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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 23

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 デュラハンの事を唐突に話され、戦の準備をしろなどと言ったところで、騎士達は慌てふためくであろう。そんな状態では、まともな軍備などできるはずもない。烏合の衆とまではいかぬまでも、十分な力を出しきれず陣営は崩壊する。
 イリスにも諭されるヒースであったが、まだ納得がいかない。早くに準備を整えねば、マリアンヌのような犠牲者を出してしまうかもしれない。
「やはり納得いきません。すぐに迎撃の体制を取らなければ」
「ヒース副長はどうやら、戦いながらもマリアンヌさんや天界の民の安全も守りたい、と考えておられるようですね」
 イリスの核心を突いた言葉に、ヒースは、びくりと身を震わせた。
「それは……」
「でしたら、私に考えがあります。騎士団の統率はユピター団長が、民の保護はヒース副長が行ってはいかがでしょう?」
 軍団をまとめ、先陣を切って戦うつもりだったヒースにとって、イリスの提案は思いもよらぬものであった。
「……確かに私はマリアンヌ達、天者に一切の被害が及ばぬようにしたいですが、私は騎士団副長。だれより前線に立たなければなりません!」
 天者達を見捨てるつもりは全くない。しかし、ヒースまで戦闘に参加すれば、天者を助けられるものがいなくなるのは確かであった。
「前線には、私が立ちましょう。デュラハンが狙っているのは、ソルの力。すなわち、ソルに導かれし虹の女神である私こそが、先頭に立たねばなりません」
 ヒースとユピターは、驚愕した。
「イリス様が、前線に!?」
「そんな、イリス様は敵に狙われているのですから、なおのこと本陣にいるべきです!」
 二人は必死になってイリスを引き止める。しかしイリスは、首を横に振るだけだった。
「デュラハンの狙いが私だからこそ、私は安全な所で、のんびりと構えているわけにはいかないのです……」
 イリスは、デュラハンによって無駄な犠牲を出さないための、最善の策を示した。
「それに私は何も、一人でデュラハンに当たるつもりではありません。仲間の神々と、お二人や騎士団の方々と力を合わせ、戦うつもりです。皆さんの力が合わさらなければ、かの大悪魔を討ち滅ぼすのは難しいことでしょう」
 デュラハンとの決戦は、まさに天界に住まう者皆が立ち上がらなければ、勝ち目の薄い激しい戦いが予想された。
「ヒース副長」
 イリスはその深紅の瞳を向けた。
「デュラハンは、あのソルでさえも手こずった強力な敵です。戦いが長引けば、多くの者が傷付き倒れてしまう事でしょう……。ヒース副長には無用に傷付く者が出ないよう民を守ってほしいのです。お願いします」
 イリスは嘆願するものの、ヒースはまだはっきりとした答えを出せずにいた。
 ヒースには当然、天界の存在全てを守りたい、この思いはある。しかし同時に、マリアンヌを傷付けた者、天界を脅かす存在をこの手で倒したいという意志もある。
 ヒースは板挟みになっていた。
「お願いします、ヒース副長」
 イリスは再度頼み込んできた。
「ヒース、イリス様がこれほどまでにお願い致しているのだ。これ以上何を迷うことがある?」
「くっ、俺は……!」
 ヒースの葛藤は激しさを増すばかりであった。
 突如として、辺りがエナジーに包まれた。すると、ヒース達の心に直接声が聞こえる。
ーー宮殿におわす、神々、神子に報告いたす!ーー
 心に響いた声は、ひどく切迫しているようだった。
「この声は……、アネモイ四柱の一柱の、南風のノトス。一体何があったのでしょう?」
 イリスは首を傾げた。
 アネモイ四神は、イリスと同じくソルに導かれし神であり、風の力を司り、東西南北に四柱の神々が分かれている。
 エナジーによる伝令を送ってきたのは、そのうちの一柱で、夏や秋の風を司る南風の神であり、名をノトスと言った。
 ノトスの急報は続く。
ーー天界の南に魔物が発生! 大悪魔デュラハンが率いる軍勢が、天界各地を侵攻! その配下により火の神、プロメティウスが討ち取られた!ーー
 ヒース達は驚愕をあらわにした。
「バカな!?」
「プロメティウス様が死んだだと!?」
 プロメティウスは、ソルに導かれし神であり、火の元素を司る神であった。
 数多くいる天界の神々の中で、高い位置に座する神であり、力も相当なものだった。
 そんな神が大悪魔の手にかかってしまったのだった。
ーー宮殿に駐留する聖騎士団は、迎撃準備せよ! 大悪魔デュラハンの狙いは、天界の中心におられる虹の女神、イリスである!ーー
 伝令はぱたりと止み、周囲を包むエナジーも消失した。
「そんな……、まさかこれほど早く攻めてくるなんて……!?」
 イリスは茫然自失するのだった。
 騎士二人もまた、急な事態に対応できず、立ち尽くすのだった。