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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 23

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 そう言えば、とヒースは思い出す。
 アルテミス女神のペンダントを購入する際、代金を支払うと、職人はすんなりと求めた代金を、すぐに払ったヒースに驚いていた。
「ヒース、あなた何も知らないのね」
 マリアンヌは、ヒースが持ってきた贈り物が、どれだけすごいのか話した。
 アルテミスが月の女神と謳われるようになって、天界では幾千年と経った。そのため、アルテミスがかつて、狩猟の女神であった時の姿を知るものは、神子、天者共々僅かに残るのみである。
 加えて、猟をするアルテミスの姿を直に見ることのできた者は、もう五本の指に入るほどしかいない。
 この疾走感溢れるアルテミスの細工を見るに、その職人は狩猟の女神のアルテミスの姿を見ているに違いなかった。
 よほどの富豪にしかとても手の届かない代物だったのだ。
「そんなにすごいものだったのか……」
「こんな私なんかに、こんな高価な物をくれるなんて……。私、絶対に大切にするわ」
「どうやら、的外れな贈り物にはならなかったみたいだな……」
 ヒースは安心した。そして再び決意する。
「なあ、マリアンヌ、聞いてくれるか? 俺の気持ちを……」
 ヒースは迷う事なく、自らの想いを伝える。
「これからは君の事を、恋人、と言ってもいいだろうか?」
 マリアンヌは、これ以上ないほどに目を見開き、言葉を失っていた。
「ヒース、今、何て……?」
 マリアンヌは、これは夢なのではないかと疑っていた。
「君を俺の、大切な女性、としてもいいか。いや、言葉が悪いな、愛する、とでも……、ううむ……」
 ヒースも照れてしまい、上手く言葉が出なくなっていた。
 ヒースは首を大きく振り、迷いを払う。
 マリアンヌと出会い、ヒースは初めて他人とここまでふれ合えるようになった。
 最初こそは慣れないことに戸惑うばかりであったが、マリアンヌと過ごす時間がとても楽しい事に気が付いた。
 そして近頃、初めてできた友人に、ヒースの知らない感情が芽生えた。
 寝ても覚めてもマリアンヌの事が頭から離れず、もっと彼女の事を知り、触れたいと思うようになり、胸が痛くて仕方がない。
 これこそが恋であると、ヒースは全く知らなかった。
 この気持ちを伝えるため、慣れない贈り物までして、わざわざマリアンヌを外にまで連れ出し、よい雰囲気を作ろうとしたのだ。ここまで来て、何を怖じ気付く事があろうか。
 ヒースは迷いを全て打ち払い、そして告白する。
「マリアンヌ、俺は君の事が好きだ! だから、これからもずっと、俺の側にいてくれ!」
 ヒースは思いの丈を全て、大声で告げた。
 しばしの間が空いた後、マリアンヌは感涙を頬に伝わせた。
「ヒース……! 私、私……、嬉しい……!」
 マリアンヌの生前からの願いが、今まさに叶った。天界の者からすればほんの一時であるが、彼女にとっては悠久の時に等しいほど長かった。
 その感激はすさまじく、マリアンヌは体を震わせ、ただただ泣くことしかできなかった。
「嬉しいのだろ? だったらそんなに泣くな……」
「嬉しいからよ! ヒース……、うああああん!」
 マリアンヌはヒースの胸に飛び込んできた。
 ヒースは不意打ちを受けたように一瞬驚くが、すぐに優しく抱き締めてやった。
「ありがとう、マリアンヌ。これからも末長く、一緒にいよう……」
 しゃくりあげて泣くマリアンヌを胸に抱き、ヒースはそっと目を閉じた。
 やがて夕日が沈み、夜の闇が、二人の姿を少しずつ包んでいった。