好きになる理由
庄左ヱ門がは組の前に進み出て、みんなの誤解を解き始めた。
その間、伊助と団蔵は庄左ヱ門の肩越しにずっと彦四郎を睨み付けていた。
庄左ヱ門の説明が終わり、他の忍たま達が去っていく中、この二人は別れ際に何か庄左ヱ門に話しかけてから掃除に戻っていった。
それまでずっと背を向けている庄左ヱ門の後姿に、彦四郎は安心感と信頼感を覚えた。
は組相手に庄左ヱ門から守られているという不思議な状況だった。
大切なクラスメイトだけど、甘くするばかりではないその姿に彦四郎は学級委員長としての手本を見た気がした。
それと同時に、大切なは組より自分の味方になってくれる庄左ヱ門の姿に心が弾むのだった。
口元が緩んでくすりと笑うと、また二人きりになっていた。
「ごめんごめん、彦四郎。
「もー、何なんだよ…。でも、庄左ヱ門が好かれる理由、わかった気がする。
(少なくともぼくが庄左ヱ門を好きな理由はね。
「そっか。彦四郎の役に立ったかな?
「うん、ありがとう。
そうして二人で笑いあった。
「そろそろぼく行くね。乱太郎達が待ってるから。
「そうだね、じゃあまたね。
離れていく庄左ヱ門を見ながらふと、彦四郎は思った。
(伊助達のあの様子を見ても、遊んでるで片付けるのか…。じゃあ、庄左ヱ門はいったい誰を……。
「ねぇ!
「…?
思わず庄左ヱ門を呼び止めてしまった彦四郎。
振り返った庄左ヱ門は、穏やかな表情で首を傾げて無言で彦四郎の言葉を促していた。
その仕草に、彦四郎は今までと違って幼さを感じ、言おうとした言葉を飲み込んで別の言葉を投げかけた。
「ぼく、頼れる学級委員長になれるかな?
「なれるよ、ぼくなんかよりすごい、ね。
今日一番の笑顔を見せると、じゃあねと言って歩き出した庄左ヱ門の背中を見ながら、彦四郎は先程飲み込んだ言葉を頭の中で改めて口にした。
(庄左ヱ門は、誰のことを好きなの…なんて。
ぼくの名前があがるはずないのに。
(聞いてもしょうがないよな。でも…。
その質問は、いつか彦四郎自身が頼れる学級委員長になった時にしてみようと思った。
おしまい