留守番な? ハイネ。」
「はい? 」
「だって、酢味噌のメーカーがわかんないだろ? クリーニングも入れ替えみたいなもんだから、俺が言ったほうが話は早い。」
「そうだけど。一人はやめてくれないか? 」
「毎日、やってることなんだから大丈夫だよ。」
「でもな、夕立するとマズイだろ? 俺が居る時にダウンされたら、俺が三蔵さんに凹だぞ? ママニャン。」
「でも、留守番がいないと荷物が届いたら、マズイしなあ。」
確かに、そうなので、ハイネはトダカにメールすることにした。来訪予定なら、留守番なり、ニールの付き添いなりが頼める。即座にニールの携帯端末が鳴り出した。
「・・・はい・・・ああ、すいません。違うんです。買い物に行きたいんだけど、ハイネが一人はダメだって・・・・はい・・・いえ、夕方でいいんです・・・はい・・・・わかりました。泊まります? お父さん。・・・・はい・・・はい。」
娘が買い物に行きたいのに出かけられないと言えば、親バカなトダカは、いそいそとやってくる。と、思っていたら、携帯を切ったニールが、「バカッッ。」 と、ハイネを叱る。
「来るんだろ? お父さん。」
「今夜の夜便でオーヴへ出向くから、それまでに買い物に付き合うってさ。今日は来ないつもりだったんだよ、ハイネ。・・・余計なことを。」
「ああ、墓参りか・・・そうか。」
「アマギさんも行くから、夕方に来て食事して出かけるって。」
夜の便なので、寺で食事する時間はあるらしい。早めに出て、こちらに立ち寄ってくれるとのことだ。トダカは、オーヴでの大戦の時に部下をかなり亡くしている。そのため、お盆には必ず、オーヴに戻って慰霊碑を参ってくるのだ。今回は、年少組が留守だから、ギリギリまでニールの相手をしてくれていた。
そういうことなら、冷凍の食材を解凍に回すことにした。鍋だけでは物足りないだろうから、いろいろと物色しておく。
「昼は? 」
「木の葉丼とそうめん。準備してある。ハイネも食べるか? 」
「いや、お父さんが来るなら、俺は、ちょっと出てくる。」
「夜は? 」
「もちろん、いただきます。それで、お父さんとアマギさんを空港まで送迎させていただきましょう。ママニャンも行こうぜ? 」
「そうだな。見送りに行こうかな。」
などと言い合っていたら、坊主が戻って来た。作務衣に着替えて、さっぱりしている。台所で、わたわたしているニールに近寄り、冷蔵庫からビールを取り出す。
「で? 」
作品名:こらぼでほすと プラント17 作家名:篠義