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同調率99%の少女(2) - 鎮守府Aの物語

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--- 2 初出撃



 艦娘の出撃任務は、近隣企業や団体が鎮守府に直接依頼する内容のほか、大本営から依頼される内容の2種類がある。鎮守府に直接依頼される内容による出撃任務は、学生艦娘であろうとどんな内容でも参加させることができる。(ただし学校側の部の顧問の先生の許可を得る必要はある)

 今回、鎮守府Aに舞い込んできた出撃任務は、フェリーの運行会社からの依頼によるものだった。そのため鎮守府Aの艦娘たちは作戦を立案した那珂の言うとおりのメンツで出撃することになった。

 那珂の立案通り、フェリーの護衛と警備は五月雨、時雨、夕立の三人が毎日行った。1回あたり数分気を張ればいいため、彼女らの疲れは大して出ていない。1回だけ、はぐれ深海凄艦と思われる駆逐艦級が顔を出したが、無事にフェリーが担当海域から過ぎ去った後であったため五月雨たちはなんなく撃破できた。

 一方の無人島付近探索メンバーは、旗艦那珂、五十鈴、村雨、夕立の4人で行った。状況に応じて夕立および村雨は時雨と交代する。五月雨は那珂の指示どおり、フェリーの護衛が終わったら鎮守府に戻り、提督と一緒に那珂たちの報告を待つことになる。


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 那珂も学校があるため、日中は毎日出撃できるわけではない。風邪など病欠を装って休み、鎮守府に出勤する。いつか正当な理由で堂々と休める日がくればいいなと彼女は不満とも取れる希望を持ちつつも、それ以上の不満は持たずにその日も鎮守府へ午前のほどよい頃合いに出勤してきた。

 その日、那美恵が鎮守府に出勤すると、艦娘の待機室には五十鈴と村雨がいた。手はずどおり、五月雨たちは午前の部ということでフェリーの護衛に出ていて不在だ。

「おはよ〜五十鈴ちゃん、村雨ちゃん。」
 鎮守府内なので艦娘名で呼ぶ。
「おはよ。」
「おはようございますぅ〜」

 那美恵はその後更衣室に行き、艦娘の制服に着替えてきた。気持ちはすでに那珂に切り替わっている。待機室に戻ってきた那珂はしばらくは五十鈴・村雨と雑談に興じる。

「ね、ね。初めての出撃の時ってどお?ドキドキした?」
「そうね。でもやってみると意外とあっさりと終わるわ。」
「私は今回2度めなので、まだドキドキすると思いますぅ。」
 那珂は五十鈴と村雨の回答を聞いて、安心する反面、心の高揚感が湧いてくるのを感じていた。

 しばらくして午前のフェリーの護衛が終わった五月雨たちが帰ってきた。夕立を少し休ませた後、那珂たちは出撃のため工廠にある出撃用水路に向かっていった。


 工廠内の端にあるゲートを抜けると、屋内から出撃する艦娘用の出撃用水路が3つある。それは外の出撃用水路とつながっている。那珂はどっちから出撃すればいいのか五十鈴や工廠の人に聞いてみた。

「どっちでもいいのよ。私や村雨さんたちの艤装は同調してないと地上では歩くの大変だから、屋内からしてるわ。」

 4人それぞれ艤装を装着し終わる。五十鈴の言葉どおり、五十鈴自身のも、村雨・夕立の艤装も大きいため、3人共屋内からの出撃だ。那珂はというと、3人より比較的外部ユニットが少なく、身軽なため同調してなくても多少は歩いて外に行くのに支障がない。しかし今回は初めての出撃ということで、五十鈴たちと同じく屋内から出ることにした。

「那珂さん、お先にどうぞ。」
「那珂さんの初めて、見た〜い!」
 村雨は丁寧に先を譲り、夕立は無邪気に那珂の反応を見たがる。

「じゃあ那珂。私と一緒に出ましょ。」
「うん。よろしくね!」
 五十鈴が那珂を誘うので、那珂はそれに快く承諾して頷いた。


 同調を開始し、完全に艦娘に切り替わった二人は、水路の水に浮く。不自然な波紋が湧き上がって続いた後、おさまる。艦娘の艤装が装着者と、水に完全に適応した証だ。
 二人がいざ出ようとすると、スピーカーから女性の声と、そののち男性の声が聞こえてきた。男性の方は提督だ。

「第一水路、艤装装着者、ゲート、オールグリーン。軽巡洋艦五十鈴。第二水路、艤装装着者、ゲート、オールグリーン。軽巡洋艦那珂。それでは各人発進して下さい。」
 事務的な言葉ののち、提督の声が響く。
「五十鈴、那珂。無事を。暁の水平線に勝利を。」
 それは旅の安全を祈る掛け声や仕草のようなもの。ただ那珂はいきなりそんなこと言われてポカーンとする。辺りを見回す那珂を見た夕立と村雨はすかさず教える。

「那珂さーん!今のはね。いってらっしゃいとかそんな意味のことっぽーい!」
「着任式もそうだけど、西脇提督ってこういう儀式的なこと好きな人だから付き合ってあげてくださいー!」

 那珂はなるほどと納得したが、少々恥ずかしい。とふと隣の五十鈴を見ると、掛け声とともに真っ先に出撃していった。

「暁の水平線に勝利を!」
 五十鈴は提督の言葉を受けて、真剣な面持ちで水上の歩を進め、徐々に速度を上げて工廠内の水路を進んで屋外に出て行った。その様子を見て、那珂も同じようにする。
「暁の水平線に……勝利を〜!」
 恥ずかしさもあいまって少し声がうわずってしまったが、気にせず那珂は足を蹴りだし、水路を進み始めた。

 しばらく水路を進んだ後、海上に出た那珂と五十鈴は合流した。その直後、外まで聞こえるスピーカー音から、若い女の子の声で、先ほどの提督のセリフと同じ内容が発せられた。

「ます…村雨ちゃん、夕立ちゃん、無事に!暁の水平線に勝利を。」
 うっかり本名を言いかける間違いをする、おっとり風味だが弾んだ可愛らしい声は間違いなく五月雨の声だと那珂は気づいた。那珂が五十鈴の方を見ると、彼女は補足説明した。

「旅の安全を祈るあの行為と同じものよ。うちの提督も律儀よね。ま、私はこういうの嫌いじゃないし提督のやることには賛成だからいいけどね。」
「今の声は五月雨ちゃんだけど、誰がやるとか決まってるの?」
「提督が主ね。だけど気づいた人が自由にやってよいって言ってるから、今のところは五月雨がノって声出してるわ。」
「ふ〜ん。じゃあ場合によってはあたしや五十鈴ちゃんがすることもあると?」
「そうね。そうかも。」
「うーん。あたしも嫌いじゃないけどちょっとはずいかなぁ。」

 二人がそう会話していると、ほどなくして第一水路から夕立、第二水路から村雨が姿を表して、水路を辿って那珂たちのいる海上に出てきた。

4人揃ったことを確認し、那珂は旗艦として号令を出した。
「五十鈴ちゃん、村雨ちゃん、夕立ちゃん。じゃあ行こ!!」
「「「はい!」」」
 

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 無人島探索の最中、無人島の本土よりの海岸の岩礁付近で立ち止まって休憩する4人。
「ごめんねみんな〜。余計な仕事増やしちゃって。」
「いいわよ。私は護衛だけよりこうした調査ができるほうがやる気でるし。」
 那珂の弁解を五十鈴がフォローする。
「あたしもこっちのほうが楽しい〜!なんか、ちょっとしたハイキングとかパーティーっぽい〜!」
 夕立もやる気まんまんだ。
「私もどちらかというと動きたいほうなんですぅ。」
 実は結構なお嬢様である村雨こと真純も、アクティブなことが好きな質なのか、やる気がある。