Cara Nacido
「オフですか。色々ですね。オフ前日の晩にガンガン酒飲んで、遅く起きて家でダラダラしていることもあれば、朝からジム行って整体行って試合のDVD観てたり、ウィンドーショッピングしてからこういう店で美味いもの食べたり」
「何か……さすがって感じの休日だね。仲良しの選手とかいる?」
「チームの先輩達とは、オフの時は別行動が多いです。タイミングが合えば、早田と遊ぶことが多いかな」
「大阪と神戸なら近いもんね。東京にはあまり帰らない?」
「そうですね。ホームである神戸が色々と充実した土地で、こっちに懇意の店もたくさんありますし、実家に顔出す時くらいです」
「じゃあ、最後に今年の目標は?」
「まずはスタメンフル出場と勝利得点を上げること、ですかね。あとは、全日本選抜メンバー入りです」
「ありがとうございます。あと、これは恒例の編集部からのささやかな誕生日プレゼントです。お誕生日おめでとう」
「ありがとうございます。何だろう。開けていいですか?」
野崎が頷いたので、反町は色気も素っ気もない『週刊サッカーファイト』の封筒を開けた。
「……うわ。これはすごいですね。恥ずかしいけど嬉しいです。ありがとうございます」
封筒から出てきたのは、東邦学園中等部時代からフランスジュニアユースまでの反町の試合写真だった。……主に日向越しではあったが。それでも、自分でも覚えているいくつかの好プレーは大写しであった。
「田島くんが昔、取材用に東都スポーツのカメラマンから貰って溜めていたやつだよ」
「田島さんにもよろしく伝えてください」
「さて、取材はこれで終わりだけど、この後時間があれば、もう少しオフレコ話でもしたいんだけど、どうかな?」
「大丈夫です。じゃあ、お勧めのスペインバルがあるんで、そちらに移りましょう」
反町は苦笑と共に承諾すると、スマートフォンを取り出し、馴染みの店に電話をした。
夕焼けはまだ強く赤く輝き、宵闇には遠い。
明日はオフ、楽しい情報交換が出来ればいいなと思いながら。
end
作品名:Cara Nacido 作家名:坂本 晶