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金剛になった女性 - 鎮守府Aの物語

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--- 8 金剛のお昼時




 出撃がない時間帯は艦娘は鎮守府と町中を自由に出入りしてもよいのだが、職業艦娘である金剛は基本的に鎮守府敷地内から出ない。(とはいえ寮は鎮守府敷地内ではなく近くのマンションなのでそことの行き来はある)


 お昼時になり、多くの艦娘は気の置けない仲の良い者同士で食堂に行ったり、町へ食事をしに行くのだが金剛は一人だ。何度か比叡から一緒にご飯食べに行こうと誘われたが、そのたびに断っている。
 以前ならグイグイ来てなかなか引こうとしなかった比叡だが、ここ2・3日してわりとあっさりと引き下がっている。


((わかっていマス。みんなこうして、だんだん私から離れて行くのデス。これは仕方ないデス。))


 金剛は自身の中にあるトラウマにも似た感覚をわかっていた。いや、トラウマだった。
 一生懸命話しても周りから何度も聞き直される。離れたところでクスクスと声を潜めて笑い声が聞こえる。それが繰り返されるのが嫌で仕方なかった。だからどうしても会話を避ける、人々の輪の中に入りたくないという行為によって、次第に周りが自分から離れていってしまうことも自覚していたのだ。わかっていたが、変に周りと仲良くしようと努力して変わるのを避けてしまう自分もいる。
 もともと日本語を思うように話せなかったので、話す必要がなさそうな艦娘になろうと思っての今の状況だが、現実は酷であった。どうしようも出来ないもどかしさを金剛は感じていた。


 お腹が鳴るのを聞いた。悩んでいても空腹にはなる。
 いつもどおり鎮守府の敷地内の端にある、ヨーロッパ風のベンチと簡易テーブルのところに足を運んだ。この一角は静かで人通りもなく、金剛は気に入っている。そして買ってきたサンドイッチを口にし、パックの紅茶を飲む。それがお昼のパターンである。


 が、その日は先客がいた。
「Ah, 提督・・・なぜここにいマスか?」
「ここはさ、鎮守府開設当時、俺と五月雨が仕事の息抜きや憩いの場として今後も使えるようにって、自分のポケットマネーから出して買ったベンチとテーブルがあるんだ。いわば思い出の場所さ。鎮守府の施設もだいぶ拡張されたからほとんど来なくなって、もう誰も使ってないと思っていたんだ。」
「そうだったデスか。思い出の場所を私が使ってはいけないデスね。今度から別のところに行きマス。」
 表面だけの笑顔を見せてそう言い、踵を返そうとする金剛を提督は呼び止めた。


「いやいや!ダメとは言っていない。むしろ俺と五月雨以外に使ってくれる人がいて嬉しいんだ。
今後もぜひ使って欲しい。」


 提督は金剛に近づいて笑顔で呼びかける。
「今日はあなたに用があるんだ。用というか、お昼一緒にどうですかってお誘いなんだけど。」
「Oh, ゴメンなさい。一人で食べマス。」
拒否されるとわかっていたのか、提督が素早く返した。
「どうか一緒にお昼行ってください。あなたと話がしたいんだ。どうか。」
先程よりも声に真剣味が感じられた。が、金剛は受け入れられない。


横「ゴメンなさい・・・」
と金剛は英語で拒否する。


「これはいいたくないんだけど、提督命令だ。金剛、どうか俺と一緒にお昼を食べにいってくれ。」


 そこまでして私と何を話したいのか。今までの鎮守府の提督と違う。妙に自分と接しようとするこの提督は何なのか。金剛も馬鹿ではない。むしろ聡明なほうだ。この鎮守府に職業艦娘として着任してはや2ヶ月。戦績はよいとされたが、この鎮守府独自の運用と教えには未だついていけてないのだ。しまいには姉妹艦である比叡に嫉妬しはじめる今の自分がいる。
 この鎮守府を統括する立場として、相手が傷つかないようなやり方で自分を叱責するのだろう。覚悟を決めて金剛は返事をした。


横「ハイ。」