不安の行方
ほわわわん、と、すずめはまた
温かい気持ちになった。
「いや、ダメじゃん!」
「はっ?ダメ?!」
キスにダメ出しされたかと思って、
馬村は少し青ざめた。
「いや、馬村のことじゃなくて!
自分がっ…キスされて幸せ感じてたら、
やっぱりそれがなくなったらって
考えちゃうのかなって…」
馬村はさっきの「ダメ」が、
自分のキスへのダメ出しではなくて
安堵した。
「オマエな…そこは幸せ感じてくれねえと
こっちも困んだけど?」
「えっ、だって…もう!馬村が悪いんじゃん!」
「はぁ?何がだよ。」
「だって、あんな嬉しいキスするから
だから離れたくなくなるんじゃん!」
「なっ///…って、オマエ
それヤバイって…」
「えっ?」
真っ赤になった顔を隠すように
頭を抱えてソファに座る馬村を見て、
すずめは自分が言ったセリフを思い出して、
カァァァァッとなった。
「やっ、ちがっ、えっ///」
馬村が赤い顔をあげ、
すずめをじっと見つめた。
「オレだって、オマエがそういうこと言うから
離れがたくなるんじゃん?」
「え……」
ゆっくり馬村がすずめに近づき、
再び優しく包むように顔を手で挟み、
そっと触れるキスをした。
馬村の冷たい唇に、
じわりとすずめの体温が移るような
歓びの交わりだった。
「ん…」
息が苦しくなる頃、唇はそっと離れた。
「馬村…好きだよ?」
「オレも。」
ギュッと抱きしめられた瞬間、
「ただいまぁ!」と大地の声がした。
「チッ、またかよ!」
お約束の大地乱入で、二人は体の距離をとった。
それ以上にならないことを、
お互いにホッとしたような、ガッカリしたような、
でも心だけはちゃんと繋がれたような、
そんな気持ちになった。
この先何度不安になったとしても、
その度に思いを伝えあえればいいと
二人は思った。