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同調率99%の少女(3) - 鎮守府Aの物語

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 那珂は天龍の学校のことについて聞いてみた。
「ね、天龍ちゃん。あなたの高校はどんな感じ?艦娘部は?」
「あたしの高校はふつーだぜふつー。偏差値もふつーで別に進学校ってわけでもないし。あと艦娘部はないよ。あたしは普通の艦娘としてうちの鎮守府に所属してるんだ。」
 那珂は自分の今置かれている状況を話した上で、天龍に自分の学校に艦娘部をつくろうと考えたことはなかったか尋ねた。

「あたしさ、学校で艦娘部つくろうと思ってるだけど、なかなか学校側がうんって言ってくれなくてさ〜。提督もあたしのためにいろいろやってくれようとしてるんだけど、思うようにいかなくて……。他の学校ではどうかなって聞きたかったんだけど。」
 那珂の事情を聞いてうーんと考えこむ天龍。
「わりぃけど力になれそうにないなぁ。あたしは艦娘部作ろう入ろうとか、そもそもそのあたりのことまったく知らなかったし。うちの鎮守府もいろんな学校と提携してるらしくて、ごそっと一気に駆逐艦の艦娘たちが入ったことがあったらしいけど、少なくともうちの高校はなかったわ。」

 続いて五十鈴が尋ねる。
「ねぇ天龍さん、あなたはどうして艦娘になったの?」

「あたしはたまたま艦娘の特集やってた雑誌見て興味持ってさ、試しに受けに行ったら天龍の艤装の同調ってのに合格したのさ。ま、艦娘になろうなんて人それぞれだけど、みんなそんなもんじゃね?まぁ他の人がどうだこうだってあんま気にしないけどさ。少なくともあたしは天龍の艤装がすんげぇカッコ良かったから、見た目で選んだってタイプだよ。」
 言い終わると天龍は缶に口をつけてコクッと一口二口、紙コップに入った飲料を喉に通した。


「まぁ……ね。私もなんとなく興味があったってだけで、戦いたいとか世界を救いたいとかそんなことは考えてなかったわ。でも私は自分が同調に合格した五十鈴に、なんらかの縁があったと思いたいわ。150年前の第二次世界大戦で実在した軍艦五十鈴のこと調べて色々歴史知ることができたし。そういう興味の広がりやそれを通した出会いとか、心境の変化とか、そういう変化があったと思えるだけでも艦娘やってる意義はあると思うの。」
 真面目に自分の思いを語る五十鈴の言葉を真面目に聞く天龍と那珂。

「あたしもただ興味持ったってだけだから人のこと言えないけど〜。五十鈴ちゃんの考える方向性、真面目だなぁ〜。」
自身の真意のことは棚に上げて、那珂は五十鈴をからかった。
「あんただって結構真面目じゃないの!照れ隠しにおちゃらけとかよくやるわほんっと……。あんたの発想力っていうか色々できるっていうのもおかしすぎよ。それに聞いたわよ提督から。なんなのよ同調率98%で合格って。それもう人じゃなくてほとんど軽巡洋艦那珂ってことじゃないの。」
「あ……シーッ!シーッ!」
 那珂が珍しく人前で本気で慌てた様子を見せて内緒という仕草をする。

 しかし隣艦隊の天龍は、同調率について特に気にしていないのか、わかっていないのかその数値を聞いてもふぅんと適当な感心の言葉を漏らすだけ。その様子にほっと胸をなでおろす那珂だった。



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「いつかそっちの鎮守府に遊びに行きたいな。今度案内してくれよ。」
 色々話をしあううちにすっかり仲良くなった天龍が那珂たちにそう話を持ちかけた。それに対して那珂も快く返事を返す。
「うん、いいよ。じゃああたしたちもそっちの鎮守府に招待してよ。他のとこがどんな運用されてるのか気になるし。」
「あぁいいぜ!そんときは他の娘たちも連れてきなよ。」
「……ふぁぁ〜。私も行ってみてもいいわよぉ……演習でもなんでも……」
 五十鈴はもともと寝てたところを起こされたので、酔いの効果もあり眠気がぶり返してうつらうつらとしながら一応話にノる。そんな様子をみた天龍と那珂は顔をクスっと笑う。

「五十鈴ちゃん眠そ〜」と那珂。
「わりぃ。さっきあたしが叩き起こしたからだわ。ゴメンな! 少しお酒入ったことだし、もう寝よっか?」
 五十鈴に謝った後、あくびをしながらストレッチするかのように身体を伸ばして天龍が言う。

「そーしよー。さすがにあたしも眠いよ。それに明日……っていうかもう今日だけど、早朝に鎮守府に帰らなきゃいけないし、寝とこ!」
 那珂が締めた後、三人はその場から立ち上がり甲板の一角を後にした。


 こうして軽巡洋艦兼高校生の少女3人の、洋上での密かな飲み会はお開きになった。それぞれの寝室に戻った3人は、出入口のところで一言お休みと挨拶を交わして別れた。
 護衛艦の中で彼女らに割り当てられた寝室は4人部屋で、那珂は五月雨・村雨・夕立と同じ部屋。五十鈴は時雨、隣の鎮守府の吹雪・白雪と一緒の部屋だった。天龍は龍田・深雪・羽黒とである。
 それぞれが部屋に戻ると、当然だが同宿者は深い眠りの真っ最中だった。酔いが回っていた3人は寝具に入ると、数分も経たないうちにスヤァ……と静かな寝息を立てて残り少ない眠りの世界に落ちていった。

 ただ一人、天龍の担当であった少女だけは寝る前に一つのことを頭で反芻しながらの眠りへの旅立ちとなった。
「同調率、98%か……。高ければ高いほど良いって提督が言ってたから、すんげぇ数値なんだろうな。帰ったら聞いてみるか……。」




 その後護衛艦が港に到着したのは午前3時過ぎ。任務終了のため退艦することになり、強制的に起こされた艦娘たちのうち、アルコールが入っていた3人は、少しだけ頭痛に悩まされてそれぞれの鎮守府への帰路についた。