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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 23

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 デュラハンは魔界を統べるだけでは飽きたらず、天界、さらにはウェイアードをも手中にいれ、全てを魔に染め上げようと画策したのだった。
 そのための手段として第一にデュラハンが取ったのは、その時、全ての世界で頂点に立っていた神の力を奪い取ることだった。
 それが太陽神、ソルの力である。
 デュラハンはソルの力を得るべく、魔物の大軍勢を率いて、天界を襲撃した。天界は瞬く間に戦火におおわれ、数多くの天界に住まう者を犠牲にした。
 しかし、ソルの方も屈することはなかった。
 当時から存在していた聖騎士団を初めとする神軍を率い、返しの一手を取った。
 ソルはこれ以上の犠牲を出さぬよう、自ら前線に立ち、魔物の軍団を打ち払った。
 そしてソルは、デュラハンとの決戦に挑んだ。
 ソルとデュラハンの戦いは、数日にも及んだ。天界と魔界、それぞれ最強と誉れ高い二者は、どちらも一歩も引かなかった。
 そして数日に及ぶ死闘は、辛くもソルの勝利に終わった。
 敗れ去ったデュラハンにとどめを刺そうとしたソルであったが、デュラハンはその瞬間、どこかへ逃げてしまった。
 絶対に逃がすまいと、ソルはデュラハンを追って魔界へと追撃に向かった。
 魔界にとって異質な、ソルの聖なる力に反抗し、襲い来る魔物をなぎ倒しながら、ソルは魔界の隅々まで探し回った。
 しかし、とうとう魔界にデュラハンの姿は見えず、ソルの脳裏にある考えが過った。
 天界の神には、絶対に近付くことのできない場所。デュラハンは地獄へと行ってしまった、という考えである。
 魔界と地獄は、性質が非常に似ている。しかし天界の存在、地獄の存在はそれぞれ、二世界の狭間に存在するウェイアード、魔界に行くことはできても、相反する世界には行けないという理があった。しかしそんな理も、デュラハンは打ち破ったのだった。
 ウェイアードが天界と性質を同じくし、魔界が地獄と性質を同様のものにしていた。
 天界の女神であるソルには狭間の世界たるウェイアードや魔界に行くことができても、地獄には近付くことさえできなかったのである。
 ソルはやむなく追撃を諦めるしかなかった。結果的に、デュラハンはソルから逃れ、生を繋ぐ事ができた。その後デュラハンがどうなったのか、知る者はいない。
 しかし、デュラハンは消えてはいなかった。現にこうして再び、天界へと戦火の火種を振り撒こうとしている。
「戦火……」
 ヒースはふと呟いた。
「どうしたのです、ヒース副長?」
 イリスは不思議そうな顔でヒースを見る。
「……いえ、なんでもありません。お話の腰を折ったご無礼、お許しください」
 イリスの話は、ヒースが最近何度も夢に見た内容とよく似ていた。魔物の軍勢が来襲し、幾人もの犠牲を払い、天界が戦火に包まれる。
 そして最後には、マリアンヌが悪魔の魔の手にかかる。思い出すだけで、頬に汗が伝う。
「汗がひどいではないですか。私の話に気分を悪くしましたか?」
 イリスの顔に、心配の色が浮かんだ。
 ヒースはこれ以上黙っている方が無礼だと思い、ここ数日に見た悪夢について告げた。
「実は、最近悪い夢を見ていました。イリス様のお話のように、天界が魔物に襲われ、焼かれ、そしてマリアンヌが消える。そのような内容なのです……」
 言い終えて、ヒースは床に伏せるマリアンヌを見る。
 マリアンヌは相変わらず、安らかな寝息を立てているが、一つ間違えば、マリアンヌはバルトの凶刃によって消滅していたかもしれない。
 魔物が攻め入ってきた事に加え、イリスの話を聞いていると、ヒースの見た夢はいよいよ現実のものとなってきた。
 更には、ヒースは夢の中で、デュラハンと思われる影を見ている。まるであの夢は、デュラハンの侵攻の予知夢のようであった。
「……そうでしたか、そうとは知らず、私は……。ごめんなさい、ヒース副長」
「いえ、お気になさらないでください。私が見たただの夢です。結果こそ、イリス様のお話に似たようなものになりましたが、偶然です。イリス様は何も悪くありませんよ」
 自分がヒースを悪い気分にさせてしまったと思い込むイリスを、ヒースは宥めた。
「それよりも、デュラハンの再来が真実ならば、かの大悪魔を討つ手立てはあるのでしょうか? デュラハンを圧倒したソル様はもう……」
 ヒースの言うように、かつてデュラハンと戦い、そして勝利した太陽神ソルは、今より数百年前に没し、新たな太陽神として転生している。かつてのような力はもう存在しない。
 デュラハンがその力を欲し、また、デュラハンに対抗できる力を持つ唯一の存在であったソルがいない今、打つ手はないように思われた。
「確かに、今のソルにはかつてのような力は残されていません。しかし、彼女はデュラハンの再来を予期し、転生する前にある手段を講じていました」
「ある手段……、イリス様、それは一体どのような?」
 ユピターが訊ねる。
「ソルは、自らの持つ力を分け、ソルに導かれし神として、複数の神々を生み出しました」
 ソルは転生の直前に、自らの力を新たに生まれ出る神々に与えた。
 ソルの力はあまりに大きいため、一柱の神の身には収まりきらなかった。そのためソルは、力を五つに分け、五柱の神々に分け与えた。
 それは、地、火、水、風、四大元素をを司る神であり、地はガイア、火はプロメティウス、水はオケアノス、そして風はアネモイの神々がソルの力を受け継いでいた。
 そしてこれらの神々の中心的存在であるのが、四元素の色を虹色に例え、虹の女神と称されるイリスである。
 天界において、五本の指に入るほどの実力を持つ神々とは、彼女らの事であり、イリスはその中で最強と呼ばれていた。
 イリス達、ソルの力を受けたものは、ソルの導きを受けた神とされている。
「私は、ソルに導かれし虹の女神。他のソルに導かれし神とその力を合わせれば、いかに相手があのデュラハンとて、恐れることはないはずです」
 イリスは自信のあふれる笑みを見せた。
「おお、それでは……!?」
「はい、すぐに天界の各地にいるガイア達をこの町に集め、この宮殿を本陣として布陣します。迅速な行動が必要です。お二人にはそれぞれ、騎士団の手配、町の民の保護をお願いします」
「かしこまりました! 今すぐにでも眠っている騎士達を叩き起こし、戦に備えましょう!」
 ヒースは早速、布陣の準備に取りかかろうとする。
「いや、今は無理に皆を動かす時ではない」
 ユピターが引き止めた。
「ユピター、何故止める? すでに敵の偵察が来たばかりか、天者が一人怪我をしたのだぞ!? すぐにでも迎え撃つ準備をせねばならん!」
「ヒース副長、落ち着いてください。ユピター団長の仰る通り、今はまだ動くときではありません」
「イリス様まで……!?」
 彼女まで、何を悠長に構えていられるのか、ヒースには分からなかった。いや、分かれなかったというべきか。
「ヒース、お前の気持ちはよく分かる。マリアンヌ殿をこれ以上危険にさらしたくないという、お前の強い思いが。しかし、早急に魔物の軍勢が攻めてくる、などと皆に宣えば、混乱を招くだけだ」
「ユピター……」
 ヒースは、ユピターの言わんとすることは理解できた。