二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

金剛になった女性 - 鎮守府Aの物語

INDEX|18ページ/18ページ|

前のページ
 

--- 15 着任!




 所属契約から3ヶ月の契約満了になり、金剛は鎮守府Aを離れることになった。提督にお願いして誰にも迎えはしてほしくないとして、しずかに去っていった。あるお願いもしていたため、提督はその最後の待遇について承諾していた。


 次の日執務室に比叡が飛び込んできた。
「司令!!なんて金剛さんが昨日で最後だっておしえてくれなかったんですか!?お別れ言えなかったじゃないですか!!どうしてくれるんすかぁ!!」
 普段怒ることがない比叡が珍しく怒って提督につめよってきた。ちなみに比叡は黙って立っていれば凛とした美人なので、吐息がかかるくらい近寄られて提督はちょっとドキッとした。


「すまない。でも金剛がどうしてもっていうから。それよりも比叡、君に吉報があるんだ。」
 提督がそういうと、側にいた総秘書艦兼人事・教育秘書艦である妙高が、秘書艦席から書類を出して提督に渡した。


「なんですか、それ?」と尋ねる比叡。


「実は、新しい艦娘の着任なんだ。聞いてくれ。なんとうちにも正式に金剛が配属されることになったんだ。やったね!」
 茶化すようなガッツポーズをして提督がそう言うと、比叡は眉をひそめてなぜか表情を暗くした。


「え・・・?昨日の今日で新しい金剛の人ですか!?さすがのあたしでも気持ちの切り替えなんてすぐにできません!なんで決めちゃったんですかぁ!すぐに新しい金剛が着任する予定だったのなら、最初からヴィクトリアさんを迎えないでくださいよ!!」


 姉妹艦だからという最初の意識を越えて、ヴィクトリア・オーチャード・剛田と日名島桜として仲良くなりたいと心から思えてきたのに。自分にヴィクトリアである金剛と仲良くしろと言ったのは司令官自身なのに。なんでこうも変わり身が早いのか。
 怒りがこみ上げてきた比叡だが、そんな比叡をよそに提督が続ける。


「まぁまぁ比叡。最後まで話を聞けって。ねぇ、妙高さん、五月雨?」
「えぇ。」
「はい。」
 提督と五月雨、妙高は顔を見合わせてニヤニヤする。


 提督の机からみて左にある扉は執務室の隣にある部屋と通じている。五月雨が扉に近づいていって、ノブに手をかける。
「金剛、入ってきなさい。」
 その一言と同時に五月雨はノブを回して扉を開け、その部屋にいる人物を招き入れた。


 隣の部屋から出てきた金剛その人は、その場にいた全員が見知った顔だった。
「Hey! 比叡、妙高。・・・そして五月雨、提督!よろしくネ!」
「え?え?え?なんで? どうしてヴィクトリアさんが!?」
「だから言っただろ、正式に金剛が配属されたって。」
ドヤ顔で提督は比叡に言った。


 事の真相はこうだ。
 あの日の夜、金剛が提督に願い出たのは、職業艦娘から鎮守府Aの通常艦娘への転属だった。それは、国家的にも優遇された立場から、一時金しか出ない一鎮守府の普通の艦娘へと、格下げにも近い扱いになることだった。
 職業艦娘はその立場上、一つの鎮守府への所属ではなく、国家(大本営)に所属する形のため、いくつもの鎮守府に任務のために派遣と称して一時契約で所属することがある。つまり一つの鎮守府に留まらない艦娘なのだ。
 それに対して普通の艦娘は各鎮守府との直接契約であり、基本的には契約先の鎮守府から離れることはない。


 提督はなぜそんなことを?と尋ねたが、居心地がよいから、せっかくだからこの鎮守府の力になり続けたい、とだけ金剛は言って本当の理由を提督には教えなかった。本当の理由は、教育秘書艦である妙高と高雄にしか教えなかった。(二人は既婚者であるため、金剛はある意味安心して相談できた)
 戦力としても申し分なく、艤装の本当の力を扱えるようになった彼女が鎮守府A専属の艦娘になるなら願ってもないことなので、提督は思うところはあったが快く承諾した。


 ちなみに職としての艦娘ではなくなるため、金剛は実質無職になる。プライベートの仕事についてはこれから決めるという。提督は鎮守府から斡旋して紹介してもいいが?と持ちかけたが金剛はそれを断った。


「比叡。姉妹艦として、ヴィクトリア個人としても、これからもよろしくデス。私決心しまシタ。日本語では・・・吹っ切れたというのデショウか?もう、話すの怖がりマセン!」
「金剛さんその意気です!あたしは金剛さんの一番の味方です!それに・・・あたし、なんだかんだでお礼言いそびれちゃって。あの時あたしをかばってくれて、本当にありがとうございました!すごく嬉しかったんですよ?
 そうだ!敬意を込めてお姉さまって呼んでもいいですか?呼びますよ!」


 なんで敬意を込めるとお姉さまって呼ぶようになるんだと、比叡の思考がわからなかった提督、五月雨、妙高の3人は心の中で突っ込んだが、そんなことは金剛と比叡にとっては関係なかったようだ。


「よくわかりマセンが、ハイ。どのように呼んでもいいデス。」
「じゃああたしのことは桜って名前で呼んでください!」
「それは・・・businessとprivateの区別はつけマス。この鎮守府にいる間は比叡と呼ばせてくだサイ。もちろんprivateでは・・・ネ!」ウィンクして比叡を見る金剛。
 比叡はさっきから明るかった表情をさらにパアっと表情を明るくさせ、隠し切れない喜びを表していた。
 ひとしきり比叡と再会に対する喜びをわかちあった金剛は、真面目に提督の方に向き合った。


「提督、コノ度のゴ対応マコトにありがとうございマス。私、これからもここで頑張りマス。privateの仕事はないのでこれから頑張って探しマス。よろしくお願いしますネ。」
「あぁ。こちらこそよろしくお願いします。職業艦娘でなくなったのは少々もったいないけど、あなたの気持ちが優先だからね。俺はそれを尊重する。俺はただの艦娘金剛を迎え入れたんじゃない。金剛担当、ヴィクトリア・オーチャード・剛田さん、あなたを迎え入れたんだからね。」


「・・・職業艦娘の特権がなくなっても、金剛ではなく私を見てくれる・・・嬉しいデス・・・」
 俯いてつぶやく金剛、そして提督の最後の一言を理解したとき、金剛は机越しに向こうにいる提督に思わず飛び込んでいった。


「テートクぅ!!やっぱりあなたのことラブデース!」
「わわわ!いきなりどうした!?」
 その場にいる全員が金剛の突然の行動に驚いた。


「金剛さん・・・」
 相談を受けていた妙高は、金剛が自分自身で明かしてしまうような行為をしたことに驚いて苦笑いしたが、それもこの鎮守府における想い合いの一つの形なのだと、彼女を見守ることにした。


 一方五月雨は、突然金剛が提督に抱きついたのに心底驚き、そして次にこう思った。大人ってこんなに大胆に振る舞えるんだ・・・と、顔を真赤にしてただただ感心するばかりだった。
 彼女は少しだけ、心の奥底でチクっとするのを感じた。まだ五月雨が、提督に対する自分の気持ちには気づいていない頃である。


 提督から離れて、金剛が他の4人に見せた笑顔は、彼女が五月雨に対して見出したような、心から明るくてまぶしい笑顔だった。


「やっと、本当の私になれた気がシマース!」


END